三陸とれたて市場ファンド ファンドニュース 被災地からのレポート
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被災地からのレポート2018年10月25日 12:08
描きたい未来
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おはようございます。三陸とれたて市場代表取締役 八木健一郎です。
あの津波から7年半の時が経過し、遅ればせながらも、ようやく数字のお話が皆様に出来る状態になりましたのでご報告いたします。
津波から5年間は、生魚とCAS凍結そして惣菜に至るまでの多様な商品の模索に終始しておりました。
CAS凍結した魚介の評価において、素材が悪いのか冷凍が悪いのか良く解らないけれど、とりあえず魚に血が回っているから使い物にならないなどと怒られた、今となっては笑い話に近い、そんな悶絶の時を漁業者・スタッフと共に歩んできました。
6年目、これからの時代を見越して、それまでの主力であった鮮魚(生)の取り扱いから撤退を決め、CAS凍結一本で市場を攻める覚悟を行いました。
取扱い魚種が多過ぎるがゆえに、対応に難儀していた製品パッケージの作成について、シンガポール、インド、韓国からなる国際デザインチームを組織し、世界に対応できる意匠や営業キット等の開発を完了し、ブランドデザインの統一を果たしました。
また、それまでは雑多にサンプル製造程度に作られてきた商品を取捨選択し、確実なニーズが予想される魚種、商品形状にて、量産に着手し順次在庫化。
販路のひとつとして今後有望だと見込めるアジア市場に対して、サンプルを担いで商談に出向きました。
7年目、これまでの水産物は、賞味期限(製品寿命)が僅か数日と言うその資源特性により、相場形成は漁獲量に半比例する事が一般的であり、品質が低かろうが量が不足すれば価格は暴騰し、どれだけ高品質の魚介を水揚げしたところで、大漁であれば魚価が大暴落する、おおよそ産業とは言えない、扱い難い資源環境にありました。
豊かな資源を持ちながらも、経済化率が極めて低いままにあった漁業産業形態を抜本的に見直すため、漁業者連携のもと、魚介の水揚げ方法からの改良に着手。活け越しや神経〆等の鮮度管理技術の導入により、海の中からの品質コントロールを実現。この様な漁獲方法から改善された魚介を原料に、産地で迅速に下処理を施し、最新の凍結技術CASを用いて個食使い切りパックに仕上げる、刺身鮮度を超長期間(約一年)担保する「サービス製品」としての魚介活用が確立いたしました。
素材資源をそのまま垂れ流してきた旧来の生産動線から、手仕事により原料を磨きあげ、利便性高く市場に供給する生産モデルの機能は、魚介が持つ不確実さを完全に解消するのみならず、原料原価の安定、在庫化実現、アニサキス等の寄生虫問題の解決、ロスやごみの発生を極限まで抑え込む、全く新しい製品(高品質下処理済魚介)として、はるか海外に向けた刺身の商用普及についても、その動きが本格化しています。
(航空コストに利益の大半を飲まれていた刺身使途鮮魚の輸送を、低コストの冷凍コンテナ輸送で実現。)
国際的にニーズが増大する「和食」マーケットに対して、漁業者、加工者、販売者が一体となり、その資源価値を極限まで磨きあげ、サービス製品として「刺身」を供給する生産動線が機能を始めたことで、バリューチェーン参画者の意識が飛躍的に高まり、世界をまたにかけたモノづくりに、産地が色めきだっています。
「The best taste everytime, Anytime.」泥臭く、前近代的に見えたこれまでの漁業が、世界に向けた超高鮮度魚介を供給する職人集団へと昇華し、土地の資源を土地の人が最大価値化する事業が実現しました。
三陸とれたて市場HP:「描きたい未来」ページ
実験フェーズは全て完了し、本格量産に完全移行を果たし、国内の飲食店、卸売り店に対しての供給が積極化するなか、海外に向けてのコンテナ便での刺身製品の供給も定型化しています。
方向性が定まるまで、予想以上の歳月を有しましたが、流水5分使い切りパック刺身製品を主軸に、年間10万パックの製造を当面の目標として、市場への浸透、普及を一気に進めていきたく計画しております。直近の目標として、年間売上高5千万円の達成を果たしたく、製造ラインのフル稼働に入りました。国内有数の問屋様、和食材輸出業者様との本格的な商談が進んでおりますので、これまで開発にあたってきた成果を、早急に経済価値へと変換する取り組みを加速していく段取りで進めております。
引き続きご指導、ご鞭撻を頂戴できますこと、スタッフ一同お願い申し上げます。
なお、震災後今日に至るまで、紳士協定として生産回復を共に行って来た三陸漁業生産組合と有限会社三陸とれたて市場は、2018年9月、弊社発行済株の17%を三陸漁業生産組合が取得する事で、関係会社として水揚げから処理加工、販売までを一気通貫で仕上げる6次産業化団体となりました事を報告いたします。
2018.10.24
有限会社三陸とれたて市場 代表取締役 八木健一郎
三陸漁業生産組合 組合長理事 熊谷善之 -
被災地からのレポート2016年10月28日 17:47
事業の進捗報告
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・市場調査・動向調査
昨年度より継続実施されている本事業成果物を、確実に市場へと結びつけるため、海外マーケットの市場性を調査分析する取り組みを行いました。
この事業の一環として海外展示会に参加し、水産物輸出の商流ならびに当社生産物の市場優位性についての評価を行いました。
現在計画されている輸出関連の事業展開について、このFOOD TAIPEI 2016への参加は大きな着眼点を与えてくれました。
和食や寿司、刺身等のブームが世界的に話題とされるなか、その原材料の調達においては、飲食店が相当に苦労され、品質の確保もままならない状況にあるのではないかと推察をしておりましたが、ブースを訪れた多くの飲食事業者からヒアリングを行った結果は想定外の物であり、鮮魚はオーダーした翌日には築地から冷蔵便で届くという、国内物流と遜色ないロジックが既に一般化していることが確認されました。
この様なことから、台湾における市場発展性について、当初、疑問視する部分がありましたが、バイヤーからの話を総括すると、意外な可能性が見えてきました。
台湾の高級和食店においては、一定水準以上の日本産原材料を使用したSASHIMI等が既に定番メニュー化されておりますが、これら刺身食材の輸送形態を調べてみると、その全てが航空便にて出荷されており、輸送料に膨大な経費を要している事が判明しました。
よって、CAS凍結魚介の海外でのアピールポイントは、「船便で刺身品質の魚介が運べる」というところにあり、輸送コストの大幅な削減が果たせることから、結果、商品単価の上昇分を十二分に吸収できる素地が整っていると判断しました。
今後、このような形での物流を確実に起こしていくために、台湾企業との代理店契約を結ぶ準備を進め、これを希望する企業の視察を受け入れたところにあります。
代理店予定事業者:崇越科技股份有限公司 http://www.topco-global.com/
・新商品・新技術・研究開発
神経〆魚介+CASによる高品質凍結魚介の品質安定化並びに量産化に向けた取組み
昨年度事業により試作検証が行われた神経〆魚介のCAS凍結商品について、本年度は本格的な量産商品の育成を目標に、優位魚種の絞り込みと、これの生産実証に着手しました。
品質を安定化させて量産化に持ち込むため、活用頻度がほとんどなかった既設の恒湿恒温庫(放射冷却型冷蔵庫)を活用し、これに水槽・濾過施設を組み込んだ低温密閉型活魚水槽を作成。水揚げ活魚を安定して活け越しする環境が整備されました。
水揚げ時に過度な興奮に晒された魚介を、この低温水槽にて一晩養生することで、原料魚介の体力回復が果たすことが可能となり、品質の向上と作業のバッファゾーン確保に目途を付けました。
この設備環境を活用して、三陸漁業生産組合が水揚げする未利用魚の代表的魚種であったケムシカジカから製品化に着手。これらを常時、高付加価値商品として完売しきるサイクルが動き始めました。
<脱血神経〆処理> <胃洗浄> <CAS凍結処理>
また、同じくかご漁で水揚げされながらもロットがまとまらず、市場出荷がほとんど行われなかったユメカサゴ等も商品化を行い、並行して量産化に向けた生産動線の検証を行いました。
これら試験により生産動線の安定化を果たせることが確認できたことから、水揚げ量がありながらも、経済的活用度が低かった魚介に着目して、量産商品への展開を目指しました。
ヒアリングや市場調査により、消費現場においては高鮮度のアナゴの流通が著しく低い状況にあり、類似商品であるウナギは、高品質のものが流通しながらも、魚種の特質上、季節性が極めて高く、通年では扱い悪い等、マーケットの隙間が発見されました。
よって、神経〆CAS凍結魚介の量産化第一弾商品にアナゴを設定し、これの生産に着手しました。
<原材料の活アナゴ> <脱血神経〆処理CAS凍結アナゴ>
脱血神経〆したアナゴをCAS凍結したこの商品は、京王プラザホテルの評価試験においてさっそく評価を頂戴し、生産した商品は、当面にわたり全量買い上げて頂ける契約を取り付けるなど、量産商品として動き始めております。
この様な実証成果を通して、処置の差異が身質に反映されやすい白身魚(血が回ったり、鮮度により身が白濁するなど表情が大きく変わる魚種)とCAS凍結との複合技が、市場競争力を確保する重要なポイントとなる可能性が示唆されるなど、今後の魚種選定に必要とされる新たな着眼点を得ることが出来ました。
上記成果を特徴的な高付加価値商品へと進展させるため、岩手県の漁業情報を精査したところ、資源量がダントツに多く、経済的活用度が著しく低い魚種に、「鱈」が君臨している事が判明したことから、これの商品化に向けた試験を実施しました。
真鱈は、岩手県沿岸地域においては刺身が定番ではありますが、鮮度劣化が極めて速く、また、凍結すると、独特の臭みが上がるなどから、消費地における使途は極めて限定されたものとなっておりました。
よって、脱血神経〆+CAS凍結により、素材優位性が見いだせるのかを試験しました。
かご漁で水揚げされた活鱈を原料に、凍結処理製品の試作を行い、著名料理人の協力のもと、外観や食味などを評価項目とした官能評価を実施しました。
この官能評価から、活締め・神経処理によりマダラ特有の「生臭さ」が「気にならない」という結果が得られました。また、通常、凍結によってより助長される「水っぽさ」は「ない/あまりない」という結果であり、これらから活締め・神経処理はマダラの品質に大きく影響することが明らかとなったことから、アナゴに続く量産化商品への発展を期待し、準備を始めているところです。
上記のような評価を得ながらも、鱈を刺身で食べる文化が特定の地域にしか存在していないことから、商品化に向けては下駄を履かせる必要性があると考えられます。
よって、日本料理の名店であり、フグ料理でも有名な「分とく山・野崎総料理長」を招聘し、改めて神経〆CAS凍結真鱈の試作品評価と、今後の販売展開に必要となるブランド化策を討議しました。
総料理長には、商品化の監修を引き受けてもらう流れが出来、また、タラ刺しを楽しむオリジナル調味料の作成も計画されるなど、商品化に大きな期待が寄せられます。
《各料理人による高品質マダラの評価》
○ 「活け締め品は野締め品に比べて、臭みもなく、水っぽさもない。見た目も透明感
があり全然違う。」
○ 「CAS凍結をかける前に水分を出すのはどうか。より水っぽさが抜け旨味が出る」
○ 「お椀用に使っても喜ばれる。用途を生に限定せずに品質の良さを謳って鍋や揚げ
物用にも使えることをプレゼンすれば、引き合いはある。」
○ 「マダラは丸魚では非常に歩留まりが良くない魚であるため、フィレの状態で欲し
い。」
○ 「活け締め・CAS凍結フィレで1,500円/kgまででの買取可能性あり」
○ 「マダラの活け締め・CAS凍結品は築地でも見ない」
○ 「『三陸マダラ』など別の呼び方をして、その品質の良さを全面に出していった方
が良い。」
・販路開拓
販路開拓においては、上記海外市場のマーケット調査から発展した代理店契約を計画する海外パートナー企業の育成や、各種商談会に積極的な参加を行い、安定した購買チャネルの開発を実施しております。
6月17日、東京都台東区にある「まるごとにっぽん(浅草)」で、三陸の水産品を取り揃えた「SANRIKUフィッシャーマンズ・フェス」の大商談会が開催され、この時繋がったご縁がその後発展をとげ、東京・アメ横にある魚屋兼飲食店「呑める魚屋 魚草」にて、飲食提供ならびに土産物としての小売りが予定されております。
この店舗のスタッフ並びに社長が産地視察ならびに当社生産施設の視察を済ませており、ピックアップする商品を具体的に選定するなど、本格展開が期待されています。
(当該店舗は、アメ横高架橋耐震工事に伴う改装作業につき、リニューアル予定の9月までに産地視察を一通り済ませ、薄利多売型ビジネスモデルから、高付加価値商品の販売へと営業方針の大幅な転換を計画しているところにあります。)
また、これまで多様な製品を試験試作してきましたが、その成果を整理し、解りやすい意匠に統一展開させることが必要と考えられました。
よって、商品開発やブランドデザインを得意とする専門家の指導を受け、この課題を解決するための道筋を作りました。
多様に展開する商品群を、雑多にとらえられないよう、その共通特性を統一の記号へと落とし込むことで、全体としてのトーンをそろえ、視認性高い商品へと発展していくことが必要されます。
神経〆魚介を原料にしたCAS凍結商品の評価等を総合して検討した結果、下記ロゴにて全体を取りまとめていくことを予定しております。
共通ロゴとしての使用を計画する意匠
また、これらを販促物や案内等に活用できるよう、各種ひな型の制作も併せて進め、新ジャンルである本製品の普及啓蒙を促進する段取りを整えます。
販促物も共通フォーマット化して、統一感を演出する
・人材養成
CAS凍結製品の製造において、先駆的取り組みを続けている社会福祉法人きびコスモス会
コスモス作業所・有田川コスモスフーズ(和歌山県有田市)を訪問し、施設ならびに生産作業の視察、研修を実施しました。
和歌山を拠点に活動されている当該団体は、デパートや道の駅等と提携して、ヒット商品を各種生み出すなど、その活動が注目されておりますが、このような核商品を誕生させるまでの裏背景や、訴求力高い商品の傾向指導、販路紹介や売れ筋商品の作り方指導等、大変有意義な研修会を持つことが可能となりました。
<施設見学・生産ノウハウの指導> <生産物や販路の紹介・商品作りの指導>
当該団体においては、5年にもわたる営業普及活動の末に、CAS凍結生しらすの市場定着を看板商品として実現させましたが、今回の事業により、この生産ノウハウが三陸へと移植され、大船渡港水揚げのしらすを使った類似商品の生産が始まっております。
<コスモス作業所製品> <生産技術が移植された大船渡産製品>
また、品質劣化が極めて速く、さらには小さく、潰れやすい生シラスを自在に操る技術を体得したことで、この生産ノウハウを活用した関連製品の開発が進んでおります。
素材品質が高い状況にあれば、強真空を引いても身は潰れず、空気との接触がほとんど起こらない包装を実現できることが実証されたことから、長期間にわたり乾燥や冷凍焼け、変性を防ぐ多様な製品の製造が可能となりました。
生しらすの製造方法をそのまま転用して、下処理済凍結ホヤ等、プレクック50g個包装刺身製品としての本格量産が始まりました。
これらは、船便で発送可能な輸出用刺身製品への発展へと、大きな期待が寄せられております。
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被災地からのレポート2013年6月15日 10:00
少しずつ新しい形が!
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社屋の大規模修繕工事が動き始めてもう1ケ月。この期間の大半が、壁や屋根の撤去などの「壊す」作業に占められていましたが、骨だけにされてからは鉄骨の洗浄やペンキ塗り、腰壁作りなどで資材の運び込みが増えてきたところです。
太い柱と太い梁だけが残される中、新しい建物の施設はここにこれが出来てあそこにはあれでと、柱の間隔だけを頼りに打ち合わせをしていましたが、ここにきて鉄骨組みが一気に始まり、施設の輪郭があちらこちら確認できるようになりました。
横に組まれた鉄骨にぽこんと四角く開いているのは窓が付けられる場所。縦に開いているところはドアが付けられる場所。
この面は、手前側からおつ研の休憩室(ドア・窓)廊下の端にある給湯室の勝手口、太い柱からは事務室になる予定です。
あと54日後にはこの建物が出来上がります。本当に多くの皆様に支えられて進んでいるこのプロジェクト。8月20日に開催が決まった施設竣工式は、大きなふるまいイベントも実施予定!
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被災地からのレポート2013年6月13日 10:00
みんなで連日カウントダウン!
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応急修繕ながらも、2年以上を共に過ごしたあばら屋が骨にされ、新施設の竣工に向けて作り込みが始まっています。
ものすごい期待と嬉しさがある反面、あばら屋とは言え共に歩んできたものを失う喪失感があるのも事実です。
だからこそ、若いころの思い出にあったこんな景色を復活させ、連日みんなで工事途上の新社屋を前に、きゃっきゃしながら写真撮影を続けていたりします。
毎日の歩みは動画へと仕上げられる予定。毎日少しずつ編集も進んでいるので、ワンパターンであった撮影は、日を追うごとに動きが付け足され、今ではその時間にここにいる人全員を巻き込んでの一大写真撮影会になっていたりします。
今日は、僕の故郷から取材に来ていただいた静岡新聞の記者さん、岩手県の広報を受託する仙台の広告代理店、吉本興業の若手芸人アンダーエイジの皆様。みんなが作業の手を止めて、みんなでこの場所に集まって完成までの時を刻みます。
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被災地からのレポート2013年6月10日 10:00
こういう工程だったんだ!
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土間コンの打設が終わり、基礎の立ち上がりを作る型枠が組み込まれる姿を見て、ようやく工程が理解できました。
予算を肥大化させない様にと細かな工程を何度も見直し、打ち合わせを重ねた地元請負業者の「杉山組」さんが、さすがに一発で決めますと断言した勢いのとおり、かよさん番屋の土間は一気に出来上がり、立体的な輪郭が姿を現しました。
ここにバリアフリーの引き戸が付くから、牡蠣むきの作業の時には外からスムースにカゴを入れられるよ♪ 剥く場所は3人が並んで広々と使える設計だから。 ここが一服する2畳の畳敷きの小上がり。だるまストーブはここに置こうよ。
2年3か月の歳月が記憶の谷に追いやった昔の風景を思い出しながら、小さく上に向かって伸び始めたこの場所に腰を下ろし、歩き回り、空間の設計が始まっていきます。
そういえば、昔の番屋には腕時計型のでっかい掛け時計があったよね。そういえば、あんなものもあったよね。そういえば。。。
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被災地からのレポート2013年6月7日 10:00
とれたて市場も進みます
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被災から1ケ月目に借り上げ、優良物件だとうそぶきながら瓦礫を1週間かけて掻き出した、建物の体をそもそもしていなかったこの施設。 海抜10mの海を臨む小高い場所にありますが、この建物の屋根を数メートル上回った津波に襲われました。
仲間の助けを受けて、応急修繕にて過ごしてきたこの2年の歳月。夏は暑く冬は寒く。雨が降れば雨漏りし、風が吹けば風が吹く。本当にコントの様な状態でした。
構造体を残してすべてが剥ぎ取られ、再び新しい命へと生まれ変わろうと進められるこの大規模修繕工事。
最新の設備に生まれ変われるようにと設計を重ねたその図面に沿って、四方八方に大きな腰壁が姿を現しています。
床は15センチ全体でかさ上げし、100坪近い建坪にはCAS冷凍機を中心としたクリーンルーム型の台所や下処理場が設置される計画です。
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被災地からのレポート2013年5月24日 10:00
ガリガリ!ゴリゴリ! 大解体
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解体工事が本格的に進み、この2年少しずつ作り上げてきた仮設ながらの加工場設備機器類がすべて取り払われ、壁や屋根の解体作業が本格化しています。
みんながこの景色を見て、ボソッという事は決まって同じ。
何か5月のあの頃に戻ったようだね・・・。
この建物を借り受けたのは被災から1ケ月後の事。この建物も屋根より数メートルも高く波を被り水没したので、何とか構造を残した建物の中は、瓦礫とゴミが山と詰まり、これの掻き出しに10日以上も費やしたくらいでした。
被災により寸断されてしまった地域の繋がりを、炊き出しイベントで何とかみんなを誘い出し、飲み食い笑い泣きが一緒に出来る場を少しでも早く作ろうと、この景色を見ながら急ぎました。
復興食堂、5月のゴールデンウイークにここでやったっけ。遠い記憶の彼方に埋もれている思い出に、今日、再会です。
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被災地からのレポート2013年5月22日 10:00
いよいよ始まりました!解体
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製氷冷凍荷捌き施設の竣工式を無事に終え、被災後からずっと居候していた組合が、立派な我が城に巣立っていきました。
と同時に、とれたて市場は新しい施設建築に向けて、大規模解体作業が着工となり、今度は生産組合の施設に居候させてもらう立場となってしまいました。(笑)
ここから歩いて数分の所にあるこの施設に舞台を移し、もうしばらく両者の居候関係は継続しそうです。
ミサンガが生まれ、生産組合が羽ばたいたみんなで作ったこの部屋も、その役割を静かに終えて、新しい時代に対応できる最新の加工施設として、3ヵ月後にはより一層素敵な場所に生まれ変わる予定です。
でっかい窓から海が見える部屋が欲しいと被災2ヵ月後に作ったこの部屋は、あの日からちょうど2年の今日、今度は人の手と人の意思で、再び瓦礫に変りました。
胸に詰まる思い・・・。 塩を撒きながら感謝感謝です。
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被災地からのレポート2013年4月11日 10:00
漁業を根底から強くする!
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陸のカッパ暮らしが2年近く続いた漁業者達も、春を前に自らの春を迎えるかのごとく海に戻っていきました。
でも、決してそれは順風満帆なものではなく、幾多もの問題を抱える危ういものでもあるのです。 魚価安、魚食離れ、漁具資材の暴騰や燃料の高騰・・・。数え上げれば凹むだけです。
だからこそ、全てを失い1から作り直すこれからの漁業の形は、これまでのあり方をただ単に元に戻す復旧であってはならないと考え、定住再生産が可能な形への舵きりをゆっくりとみんなで行っているところです。
漁業者が不便に思うこと、問題を感じるところ、効率が見込める方策などを自らの事として聞き出して、解決策を模索します。
この場所で、科学技術振興機構の研究事業が始まります。
衛星からの水温分布図、水深200mの水温変化、潮流予測や気象情報が全て船の上で確認できる。そんな漁業支援サービスの確立を目指し、実証実験がスタートします。 -
被災地からのレポート2013年4月11日 10:00
第一弾新施設完成間近!
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どこもかしこも砂利や残土が山と積まれて、さながら採石場の様になってしまった町があった場所のはずれに、この数日ニョキニョキ伸びていく白い建物が目立っていました。
天井高は危うく6メートル。50坪のサイズで建てられているのは、海チーム「三陸漁業生産組合」が整備を進める浜の生産拠点、漁具資材置き場と簡易荷裁き場なのです。
いつまでも同じ敷地にいればいいじゃん!と声を掛けていたのですが、「我が城をしっかり整備して、お客様に喜ばれる商品を作る拠点施設にしたい。」とのことで、当社から歩いて3分ほどの場所に作り始めたのです。
建物の裏側は直ぐに防潮堤。これだけの被害を受けながらも、やっぱり海の近くでなければ支障が出るのがこの仕事の常。
それでも海抜が10m弱はあるので、海抜からちょっとしかない岸壁に建てるよりかは幾分安心できる状態なのかなと。