LIVING IN PEACE BLOG

勉強会・セミナー2008年9月22日 14:22

第16回勉強会内容について

LIP勉強会は、今回も広尾にある「JICA地球ひろば」で開催されました。

行く度に雨に打たれているのは気のせいでしょうか…



I.報告会

【1】書籍『アフリカ苦悩する大陸』

 アフリカ 苦悩する大陸


1、感想

・アフリカの部外者であった著者が、7年間のアフリカ滞在の間に得た豊富な経験に基づいて、「なぜアフリカの経済発展は遅れているのか?」をテーマに書いた書籍。

・著者は、現状認識と主張のバランス感覚(客観性)に優れている。

・翻訳の質が高く、訳注も充実しているので、コストパフォーマンスの観点から、日本語版が原著に勝る可能性がある良書。



2、内容報告(以下の項目を基に行われた)

・ジンバブエの要人達の特権濫用とジンバブエ国民の困窮

・天然資源が戦争を起こす

・インフォーマルな経済のデメリット

・エイズが貧困を深刻にする

・部族主義、人種主義が対立を生む

・本当の援助は自由貿易である

・劣悪な道路と盗人警官が利益を蝕む

・ハイテク技術は「貧困」を救えるか?

・南アフリカのアパルトヘイト後

・結論


3、質疑応答その他

・ジンバブエ・アンゴラの現在の状況について

→ジンバブエにおいては大統領側と野党側とのパワーシェアリングが行われつつある。アンゴラにおいては、政権交代が生じている。

・アフリカの発展を阻害する関税障壁と、日本の米産業との間の類似性について。

・民族対立について

→元々存在する対立?あるいは、経済利権を背景として、植民地宗主国が意図的に造り出した産物?

・横たわるインフラ問題について

→法律、ロジスティクスの整備が不十分。しかし、整備すれば事態が好転するか? それらが遵守されるかどうか、効果的に運用されるかどうかは、人々のメンタリティーの問題なのではないか?

等々の意見が出た。



【2】週刊ダイアモンド特集『格差世襲』、大竹文雄『格差と希望』

 格差と希望―誰が損をしているか?


1、内容

-進む二極化についてのデータ紹介(『格差世襲』より)

例:1997年から2006年にかけて、年収2000万円以上の所得者と200万円以下の人口は共に増加している等

-格差の実情について(『格差と希望』より)

・格差は、いきなり現在になって急に生じたものではなく、なだらかに生じてきたものであり、発生の背景には、人口の高齢化がある。また、格差は、特に高齢層と若年層で生じてきている。

・その格差問題が、なぜ最近になって問題とされてきているのか?

→将来における格差拡大予想、デフレ及び低成長の影響、若年失業やフリーターの存在など、7つの考えられる理由の紹介

・適切な対策とは?

→よく言われる、「雇用慣行を是正する」という処方箋が不適切(例:最低賃金を上げる。その結果、企業は新規雇用を減らしてしまう)。

☆処方箋:

i)人材の流動化(一度の失敗が人生の終わりにならない)

ii)教育の充実-教育がなされることで生産性が高まる。そのために教育コストを低めることが重要。公平性から問題なく、経済全体の底上げにも役立つので、公共性が高い分野。教育のコストの低下は経済学者にも評判がよい。


2、質疑その他

・他国の現状は?

→北欧は教育の低コスト化がなされていると思われる。その結果が学力テストに好成績に現れている。

・日本ではなぜできないか?

→高齢化が促進されている関係で、教育のコスト低下の議論が議題になりにくい(なぜなら、高齢層の投票を獲得するために、高齢層の投票行動につながりやすいアジェンダが取り上げられることになる。逆に、若年層はあまり投票行動にいかないので、教育のコスト低下というアジェンダの重要度は相対的に下がってしまう)

・教員の質が低下の問題について

→終身雇用の問題、女性の社会進出による人材の流出

☆質を上げるための処方箋は?

→教師の賃金を上げる、資格試験等を実施して教師のレベルを一定限度に保つなど。

・教育現場の構造的問題

→進学率が最も重要な指標となっている、政治との癒着が問題となっている私立学校もある。



II.LIPの今後の活動について

【教育活動】

・何を教えるか

一回限りの授業で出来ることとは?

知識,希望、勉強することの大切さ、楽しさ、自分が高校生の時に先生に一言言って欲しかったことをしゃべる、社会人と接点を持つということに意味がある、等の意見が出た。

・どこで教えるか?

私立では需要が少ない? 受験に無用なレクチャーは馬の耳に念仏になる可能性がある。やはり公立か、等の意見が出た。



◎次回勉強会の予定

日時:  10月12日(日曜日)午後6時から(もしくは5時から)

場所:  広尾のJICA地球ひろば

内容:  日本の医療制度について

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勉強会・セミナー2008年8月31日 14:12

第15回勉強会内容について

■Microfinance Forum 進捗状況報告

■LIPロゴの発表

■「欧州のソーシャル・バンクと日本への示唆」発表

※ソーシャル・バンクについては以下のような説明ができます。(勉強会内容の一部)

--------------------

ソーシャル・バンクを特徴付ける重要な概念として、「ソーシャル・ファイナンス」があります。この概念は「金銭的収益と同様に社会的収益もしくは社会的配当を追求する期間によって提供される金融活動」という定義がされています。ソーシャル・バンクはこの「ソーシャル・ファイナンス」を体現する一形態です。従って、その組織の主たる目的が「社会的収益」であるという点にソーシャル・バンクの特徴があります。

ただしソーシャル・バンクは社会事業に対して金銭的寄付を行うボランティア組織とは明確に異なります。「ソーシャル・ファイナンス」の定義に則して考えると、ソーシャル・バンクは「社会的収益」を追求しながらも「金銭的収益」を放棄しない。つまり、ソーシャル・バンクは少なくとも融資の元本については最終的に貸し手に返済を求めます。より正確には、ソーシャル・バンクは預金を集めている以上、銀行組織を維持できる程度までは、「金銭的収益」を必要とします。

--------------------

非常に内容の濃い発表であり、地域と金融と社会貢献に関連しているソーシャル・バンクが身近に感じられ問題意識が高まりました。


LIP次回勉強会詳細は以下の通りです。

日時:平成20年9月21日(日) 1800~2100(3h)

18時に現地集合です。

場所:JICA地球ひろば 201

http://www.jica.go.jp/hiroba/about/map.html


誰でも参加できますので、ご興味のある方は気軽にご連絡下さい。

 

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勉強会・セミナー2008年7月27日 14:07

第14回勉強会内容について

先日、第14回勉強会が行われました。

■合宿について

■マダガスカルの森林保護について

■TICOとのミーティングについての説明

■日本のお金を世界のNPOに流す仕組みを組成できないか

■「マイクロファイナンス」フォーラムについて

■グラミンフォンについての説明

■インドの公害について

グラミンフォンに関しては次の二冊が有名ですね。


グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換


未来をつくる資本主義 世界の難問をビジネスは解決できるか


今回はいつもに増して、様々な話題が紹介&議論されましたが、今後もマイクロファイナンスを中心に様々な内容を取り上げていきたいと思います。

もし興味のある方はご連絡下さい。

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勉強会・セミナー2008年7月13日 13:42

第13回勉強会内容について

以前ご紹介しましたように、本ブログを主催している私たちは、定期的に都内にて勉強会を催しております。

先日、第13回目の勉強会が行われました。

■勉強会名「Living in Peace」について

■TICOについて

■モンゴルの暴動について

■ジンバブエの選挙について

■書籍・The Economics of Microfinance について

■MFフォーラムについて

発展途上国に関するissue紹介、MF関連書籍を元にしたMFに対する知識向上、

MFフォーラム開催の検討が主な内容でした。

次回・第14回勉強会は7月26日(土)18時より開催予定です。

引き続き、経済開発・マイクロファイナンス、経済学など、様々な内容を

取り扱う予定です。

興味のある方は、是非ご連絡ください。

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勉強会・セミナー2008年6月18日 13:23

Common Wealthのサマリー

Common Wealth: Economics for a Crowded Planet

 

ちなみにこの本のサイトは

http://www.sachs.earth.columbia.edu/commonwealth/index.php

ここで、クイズゲームとかも楽しめます。

本書のタイトルCommon Wealthは、(人類)共有の富とでも言うのでしょうか。科学の発展は、確実に世界をせまいものにしつつあり、それだけに、僕たちが直面している課題というのは、以前よりもより世界的な(commonな)ものであると、Sachs氏は主張します。特に現在私たちが直面している課題は、

1環境の保護

2人口の安定

3格差の是正と極度の貧困の終焉

の3つで、これらはお互いに密接に絡み合っています。問題は一つの国家のアクションによっては解決できず、世界的な協力関係によってのみ解決できるものだと彼は主張します。

上の3つの問題の解決は、継続可能な発展(Sustainable Development)につながるものです。 Sustainable Developmentは、上の3つの問題が適切に解決されてこそ実現が可能になります。 Sachs氏は、正しい方法をとれば、Sustainable Developmentは達成可能であると説きます。

 

環境の保護

科学技術の発展と、人口増加、一人当たり生産量の増加にともない、人類が地球環境に与えうるインパクトは年々増大しています。 すべての人が、現状を永続させることは不可能であることを知っています。 この30年で、脊髄動物の種はなんと半減しています(ところで、映画Earthはとてもよいですね)。 砂漠化も多くの地域で進み、十分に水が供給されない地域が増え、他方では水面の上昇により水没の危機にある国も増えています。 気温の上昇は、天災を増加させ、同時に新たな類の病気が蔓延する原因ともなっています。

これらの解決のためには、市場システムをうまく活かした政策の導入、規制、技術革新、食糧流通システムの効率化などが強く求められています。

 

人口の安定

人類の人口は、指数的に増加しています。西暦0年から1700年ごろまで、地球の人口は常に10億以下でした。それが、今や60億人。そして、現状が続けば、人口は2050年までに90億になる事が予想されています。継続可能な発展を達成するためには、これは80億以下に抑える必要があります。

人口の増加は、貧困の罠(自力では貧困から抜け出せなくなる状況)と密接に関わっています。最貧国における高い出生率は、幼児の高い死亡率に一因があります。しかし、高い出生率は、家庭が貧困から抜け出すことをより困難にし、それはその国家の経済成長を低下させ、他の国家にも影響を与えることになります。

人口の安定のためには、出生率を下げるインセンティヴを導入する必要があります。現に、先進国で多少の個別差がありながらも出生率が低いのは、インセンティヴによるものが多いのです(低い死亡率、高い養育費など)。途上国において出生率を下げるためにとるべきアクションは、医療制度を発展させ子供の死亡率を下げること(これには援助が必要です)、女の子の進学率を上げ、同時に女性の社会発展を促進することなどにあります。

 

格差の是正と極度の貧困の終焉

いまだに、世界の人口の6分の1である10億人は極度の貧困の中に生きていて、そのうち数百万人が毎年貧困のために亡くなっています。アフリカでは、5歳以下の幼児の死亡率は17.9%になります。 世界における幼児の死者数は毎日26,000人ですが、このうち3分の1は、ほんの少しのお金があれば(例えば蚊帳一つあれば)防げるものです。

お金があれば幸せになれるわけではありませんが、ない状態で幸せになる事は難しい。また、貧困は、政治不安や紛争、テロの温床にもなりえます。

貧困を解決するための基本的な処方箋は、以下のものになります。 まずは、人口を適切な水準に保つこと。 そして、そのうえで農業生産性を向上させ、社会インフラを整備し、民間部門主導の発展を促進するための技術の支援などを行う事にあります。

これにも多くのお金が必要です。 Sachs氏は、援助の必要性を説いています。 Easterlyは、これまでの多くの援助がまったくの無駄だったと説き、その原因はインセンティヴを考慮しなかったことによると主張していますが、Sachs氏は援助が事実無駄に使われうる事に同意しながらも、その無駄な援助は多くの場合先進国による「援助のための援助」であったこと、正しい方法によって運営された援助は、大きな効果をもたらしてきたことを話します。 特に、日本の開発援助が東・南アジアの国々の発展に大きく寄与してきたことを高く評価しています。

貧困の撲滅は、先進国が自らの収入の2.4%を毎年援助することによって達成することができるとSachs氏は主張します。アメリカの軍事費二日分で、アフリカ全土のマラリア対策費1年分を賄う事が出来るそうです。(そんな簡単なものではないと思いますが)軍事費の見直しを少しばかりすれば、貧困の撲滅のための資金は十分に拠出することが可能です。

現在、いくつかの国でMillennium Village Projectが進められています。 これは、村単位で農業・医療保険・教育などを発展させることにより経済開発に成功したロールモデルを数多く生み出しています。この経験を国家単位に適切に活かすことができるのであれば、2025年前に極度の貧困(1日に1ドル以下で生活すること)を撲滅させるMillennium Promiseを達成することは可能になるでしょう。

 

アクションの必要性

最初にも書いたように、僕たちがいま直面している問題は、より世界的な問題であり、皆の協力によってのみ乗り越えられるものになっています。政府のみならず、企業、NGOなど,大学・研究機関らの組織の連携がうまくいってこそ、問題は解決に進めることができます。

また、個人レベルでも今すぐにできることがあると、Sachs氏は話します:

・まず、僕たちの世代が直面している問題を認識すること

・各地に旅行して、現実を見ること

・永続可能な発展の実現のためにアクションをしている組織に自分も入ること

・周りの人々を巻き込むこと

・インターネットを活用して、永続可能な発展について知らせること

・自分の属している企業や、政府に働きかけること

・Millennium Promiseのスタンダードに沿って生活を送るようにすること

 

 


Jeffrey Sachsの地に足付いた楽観主義には本当に感じるところが多いです。僕も、いつまでもこうありたいと思います。まずは、自分ができるところから、少しずつでも着実にやっていこうと思います。

 

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勉強会・セミナー2008年6月13日 12:59

KIVAに掲載されているMFIの世界分布

 

前回の投稿で、KIVAを紹介いたしました。

今回は、そのKIVAに掲載されているMFI(KIVAのウェブ上では、"Kiva's Field Partners"と呼ばれています)のデータを集め、その分布を世界地図に表してみました。

この地図は、SAS(http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/)という統計パッケージで作成しております。

 

・世界地図の説明と解釈

世界地図と横棒グラフが重ねて表示されています。

世界地図は、各国におけるMFIの合計を表しています。一方、横棒グラフは地域別(アフリカ、アジア、中米、南米、欧州、オセアニア)にこのMFIを合計したものを表しています。

国レベルの集計ではやや詳細すぎて全体の傾向を捉えにくいため、地域別でより大まかなトレンドを把握するためです。

この世界地図からわかることは、特にサハラ砂漠以南のアフリカにおけるMFIが多いことです。次に多い地域としては、東南アジア、中央アジア、中米、南米などに多く分布しています。自明かもしれませんが、貧しい地域にこそMFIがより多く分布していることが確認できます。

 

・データソースについて

KIVAのField Partrnersを紹介するページ(http://www.kiva.org/about/partners)から、VBAで各MFIについて、MFI名・国名・地域・リスク関係の指標・金利関係の指標などに関する10項目を収集しました。収集時期は2008年3月です。その結果、106のMFIについてデータが作成できました。

そのうち、国・地域名・金利の欠損値があるものは除外した68のMFIを分析対象としています。

 

・世界地図にするメリット

データというものは膨大で複雑であり、人間の情報処理能力で直感的にわかることは滅多にありません。

そこで、まずはグラフ化する(データを目に見える形で表す)ことで、データの概要や傾向が瞬間的に把握することが可能になるのです。

この他にも、円グラフ、折れ線グラフなど、テレビで資料として用いられることも珍しくありません。その分野の専門家でなくとも(テレビの一般視聴者でも)、グラフ化することで、直感的な理解が得られます。

 

・コメント

データの件数がそれほど多くないこともあり、わざわざ世界地図にするほどでもなかったかな、という気がしないでもありません。このデータの質・量では、より厳密な統計分析や回帰モデルを用いるのは少々厳しいです。

しかし、「MFIは貧しい地域に多く分布しているだろう」、という漠然とした考え(思い込み?)を実際のデータで検証する姿勢は重要であると考えています。

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お知らせ2008年5月16日 20:28

Kivaについて

 前回の掲載記事では「Kiva」(http://www.kiva.org/)の使い方に触れましたが、今回はKivaというサイトの内容を簡潔にご紹介したいと思います。

 

 

Kivaとはスワヒリ語で「合意(agreement)」を意味します。

 

 

・Kivaってなに?

 

 Kivaとは、貧困に直面している発展途上国の起業家を対象に、半年から1年程度の短期小口融資(マイクロ・ファイナンス)を紹介する団体ですKiva (organization) - Wikipedia, the free encyclopedia。

 

 現地の人が起業するのに必要な小口融資を1口US(日本円で約3千円)単位でインターネットを通じて集め、MFIs(micro finance institutions※)を通して現地の起業家に貸付を行い、さらに回収まで行います。

 

※MFIとは、マイクロ・ファイナンスのサービスを提供する組織で、小規模な非営利団体から大規模の商業銀行に至るまで様々な形態があります。通常の金融機関からは借り入れることのできない人々に対して貸し付けを行い、資金制約に苦しむ人々の貧困からの脱出に寄与しています。

 

参照:http://www.kiva.org/about/microfinance/#2._What_is_an_MFI

 

世界的にも注目されていて、GoogleやYahoo!、Microsoftなどの企業がSupporterになっています。

 

参照:http://www.kiva.org/about/supporters/

 

 

・融資の仕組み

 

 

(1)貸し手はKivaのウェブサイト上に掲載されている起業家(entrepreneurs)のプロフィールを参照して融資先及び融資金額を決定します。Kivaは、集まった基金を世界の各地に展開するMFIsのうち、融資先に適したMFIに送金します(その際、融資金額のうち10%がKivaへの寄付=donationになります)。

 

(2)送金を受けたMFIは貸し手が選択した起業家に基金を分配します。 加えて、起業家に対して返済に向けたトレーニングその他支援も行います。

 

(3)一定期間を通じて(※)、起業家からMFIを通じてKivaへの返済がなされます。返済額は元金からKivaへの寄付額約10%を差し引いた額です。Kivaと提携している全MFIsの平均利子率が22.37%であるにもかかわらず、返済率は約97.25%と高い水準を維持しています。

 

 返済状況その他の情報は、Kivaのウェブ上にアップされ、また貸し手が希望すればメールで知らせてもらえます。

 

※ およそ6ヶ月~12ヶ月。期間は各起業家毎に異なります。その情報はプロフィールに掲載されています。

 

(4)貸し手はKivaを介して返済を受けます。返済を受けた貸し手は、返済された金額をもとに再度他の融資先を探すか、Kivaへ運営費のカバーとして寄付するかを選択できます。もしくは、そのまま回収することもできます。

 

 

・Kivaの特徴 

 

-個人による融資を可能にしたこと

 マイクロファイナンスと言えばノーベル平和賞をとったことで有名な「グラミン銀行」がありますが、名前からもわかるようにグラミン銀行の融資主体はあくまでも銀行でした。しかし、Kivaの場合はウェブを介することで、個人単位で途上国の人々に融資をすることを可能にしました。また、一口(約三千円)と、融資のしやすさも魅力です。

 

-直接の融資を可能にしたこと

 従来、発展途上国に対して融資をするには大手金融機関や国際機関を介する必要がありました。しかし、Kivaを介することにより、貸し手はウェブ上に開示されている起業家に対して直接融資することができるようになりました。

 

-貸し手のニーズにあった起業家

 個人が直接融資の意思決定をする際、融資先の起業家の情報が大切になります。Kivaのサイトに掲載されている多種多様な起業家の情報は、発展途上国の現地の状況や起業家の性質をよく知るMFIsによって提供されたものです。MFIsは具体的な審査をもとに、貸し手のニーズを満たす起業家の選定をしています。よって、貸し手は質の高い情報をもとに融資先を決定することができます。

 その結果が、返済率約97.25%という数字にも現れています。

 

-「顔の見える融資」

 Kivaを介して融資をした場合、貸し手は自らが希望すれば融資先の起業家の近況等の状況を逐一メールで知ることができます。このことは貸し手にとって直接のモニタリングになるわけではありませんし、借り手にとっても返済をする上での直接のインセンティブになるわけでもありません。

 しかし、従来の無機質な融資形態とは異なり、融資を、当事者双方の「顔がみえる」という形態にチェンジさせたことが、従来のマイクロファイナンスにはなかった点であり、Kivaのプロジェクトが成功裏に行われていることの間接的な要因になっているのかもしれません。

 

 

・日本における現状

 

 2008年5月現在、Kivaに出資している日本人の件数は約450件です。

 その他の国の状況としてはアメリカが約7790件、イギリスが約400件、フランスが約650件、オーストラリアが約2300件、韓国が約100件、スペインが約300件となっています。

 

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マイクロファイナンス情報2008年5月13日 19:56

Kivaの使い方

途上国の起業家(entrepreneur)に小口の融資を行える「Kiva」http://www.kiva.org/ という有名なサイトがあります。ここでは、このKivaを利用して実際に起業家に融資を行うまでの手順を説明します(クレジットカードが必要となります)。

 

1.まず、http://www.kiva.org/ にアクセスします。すると次のようなサイトが表示されます。

 

 

 

2.次にトップページの右上のメニューにある「Register」というリンクをクリックします。すると次のような画面になります。ここに必要事項を記入していきます。記入が終わったら、最後の□にチェックをいれてリンクをクリックします。

 

 

First Name:【必須】あなたの名をローマ字で記入します。

Last Name:【必須】あなたの姓をローマ字で記入します。

Email:【必須】あなたのEmailアドレスを記入します。

Confirm Email:【必須】もう一度Emailアドレスを記入します。

Password:【必須】6-12文字でパスワードを英数字で記入します。

Confirm Password:【必須】もう一度パスワードを記入します。

Referred by a friend?:紹介してくれた方がいる場合、その人のメールアドレスを記入します。

Display me as First name or Anonymous:登録後、サイト上にあなたの名を掲載許可するか匿名にするかを選択します。

Upload Photo:写真をサイト上に掲載したい場合は、その画像ファイルをアップロードします。

Occupation:職業を記載します。

 

 

3.「Welcome to KIiva!」という次のような画面が出てくれば登録成功です。

 

 

一番左にあるのが、起業家の写真です。

「Entrepreneur/Activity」には起業家の名前と業種が記載されています。

「Loan Info」は、希望融資額と今現在どれくらい融資が達成されているかが表示されています。

「Country / Partner」は、融資希望者がいる国名と現地で実際に融資業務を行うパートナー機関の名称が記載されています。

 

 

4.3の画面の「Description」の中の「more」をおすと次のような詳細画面に移動します。ここで「Lend now」と書いてあるところの金額を自分の希望融資金額に設定して「Lend now」をクリックします。

 

 

 

5.次のページでは、Kivaへの寄付(donation)を求められます。融資金額の10%が表示されていますのでその状態でボタンをクリックします。

 

 

 

6.クレジットカードの必要事項を記載する下記のような画面が表示されます。必要事項を記載して最後にオレンジのボタンをクリックします。これで融資の準備が完了しました。融資実行画面で自分の融資金額を確認した上で[Check out」(支払い)ボタンをクリックし融資を実行します。

 

 

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マイクロファイナンス情報2008年5月5日 17:31

グローバル総合金融サービス企業とマイクロファイナンス

1.グローバル総合金融サービス企業とマイクロファイナンス

 

開発途上国における小口融資を目的としたマイクロファイナンスですが、今日では、ゴールドマン・サックス、シティグループ、リーマンブラザーズといった、グローバル総合金融サービス企業も、当事業に参画を始めています。

 

今回は、2007年5月にモルガン・スタンレーが証券化して販売したBlue Orchard Loans for Development 2007-1(“BOLD2”)について、取上げてみます。

 

2. モルガン・スタンレー Blue Orchard Loans for Development 2007-1

 

モルガン・スタンレーは、スイスを基点とするマイクロファイナンス投資ファンドに特化したマネジメント会社、ブルーオーチャードと提携して、2007年5月に、ローン担保証券(Collateralized Loan Obligations、以下、「CLO」。)を開発しました。アゼルバイジャン、ボスニア、カンボジア、コロンビア、ケニア、モンゴリア、ニカラグア、ペルー、セルビアといった、12カ国発展途上国に基点を置く20マイクロファイナンス機関(Micro Finance Institutions 以下、「MFI」。)への無担保貸付債権を集めて債権プールを作り、これを裏付けに発行されるCLOを開発、販売しました。マイクロファイナンスの証券化です。

 


ヨーロッパ、アメリカの銀行、保険会社、投資信託、ヘッジファンドといった、21投資家から集められた110.2百万ドル(約1,100億円)相当の資金は、MFIを通じて、途上国の70,000もの低所得層の起業家に融資されました。

 

途上国での融資は、現地通貨によって行われますが、一方、投資家を為替リスクよりヘッジするために、通貨はUSドルや英国ポンドといったCLO発行通貨にスワップされます。

 

モルガン・スタンレーとブルーオーチャードは、2006年にも同様のローン担保債権(BOLD1)を発行していますが、今回BOLD1との大きな違いは、トランシェを異なるリスクレベルで切り分けることで、一部トランシェについて、スタンダード&プアーズによる格付けを得ることが出来たことです。各トランシェについての情報は下記の通りです。AA格付は、当時のウォールマート等と同様です。

 

 


(出所:http://www.morganstanley.com/about/press/articles/4977.html

 

2008年3月にリリースされたブルーオーチャード ニュースレターによると、20MFI全てが、同月、四半期利払いを期日通りに行っており、投資家に対しても、既に、過去3回分配を行っています。

 

また、20MFIは、2007年中、全地域において成長を続けており、全資産は、30.7億USドル(約3,070億円)になります。以下のグラフからもその様子は伺えます。

 


 

 

 


(出所:http://www.blueorchard.org/jahia/Jahia/site/blueorchard/Products/pid/144

 

3. グローバル総合金融サービス企業とマイクロファイナンスの今後

 

ゴールドマン・サックスは、2008年3月に、今後5年間で1,000億USドル(約10兆円)をマイクロ・ファイナンス顧客、すなわち、途上国におけるエンド融資利用者の教育に投資していくと発表しています。彼らに、ビジネス・プランニング、マーケティング方法等を学習してもらうことにより、彼らのビジネス・スケール、ひいては、マイクロファイナンス事業の拡大を目指しています。

 

このようなグローバル金融サービス企業の日本におけるマイクロファイナンスに関する取組みなどについても、今後、レポートしていきます。

 

 

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マイクロファイナンス情報2008年5月3日 16:38

ファイナンスの基礎-ポートフォリオについて

ここまで、ファイナンスの基本的なコンセプトであるリスクとリターンの関係について考察しました。次は、ファイナンスのもうひとつの重要なコンセプトであるポートフォリオについて検討しましょう。

 

ある1つの投資対象のみに投資をしている場合には、リスクとリターンの計測は単純に期待値と分散を利用することは正しい方法です。しかし、複数の投資対象に投資した場合それは正しい方法なのでしょうか?

 

たとえば、ある自動車会社Aの株式のみに100万円を投資した場合を考えてみましょう。もしこの企業が倒産したら100万円すべてを失うことになります。

 

しかし、もしA社のみではなく食料品会社B社にも50万円づつ投資した場合を考えてみましょう。A社が倒産してもB社は存続していますので、50万円の損失でおさえられます。

 

この例からも、投資対象を複数にしたほうがリスクは減るような感じがします。昔から「卵を同じ籠に入れるな」という格言がありますが、まさしく上記の例のようなことです。関係のない独立したものにより多く投資することでよりリスクを分散させることができるということです。これを「大数の法則」といいます。「大数の法則」は保険を考えるとさらによく理解できると思います。人の死は通常の状態であれば独立に発生します。ですから1人よりも1億人の保険者がいたほうが保険会社のリスクが分散されていることは直感的に分かると思います。

 

さらに進んで、投資商品の最適な組み合わせをどのように決定したらいいかを考えます。これに解を与えるのが、ポートフォリオ理論です。ポートフォリオ理論の基本は、より低いリスクでより高いリターンをえられる投資商品の組み合わせを探ることにあります。

 

まず下記の図を見てください。先ほどのA社とB社のリスクとリターンの関係がそれぞれAとBだとします。青い点の軌跡はA社とB社の保有比率を変化させていったときのリスクとリターンの組み合わせの軌跡です。これを機会集合とも呼びます。

 

まず分かることは、A社だけに投資をすることは合理的ではないということが分かります。なぜなら、A社がもつリスクを一定にするとより高いリターンをえられる機会が存在するからです。

 

ここで機会集合の中でもっともリスクの小さい点を最小分散ポートフォリオ(Minimum Variance Portfolio)といいます。図ではMVという点です。

 

投資家は、このMVからBまでの軌跡の中で投資を決定することが合理的であることが図から分かります。このMVからBまでの軌跡は効率的フロンティアと呼ばれています。投資家は自分のリスク許容度に応じて効率的フロンティアから投資比率を決定することになります。

 

 


今は2資産の場合を考えましたが、これを多資産に拡張することで新しい効率的フロンティアが発生することになります。そして投資家はその効率的フロンティアの中から自分のリスク許容度に応じて投資比率を決定することになります。

 

ここで、図のような曲線が生じるためには、AとBの相関係数ρとしたときに-1<ρ<1になることが必要であることが分かっています。相関係数とはAとBの関係のことで、たとえばA社の株価が上昇するときにB社の株価も上昇するようであれば+の値をとり、逆であれば-の値をとります。まったく関係のない動きをするときは0の値をとります。この相関係数が-1に近づけば近づくほど分散化が効いてきます。相関係数のとりうる値は-1≦ρ≦1となります。

 

ポートフォリオの基本的な説明は以上のとおりです。

 

実はもうひとつポートフォリオ選択について重要な事実があります。それはリスクの無い資産を仮定すると、投資家のリスク許容度に関らず最適な投資比率が決まってしまうという事実です。これは分離原則として知られています。

 

今、リスクフリーレートをRfとします。図のRfから効率的フロンティアに接線をひいてその接点をXとします。すると、リスクフリーレートでの借り入れが可能とすると投資家は自分のリスク許容度に関らず危険資産について点Xの投資比率を選択せざるをえなくなるのです。

 

参考文献

野口悠紀雄「金融工学、こんなに面白い」文春新書(2000)

野口悠紀雄・藤井眞理子「現代ファイナンス理論」東洋経済新報社(2005)

 

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