LIVING IN PEACE BLOG

勉強会・セミナー2010年6月22日 20:57

5/29 LIPマイクロファイナンス主催イベント報告

皆さん こんにちは。

Living in Peace (LIP) の高橋です。

 

今日は、5月29日に行われたLIP主催イベントである「投資が社会にもたらすもの インパクト・インベストメントの可能性」についてお伝えします。

 

皆さんは、「インパクト・インベストメント」という言葉をご存知ですか?

大和証券の解説によると、「社会的な問題を解決しながら、経済的な利益を生む投資」とあります。http://mainichi.jp/sp/kinyu/01.html

 

さて、今回のスピーカーである徐勝徹(そ すんちょる)さんの場合は、これをどう捉え、また、なぜ、インパクト・インベストメントに携わるようになったのか、ご一緒に見てまいりましょう。

 

なお、当日の資料は除さんのブログにて公開されています。

Presentation at Living in Peace 

 

徐さんは、米国にて修士課程を修了された後、ユネスコや国際赤十字を経て民間のコンサルティング会社で勤務されました。 そして、現在は、株式会社kaienの共同創業者兼代表でいらっしゃいます。

非営利団体と民間企業の両方での勤務経験を通して、徐さんは、非営利団体では、the power of humanity が十分に引き出されていないのでは、という思いを抱きます。

 

では、the power of humanity とは、なんでしょう。

徐さんいわく、これは、特別な能力や才能ということではなく、the power of humanity in you. つまり、私たちすべての人の中にある自己犠牲の精神や公正さの観念などの気持ちや想いを指しています。人は、もともと市場の原理だけでは捉えられない価値を持っているのです。

 

徐さんは、非営利組織がうまく機能していない状態について、例えて言うなら、内燃機関発明前の石油資源のように、効率的な利用方法を知らないことでエネルギー利用に無駄が生じている状態、と説明しています。

非生産的な慣行、非効率、マネージメントの脆弱性、不十分なリソース、社会の関心の低さといったことが組織によくない結果を生み、そのことが組織をさらに衰退させるという負の連鎖を生みます。

徐さんは、このサイクルを好転させるシステムを構築する必要があると考えました。

 

では、どのようなシステムが必要なのでしょうか。

民間企業の場合(ordinary transactions)、物やサービスを提供することで、顧客(消費者)からお金などのフィードバックを得るという仕組みが働きます。しかし、非営利団体の場合(nonprofit transactions)は、団体へ資金を提供するドナーへのフィードバックがうまく働いていません。

 

つまり、1、よい結果を出すところにより多くの資源が配分され、2、多様性が確保され、3、ドナーより託された資金の流れを見届け、説明責任を果たす仕組みが必要です。そこで、徐さんは、インパクトインベストメントに携わるようになりました。

 

続いてインパクト・インベストメントについて見ていきます。

 

 

組織に必要なリソースは、お金で解決できます。逆に、お金がなければ、必要な物資、人材を補充できません。一般にインベストメント(投資)とは、株や債券などへの投資を指しますが、その善し悪しの基準は、経済的な見返りです。

 

しかし、社会的な見返りについて考えた時に、それを計る指標はありません。

経済的、社会的双方の見返りを期待する投資の形態としては、SRISocially Responsible Investment社会的責任投資)というものはありますが、SRIが十分な社会的見返りを生んでいるかについては、疑問が残ります。インパクト・インベストメントとは、経済的な見返りと社会的な見返りという2つの軸にまたがる投資をいいます。

 

現代社会の問題は多様化しており、かつ、多くのリソースを必要としています。そして、投資からくる見返りが、経済的か社会的かのどちらかを生むだけでは、社会的課題に対応することが難しくなってきました。

また、社会企業家といわれる人たちにこそ取り組むことができる分野も拡大しています。

 

そこで、impact investment cycleといって、社会事業のために、1、お金を流れやすくするために資本を調達でき、2、調達した資金の利用結果を投資家に伝え、3、投資家には結果に応じた見返りを提供する、という3つの結びつきが必要となります。しかし、このサイクルの最大の課題は、3点目のインセンティブです。投資家が得る心理的な満足を、社会的見返りや社会の変化と判断できるのでしょうか。

 

このインパクト・インベストメントについては、現在世界各地で様々な動きがあり、今まさに、発展の段階です。日本では、大和証券、鎌倉投信、ARUNMusic Securitiesなどが、関連の事業を行っています。

また、徐さんは、シンガポールのimpact investment exchange Asia  http://www.asiaiix.com/ に参画するなど、社会企業家や社会的企業が成長するために必要な資金が流れるための投資の仕組み作りにも携わっています。

徐さんのプレゼンテーションの後、活発な質疑応答が行われました。

そのなかで、NPOの活動を経済的見返りと社会的見返りの、どのあたりに設定して行っていけばいいのか、というものがありました。

徐さんの回答は、どこがスイートスポットか探る必要があるということ、またあえて、期待される経済的な見返りがゼロで社会的な見返りがプラスという領域も面白いのではないか、とも仰っていました。

 

LIPからは、NPOの中にも専従スタッフを置いているところとそうでないところがあり、その違いは、運営コストにつながるということ。LIPは専従スタッフを持たない「無償、目的あり、仲間あり」の団体で、ボランティアにより、民間企業だけではできないことに取り組んでいくとお伝えしました。

 

このセミナーは、たくさんの方のお申し込みをいただき、徐さんやインパクト・インベストメントに対する関心の高さを伺わせました。

 

次回は、626日(土)に「NPOプロボノフェア~あなたも社会にできること~」と題して、JICA地球広場でイベントを行います。

http://www.living-in-peace.org/Study/

 

LIPが主催をし、「かものはしプロジェクト」、「ミレニアム・プロミス・ジャパン」、「二枚目の名刺」の方たちと一緒に、お互いの活動をご紹介していきます。ソーシャルアクティビティにご関心のある方、ぜひいらしてください!

皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

 

文責 高橋正子

 

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