LIVING IN PEACE BLOG

2011年2月5日 20:05

ベトナム現地レポート No.1

皆様、こんにちは。
Living in Peace(以下、LIP) マイクロファイナンスPJの津崎祥子です。
今回は秋に行って来たベトナム訪問のご報告です。

2010年10月某日

ちょっと遅めの夏休みを利用して、杉山章子と女ふたり、成田から深夜着のフライトでハノイに到着して翌日は日曜日。街はハノイ遷都1,000年を祝う行事でどこへ行っても人・人・人の洪水。今日はマイクロファイナンス機関(以下、MFI)とのアポがないので、ベトナムの人々の生活や雰囲気をつかもうということで街に繰り出すことにしました。 
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街の交通手段はバイクがほとんど。

「信号はどうせ信号として機能していないに違いない」という私たちの先入観から、まずはバイクのあふれる大通りの真ん中を横断することに挑戦。この「信号が無い、交通量の多い道路を横断」できるか否かは途上国ライフをサバイブ出来るか否かの試金石だよね」(by杉山さん)。とりあえずバイクの人たちとアイコンタクトをとると難なく横断できる。ハノイの人はおっとりした性格のようで、意外と譲り合いの精神があるらしいようだった。これ、中国とかだったら「入れるもんか」とばかりに車がスピード上げて突っ込んで来るんだよね。。。(この後、数日たって「実は信号が機能していて、赤信号になるとみんな止まるから横断歩道を使えば良い」ということに二人とも気が付くのだった。信号無視で無秩序だったのは私たちのほうだった。ゴメン。) 
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さて月曜日。日本からアポをとっていたMFIのひとつM7を訪問。ここはカンボジアのMFI調査の頃からLIPがお世話になっているフィリピンのMFIDr. Aripからのご紹介で、彼と旧知の仲であるマダムLanが代表しているMFIです。彼のご紹介だからなのか、外国から視察が来ると必ずそうしているのかは分かりませんが、1泊2日の視察スケジュールを組んでくれたところに熱意を感じました。 
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写真:住宅街の中にたたずむMFIの事務所(2階部分がオフィス)

彼女たちの作ってくれたスケジュールでは、初日は事務所でのディスカッション、夜に遠方の村に移動、2日目に支店訪問と職員との懇親、ボロワー訪問が予定されていました。 今日訪ねたMFIM7という名前で、マイクロクレジットや預金の仕組みを商業銀行ではなく国内外からの支援金でまかなってきていた7つのソーシャルファンドが集まり、マイクロファイナンス機関として政府に登録申請中の組織です。

活動拠点はハノイより北部で、山岳地帯や少数民族に顧客をかかえています。「山岳地帯」という言葉に興味が涌いて、「山岳地帯の場合、私が行きたいとしたらどれくらい日数が必要ですか?」と聞いてみたら、「雨や濃霧があるから何日かかるかは分からない。車では行けない場所を20kmほど歩くことになる。」とのこと。当然、そんな奥地にはATMなどありません。そのようなエリアに住む顧客に、審査や返済で会いに行く支店の担当者の手間を思うと世間で批判される「マイクロファイナンスの金利の高さ」もあながち高いとは言えない、という話が納得できました。いつか視察に行ってみたいなと思ったけれど、彼女たちの仕事の負担になるに違いないですね。遠慮しておきましょう。 

ベトナムでは2008年からマイクロファイナンス機関設立の公的申請が始まったようですが、彼女たちはその時に申請してまだ結果が出ていないとのこと。2010年秋現在のところ、私たちが今回の最終日に訪れるMFIであるTYMだけがその申請プロセスが終わり、ベトナムで認可された唯一の機関であるとのことでした。M7のマダムLanも、「いつになるのか、どうなるのかは政府のやることだから分からない」と苦笑まじり。「でも近いうちに認可されると思う。」とのことでした。登録にあたってはUSD300,000の資本金がなくてはならなかったり(M7の場合はこのために複数組織が合併したそう)、資金調達資源や人的資源の不足が彼女たちにとっては障害になっているようでした。
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本部オフィスで話し込んでいるうちに夜になり、みんなでワゴンに乗り込みました。今夜は中国に近いエリアまで行くそうです。ハノイを離れてそんな遠くまで行けるのはワクワクします。行く先について説明を聞いていると、会話に「ディエンビエンフー」という地名がよく登場する。おお、むかし世界史で習ったよ。懐かしいなぁ。 車で移動すること4時間、Uong Biという地区に到着。彼女たちの支店の建物の低層階がホテルになっていて、その下にあるレストランでいつも食事をするそう。ホテルに荷物を置いて、支店の方も加わって夕飯をご一緒することに。
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ベトナム料理はパクチーをふんだんに使うことで有名ですが、パクチーの他にも多くの薬草や植物をちぎったものを麺や鍋にまぜこみます。毎日、草っぽいものをふんだんに食べたため私も杉山さんもお肌がツルツルに。鶏肉の鍋を囲みながら、マイクロファイナンス業界で約30年もの経験があるマダムLanと、情熱あふれる若い女性Haさんとの会話がはずみます。マダムは英語がお得意ではないので複雑なトピックはHaさんが訳してくれています。それにしても一日、普段は通訳の仕事をしているわけでもないのに疲れも見せず自分の話も混ぜつつ英語でよどみなく説明してくれる彼女。いつか彼女のような人を日本でやるフォーラムにも呼べたらいいなぁ。末永くM7で活躍していってほしいです。


翌朝は5時半からM7の新人と合流して、懇親がてら世界自然遺産のハロン湾へ。大小2,000もの島が狭いエリアに点在している湾。昔、中国がベトナムに侵攻してきたときに龍が敵を破り、口から吐いた宝石がこの島々になったという伝説が語り継がれているそうです。確かに珍しい地形。

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船の中では、今年大学を卒業してMFIで働き始めたばかりの女の子たちとおしゃべりのひと時。数ヶ月の研修を終えて、このハロン湾の観光はご褒美旅行なのだそうです。これが終わると翌日にはそれぞれ各地の支店などで働くみたい。ベトナムの学生生活、何を専攻してきてどう活かしていきたいのか、はたまた流行の髪型やファッションのこと、日本に関する質問、色々と会話は盛り上がる。私が日本から持って行った東京の桜の景色のポストカードがここで大人気に。こんなに喜んでくれるんだったら、もっとたくさん持って来ればよかったなぁ。

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さて、支店に戻ってきて午後はボロワーさんを訪問です。支店は、地域の公民館のような建物に間借りしている所が多いようです。壁には「ボロワーの心構え」が掲げられていました。マイクロファイナンスを借りる時にボロワーが暗唱しなくてはならない、「預金をします」「子どもを学校に通わせます」といった文言の数々。これはボロワーたちが村ごとに集まって返済をする際の集会などでも全員で合唱しているそうです。

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写真:ボロワー心構え支店の方とのミーティング


少し質疑応答してボロワーさんを訪ねることに。それにしても、本部も支店も、誰に聞いても「貸したいけれど貸せるだけのお金がないのが悩み」とみんな口を揃えたかのように言う。後日、同じことはどこのMFIに行っても言われるのだった。これはベトナムで借り手の裾野が拡大しているからなのか、海外からの資金が呼び込めていないからなのか。とにかく、貸す為のお金が足りない状況なので、返せっこない無理な融資は起きにくそうな印象を得ました。 


そして、今回初めてのボロワー訪問。この村でかなり初期からマイクロファイナンスを利用してビジネスを大きくしてきたという一家のもとへ。借りる前と比べて現在は10倍ほどの収入になったそうです。息子たちは全員が大学へ行き、事業は今では雇用を作り出すようになっており、マイクロファイナンスが生む理想的な成功事例と言えそうなご一家でした。必ずしもこの一家のように大きく収入が増えることは無いかもしれませんが、マイクロファイナンスという仕組みがこうやって多くの人の生活の向上に役立っているのは確かなようです。貧しすぎてお金が借りられなかった自分たちにも資金が提供された。この仕組みに感謝していますという言葉を実際に聞くと、こちらもぜひ日本でこのことを伝えたい、と熱がこもるのでした。

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写真:ボロワーさんご夫妻と、一家が営んでいるブロック作りの作業風景


M7のみなさんと記念撮影をして、事務所をあとにしたのでした。 みなさん、また会いに来ますからね!

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