LIVING IN PEACE BLOG

勉強会・セミナー2008年11月26日 14:42

マイクロファイナンス・フォーラム(11/28)直前対策②!!! -マイクロファイナンス機関の資金調達

さて、28日のフォーラムでは、スタンダードチャータードのプレゼンもありますが、昨今の欧米におけるマイクロファイナンス投資を理解するためには、MFIsの資金調達の仕組みを理解することが不可欠です。前回、商業化するMFIsの業態転換の流れをまとめましたが、段階の異なるMFIsでは、資金ニーズや資金調達の選択肢が異なるのです。今回は、商業化の各段階におけるMFIsの資金調達方法をまとめてみようと思います。

 

通常、初期MFIs(NGO-MFIs)は、マイクロクレジットの原資となる資本は補助金等により既に確保されています。(予算がついた上で、プログラムが始められる場合が多いでしょう。)このため、初期のオペレーションにおいては、MFIsは主にバランスシートのアセット側のマネジメント、つまり、ポートフォリオの拡大、経営情報システム(Management Information System: MIS)の導入、キャッシュ・マネジメント等に経営努力が注がれます。やがて、これらの努力によりビジネスが軌道に乗ると、ポートフォリオを拡大するために、バランスシートの右側の構築、すなわち、新たな資金調達方法の開拓が始まります。

 

 

表にあるように、受贈資本のみで始めた初期NGOに、新たな資金ニーズがある場合、まずは援助資金を頼みとし、ドナーの新規開拓や既存ドナーからの追加的な補助金により調達をします。次に、収支が均衡し多少の剰余金を生み出せる自立的NGOになると、多少の信用ができるため、今度は同じ援助資金でも、補助金ではなく、ドナーや援助機関から市場金利より低い金利での借入れ(Concessional loan)ができるようになります。金利は払うものの、選択の幅は広がり、自由度が高まります。

 

しかし、一般的に援助資金というものは、限定的で、中・長期的な資金計画を立てる上では、非常に不安定な財源と言えます。なぜなら、MFIs自身のパフォーマンスとは無関係に、政治的、経済的状況等により、いつ打ち切られるのか、次年度あてにできるのかすら確かではないからです。また、マイクロクレジットが高金利なのはよく知られていますが、追加融資の条件として、それがコストをカバーするのに必要な金利であるかどうかに関わらず、一方的に金利の引き下げを要求されることもあると言います。

 

さらにビジネスが拡大し、資金ニーズが高まると、今度は市場金利での商業借入(Commercial borrowing)により資金調達を図ります。しかし、この段階で、NGO-MFIsは壁にぶち当たります。いくら実績のある成熟NGOとは言え、貸し手は、特に地場銀行は、なかなかNGOには融資をしないからです。仮にしたとしても、高リスクとみなされるため金利は高く、融資限度額も低い(エクイティに対して、同程度か最大でも2倍程度)ので、急成長するポートフォリオの成長速度を維持するのは困難になります。事実、多くのMFIsにとって最大の成長制約要因は資金調達であることが指摘されています。

 

例えば、MFのパフォーマンス評価基準の一つであるAccion CAMELでは、MFIsの負債比率は6倍以下であること、つまり自己資本比率が17%以上であることが推奨されています。 しかし、このようなMFIs対象の基準はあっても、前提となっているのは、業態転換を遂げたMFI銀行だけであり、NGO-MFIsなどは、そもそも想定の範囲外ということになります。つまり、MFIssがレバレッジを効かせ、資本市場からより多くの資金を調達するためには、NGOからMFI銀行への転換を遂げることが不可欠であり、それが、預金業務の展開と並んで、MFIsが甚大なコストをかけても商業化していく大きな要因となっています。

 

このような事情を背景に、見事業態転換を果たしたtransformed MFIsは、資金調達手段として、預金の動員、株式発行、そして債券発行と、その選択肢を広げていくのです。

 

預金については、しばしば最も低廉な調達手段と思われがちです。しかし、商業借入がオペレーションコスト等の追加的なコストが一切かからず、金利のみを負担すればよい一方で、transformed MFIsが新たに預金サービスを始める際には、貯蓄商品の開発、マーケティング、セールス、新たなMISの導入等のインフラ整備に多大なコストがかかるため、少なくとも短期で見れば、必ずしも最安の調達方法とはいえないわけです。ただし、預金サービスの提供はMFIにとって重要な資金調達源を確保するのと同時に、顧客サービスの向上であり、マイクロクレジットは必要としていないが、安全なお金の保管場所を必要としている多くの貧困層へアウトリーチを広げる可能性がある、という点も忘れてはなりません。

 

ということで、今日はここまでにしたいと思います。フォーラムまで本当にもう少しですが、明日時間が作れれば、MIVs(Microfinance Investment Vehicles)についても、簡単にまとめたいと思います。

 

 

《参照文献》

・Burand, Debora. 2007. “Chapter6.: The funding structure”, Transforming Microfinance Institutions, p163.
・CGAP/MIXが2004年に行った調査。http://microfinancegateway.org/files/14588_CGAP_MIX_MFI_Demand_for_Funding_Survey_Report.doc
・Saltzman,Sonia. and Darcy Salinger. 1998. “The ACCION CAMEL - Technical Note”, Accion International, USAID - Microenterprise Best Practices (MBP) Project. p137.

【ご留意事項】
当社が取り扱うファンドには、所定の取扱手数料(別途金融機関へのお振込手数料が必要となる場合があります。)がかかるほか、出資金の元本が割れる等のリスクがあります。
取扱手数料及びリスクはファンドによって異なりますので、詳細は各ファンドの匿名組合契約説明書をご確認ください。
ミュージックセキュリティーズ株式会社 第二種金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第1791号 加入協会:一般社団法人第二種金融商品取引業協会
Copyright (C) 2024 Music Securities,Inc. All Rights Reserved.