LIVING IN PEACE BLOG
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マイクロファイナンス情報2008年5月3日 16:25
ファイナンスの基礎-リスクとリターンについて
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ファイナンスが教えてくれる重要な知見の一つに、より高いリスクをとればより高いリターンを得られるというものがあります。逆にいえば、より高いリターンを得るためにはより高いリスクをとらなければならない、ということになります。これは私たちの経験上、受け入れやすい事柄でしょう。
この基本的なリスクとリターンの関係をもう少し深く考えてみましょう。次のような事例を想定してみます。あなたは投資家です。これから100万円を投資します。投資対象は2つあり、ひとつは1年後に確実に110万円になって戻ってくる国債で、もうひとつは、55%の確率で200万円、45%の確率で0円になって戻ってくるベンチャー企業への投資です。あなたはどちらの投資対象を選ぶでしょうか?
こうした選択意思決定の基準のひとつは期待値での比較です。国債の期待値はもちろん110万円です。ベンチャー投資の期待値も同じく110万円です(200万円×55%+0円×45%)。国債もベンチャー投資も期待値が同じですから、期待値だけで意思決定をする人はどちらの投資も選んでもいいと考えるはずです。
しかし、直感的に考えて何かおかしい感じがします。なぜなら、不確実な110万円よりも確実な110万円を選ぶほうが合理的に感じられるからです。
ただ、世の中には次のように考える人もいるでしょう。「確かに国債は確実に110万円をもらえるが、ベンチャー投資では200万円を得られるチャンスがある。だからベンチャー投資を選ぶ。」。この人の考え方に従えば、国債よりもベンチャー投資のほうががいいという意思決定になります。
それでは一体誰の意思決定が正しいのでしょうか?
実は、リスクに対する考え方によって答えは変わってくるのです。つまりリターンの期待値比較だけでは答えは出ないということでもあります。
ここで、リスクとは不確実性のことと考えましょう(もっと細かく考えると、ある確率分布に従う不確実性と確率分布が分からない不確実性があります。)。ファイナンスでは、リスクとは期待値からのばらつきと定義します。この意味でのリスクを分散とかボラティリティといったりします。ちなみにファイナンスでいうリスクは一般的な意味とは違い、マイナス方向だけではなくプラス方向のばらつきも含んだ概念であることに注意が必要です。
さて、ここでリスクがそういうものだとしてくじの意思決定の問題に戻りましょう。
もし、リスクに無関心な人がいるとすれば国債もベンチャー投資も同じ価値となるでしょう。ファイナンス的にいうと、国債もベンチャー投資も同じ期待効用(簡単にいうと幸せ)をもたらすといえます。
では、リスクを回避する人だったらどのような意思決定をするでしょうか?この場合確実な110万円がもらえる国債を選択するはずです。なぜならこのような人は期待値が同じであれば、よりリスクの低い投資対象を選ぶからです。
逆にリスクが好きな人はどのような意思決定をするでしょうか?この場合はリスクを回避する人は逆に、ベンチャー投資を選ぶことになります。なぜならこのような人は同じ期待値であればよりリスクの高い投資対象を選ぶからです。
このように、リスクに対する考え方が異なる主体をそれぞれ想定することで意思決定は異なってきます。ただ、ファイナンスでは期待値が同じであればよりリスクの低い投資対象を選ぶ主体が合理的な主体であるとして議論をします。このような主体の性質をリスク回避的といいます。
それではこのようなリスク回避的者を前提として再びリスクとリターンについて考えてみましょう。
今まで述べてきたように、リスク回避者は同じ期待値であれば国債を選ぶという意思決定を行います。では、リスク回避者はベンチャー投資の期待値がどんなに高くても国債を選ぶのでしょうか?そんなことはありません。ベンチャー投資を選択してもいいと判断するくらい期待値の高いベンチャー投資であればベンチャー投資を行うはずです。つまり、リスクに見合った見返りがあればリスク回避者でもベンチャー投資をを選ぶことがありえます。
まさしく、これがファイナンスでいうリスクとリターンの本質的な関係です。つまりリターンとはリスクの見返りなのです。リスクが高いほどリスク回避者はリターンを要求します。そして、この投資選択問題で国債の価格と、くじBが選択されるようなベンチャー投資の価格の差は「リスクプレミアム」と呼ばれます。そして、リスク回避者が国債とベンチャー投資に対して同じ期待効用をもつとき(ファイナンスでは無差別といいます)、そのベンチャー投資の価格を「確実性等価」といいます。ですから、国債の価格にリスクプレミアムを足したものがベンチャー投資の価格ということができます。
参考文献
野口悠紀雄「金融工学、こんなに面白い」文春新書(2000)
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