三陸とれたて市場ファンド ファンドニュース
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被災地からのレポート2012年3月2日 10:30
事業の進捗状況のご報告
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いつもの町が突然消えた、未曾有の大災害から、もう1年の歳月が経とうとしています。
町の瓦礫が片隅に追いやられ、拓けた視界に小さな仮設商店街が開店し、誰もいなかったその場所には、ほんの少しですが人の匂いが戻りはじめてきました。
被災から1ヶ月目に操業を再開した弊社は、鉄骨だけが残った店舗を借り受け、応急修繕をし、何とか魚介の出荷が最低限出来る環境まで回復する事ができました。
皆様からお預かりしている資金を活用し、これから本格的な生産回復にと次のステップに入ろうとした矢先、僕達の土台とも言える漁業生産者達を大きな絶望が襲い、漁業の根底を揺さぶる危機的状況に見舞われることになってしまいました。
それは、船や漁具などの流出に加えて被災前から問題となっていた高齢化しすぎた生産現場。そして、水産行政や漁協組織など、幾多にもわたる産業体質の弱点が生産現場をもろに襲い、それでなくても体力を消耗しつくした若い漁業生産者達に、海を諦めさせる絶望を与えたからです。
生産現場から立ち上げなおさなければ、漁業しかないこの地域がまるごと崩壊してしまう。それは本来であれば魚屋のやる仕事ではないのでしょうが、僕達が生み出す産業価値は、漁業生産者抜きにして実現できるものではありません。
また、僕達にとって仲間の漁業者は、目に入れても痛くないほどに大切であり、愛おしい存在でもあるからです。真っ直ぐで、職人気質で、負けず嫌いで。その仲間が日増しに弱っていく姿が、我が事のように胸を裂き、何とかしなければと走り回る日々でした。
ありがたいことに、僕の生まれ育った静岡県にある、桜えびで有名な由比港漁協の皆様方との交流も始まり、お互いが大型バスで行ったり来たりしながら、次の時代を担える産業構造に転換し未来ある水産業を作るための、一体となった産業再生が始まりました。多くの取り組みを通して、また、縁が絆を生み、あれ程までに絶望していた生産者達も少しずつ未来を取り戻しはじめ、船も漁具もまだ無い状態ですが、その未来に興奮して眠れなくなったとぼやくまでに希望が持てるまでになりました。
いつの頃からか、生産者がまとまり始め、命綱を預けられる者同士で新しいチームを作ろうという機運が高まりました。多くの交流は、生産者にお客様の像を明瞭に結ばせることに繋がりました。喜ばれる商品を全力で作っていく。全力で作られた商品に更なる磨きをかけてお客様宅に届けていく。
海チーム、間を取り持つ僕達、そしてお客様が一本のバリューチェーンに完全に乗る仕組みが、体温も揃い現実のものになろうとしております。
海チームは、仲間で支えあいながら、お客様に求められる品質を極限まで追求するために、漁業生産組合を組織し、未来に向かって船を漕ぎ出そうとしています。<漁業生産組合 三陸の匠>その名にふさわしい組織が3月には羽ばたけそうです。
地盤改良に目処が立てば、いよいよ僕達が羽ばたかなければならない時を迎えます。
この春から、愛くるしい漁業生産組合の仲間とともに、浜のミサンガ「環」生産者チームも交え、本格的な復興作業が始まる予定です。
カレンダーを見れば、皆様方と当初お約束をした予定に大きなズレを生じさせてしまっております。大変心苦しい限りですけれども、お預かりした資金に、ようやく手を触れることが許されるまでに、青写真が整ってきました。
建物の設計も本格的に始まりました。連日CAS凍結機は評価販売品を生産しています。あばら家の一角には、割烹料亭が営業できるほどに機材や資材が積まれていたりもします。
寄せられた多くのご好意と絆に支えられながら、仲間のリハビリも進み、社会復帰がもう直ぐそこに迫ってまいりました。初夏までには設備を整え、秋までにはみんなで離陸をする予定です。
皆様方からお寄せいただきましたご支援は、多くの夢を乗せたみんなの台所作りに活用される予定です。もう直ぐ、漁師料理が羽ばたきます。漁師のおばちゃん食堂も現実味を帯びてきました。そして、観光対応の漁師小屋も仕込みが始まっています。
被災地の中で、一番明るい場所じゃないかと笑えるようになりました。背負った笑顔を守りぬかなければと走り回る日は、まだまだ続きます。
でも、次の時代に引き継げる物を築き上げるのが僕達残されたものの使命です。
多くの方々の想いがこもった、大切な資金に胸を暖められながら。「あの大津波がきっかけで」と思える未来を、全力にて築き上げてまいります。
三陸とれたて市場代表取締役
八木 健一郎
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