LIVING IN PEACE BLOG
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勉強会・セミナー2010年9月12日 10:07
8/29 LIP教育プロジェクト主催 セミナー&ワークショップ報告(前編)
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皆さん、こんにちは。
Living in Peace(LIP)教育プロジェクトの九鬼です。
9月に入り数日が過ぎようとしていますが、まだまだ暑い日が続きそうですね。
今回は、8月29日(日)にNPO法人ブリッジフォースマイル代表の林恵子さんをゲストスピーカーにお招きして開催されたLIP主催セミナー&ワークショップ「ファンドレイジング×自立支援=スマイル」について、前半のセミナーの様子をお伝えしたいと思います。
セミナーは、代表の慎より、LIPが海外のマイクロファイナンスプロジェクトをスタートした理由と、なぜ国内の教育問題にも取り組むのかというお話から始まりました。慎は、「死ぬほどの貧困でなければ放っておいて良いのか?」と問いかけたうえで、それに対し、Noであると断言します。だから、海外でのマイクロファイナンス活動と並行して、国内での貧困の連鎖を断ち切るべく、教育プロジェクトとしては児童養護施設にターゲットを絞り、支援を行っています。
現在、日本国内に児童養護施設は570箇所あり、3万人以上の子どもが暮らしていますが、その子どものうち3分の2以上が虐待、貧困、親の精神疾患などの原因で、施設で親と離れて暮らしています。特に貧困の問題は深刻で、例えば、母子家庭の平均年収は162万円しかありません。これでどうやって子どもを育てるのかは、非常に大きな課題です。また、慎は、自らの児童養護施設住み込み体験から、施設同士を比べても大きな経済的な差が存在すること、30年以上変わらない児童指導員配置基準のため、一人の指導員が一時に15人もの子どもの面倒を見ていること、このような非常に厳しい状況で頑張っている中、バーンアウトしてしまう指導員も少なくないことなど、生身の経験で得たことを語りました。
慎はこの住み込み体験をもとに、現在、児童養護施設に関する本を執筆中です。
続いて林さんより、ブリッジフォースマイル設立への流れを含め、自己紹介をしていただきました。林さんは18歳のときに「途上国の人を助けたい」という気持ちを抱き始め、20歳でインドを旅行しました。そして、「人間のエゴは企業の良心で解決できる」というテーマで卒論を書いた後、株式会社パソナに入社。出産のため一時離職していた時期もありましたが、社会のために何かしたいという気持ちがつのり、26歳でMBA留学準備を始めました。そして、留学準備中のビジネス研修で、児童養護施設の問題について知ることになったそうです。
林さんは、児童養護施設について当初よく知らず、漠然と孤児院のようなところだと思っていたそうです。しかし研修中に児童養護施設について調べるうちに、「施設と社会間のギャップ」と「施設間のギャップ」が存在することに気がつきました。施設と社会間のギャップとは、施設に対する一般的なイメージとは反対に、外部から支援してもらうことに消極的な施設が少なくないこと、子どもたちの事情、例えば多くの子どもには親がいて夏休み中には親のもとに帰ることなどは、ほとんど知られていないのです。「施設間のギャップ」とは、冒頭で慎が触れていたように、施設ごとの経済的な差が存在しており、そのために子どもたちが享受する待遇も大きく異なるということです。施設によっては支援の物資にあふれているために、子どもたちが物を大切にする気持ちを持ちにくいようなところもあったそうです。
林さんは、これらのギャップを埋めることが、児童養護施設の課題解決につながると考え、NPO法人ブリッジフォースマイルを設立し、子どもがどの施設に入っても笑顔で生活するための架け橋となるために活動しているそうです。現在、親と暮らせなくなった子どもの約8割が児童養護施設に行くことになるそうですが、施設数は絶対的に不足しています。また、施設での生活は、最長でも18歳までであるため、その年齢に至った子どもは退所しますが、彼らには生活能力の不足や孤独感、社会からの偏見や無関心などの問題が重くのしかかります。そして、社会にうまく適応できないまま出産をし、その影響が育児に出ることで、更に生まれた子どもがまた施設に預けられるという連鎖に陥りがちな現状があります。
これらの解決に向けて、ブリッジフォースマイルでは主に中高生を対象とした自立支援のためのプロジェクトをいくつも立ち上げています。ブリッジフォースマイルの考える「自立」とは、生活的自立、経済的自立、社会的自立、精神的自立であり、それを促すための5つの要素である生活基盤、知識情報、能力スキル、仲間、意欲などを網羅できるように組まれた複数のプロジェクトを紹介していただきました。
活動についての詳細は、ブリッジフォースマイルHPをご覧になってください。
http://www.b4s.jp/
活発な活動報告の一方で、NPOが自立支援活動を採算を取りながら行うのは非常に難しいことも語られました。自立支援は、結果や効果が見えにくいという特徴を持っています。また、支援をしすぎてしまうことで、子どもが受身になる可能性があることや、問題を根絶するためのニーズが果てしないことなどから、資金を調達するための理解を得にくい傾向にあります。そこで、数あるプロジェクトの中でも採算を取りにくい住宅支援の事業について、どのようにすれば必要な資金を効果的に調達できるかを、第二部のワークショップで考えていきます。
その後、参加者からの質問をたくさんいただきました。そのうちいくつかをご紹介します。
「児童養護施設退所者で、ブリッジフォースマイルの活動へボランティアとしての参加する者人はいるのか?」という問いに対して、林さんは「いることはいる。ただ、退所者は、その後の生活でも、課題を抱えていることが多く、ボランティア活動への参加はなかなか難しい。しかし、今後、退所者に参加してもらえるような流れをは、今後もつくっていきたい。」とお答えになりました。また、「一般の人に、どのようなアクションを起こしてほしいか?」という問いに対しては、「児童養護施設に関わるには相当な覚悟が必要だなどと構えたりしないでほしい、支援のカタチは本当に様々なので、自分にやれることを一人ひとり考えて欲しい。」と仰っていたことがとても印象的でした。
次回の記事では、自立支援でどのように理解を得て採算を取るのか、参加者の方々が出したユニークなアイディアをご紹介させていただきます。
文責:九鬼麻菜実
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