LIVING IN PEACE BLOG 2008年04月
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マイクロファイナンス情報2008年4月24日 15:31
マイクロファイナンスの現状
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このカテゴリーでは、マイクロファイナンスに関する基本情報をお伝えしたいと思います。
1.マイクロファイナンスとは何か
2.高すぎる金利?
3.経済学のロジックからみたマイクロファイナンス1.マイクロファイナンスとは何か
マイクロ(小さい)ファイナンス(融資)という言葉からもわかるように、マイクロファイナンスとは、小口の融資、特に開発途上国における小口の融資を指します。もともと、開発途上国では、借入能力の高くない人々に対して、融資がなかなかつかない、そしてそれゆえに新規事業を興し貧困を逃れることができない、という状況がありました。そのような人々にとっての貴重な資金調達の手段として登場してきたのが、マイクロファイナンスです。マイクロファイナンス金融機関(MFI,Micro Finance Institution)は、通常の金融機関からは借入を行うことができない人々に資金を貸し付け、資金制約に苦しむ人々の貧困からの脱出に寄与してきました。
これらマイクロクレジットを行う金融機関である、MFI(Micro FinanceInstitutions)は、私企業や政府組織などの形態をとっています。MFIはこの期間に爆発的に増加しています。これは、マイクロクレジットに対する需要の高まりを反映しているといえるのかもしれません。MFIの代表例:グラミン銀行
マイクロファイナンスにおいて有名なのは、バングラディッシュのグラミン銀行でしょう。グラミン銀行における貸し出しの在り方は、以下のようなものだそうです:・5人1組のグループに貸し付け、それは連帯保証
・5人のグループは、借り手が自分たちで選ぶ
・金利は25%~30%以上と、かなり高い
・女性に貸し付ける(グラミン銀行では、97%の貸付は女性に対してなされています)
(ただし、グループ貸付については、結果として本当に困っている人に融資がつかないという問題があったため、廃止の方向にあるようです)このマイクロファイナンス、回収率はなんと98%を誇ります。 大成功したグラミン銀行は一気に成長をしました。
そして、総裁のモハマド・ユヌス氏は「底辺からの経済的および社会的発展の創造に対する努力」を理由として、ノーベル平和賞を受賞しました。2.高すぎる金利?
マイクロファイナンスの金利は非常に高いです。25%以上という場合も多く、日本であれば、上限金利規制に抵触してしまう高さです。ですが、マイクロファイナンスの金利の高さはある程度までは合理化できるものなのかもしれません。その理由は主に以下の2つです:
・借りた人が返せなくなるリスクが高いため、そのリスクの対価として金利を高くする必要があること
・少額の融資においては、どうしても一つの融資あたりのコスト比率が高くなり、それを金利収入で賄う必要があること特に、規模の問題は非常に重要なポイントとなっています。多くの金融機関が少額の融資を行わないのは、このような理由によっています(ただし、いくつかの開発途上国の金融機関は、携帯電話などの端末を利用した貸付の取り組みをして、この問題をクリアしつつあるそうです)。
3.経済学のロジックからみたマイクロファイナンス
マイクロファイナンスの成功は経済学のロジックにもかなっているものといえるのかもしれません。
1)社会的資本の活用
社会的資本というのは、その社会において共有されている信頼関係などを指します。グループによる連帯責任という仕組みを作ることにより、この社会的資本は対外的に価値を有することになります。社会的なつながりが強い人々の中においては、お互いの信頼を損ねないように、人々ができる限り努力をし、結果として借り手のモラルハザード(計画的破産など)が減少することになります。2)情報の非対称性の克服
融資を行う際に、借り手と貸し手の間には、持っている情報について大きな隔たりがあります。借り手は自分の財務状況をよく知っているのに対し、貸し手の借り手に対する情報は限られています。両者の間にある情報の隔たりを、情報の非対称性といいますが、上で述べたようなグループでの借り入れは、この情報の非対称性をある程度まで克服することができます。なぜなら、借り手側は、連帯責任という事を考え、自分がよく知っていて、信頼できる仲間を集めようとするために、貸し手が「貸してはいけない人に貸してしまう」可能性を下げることができます。金融機関は、自らが本来行っていた審査のコストを下げることができるようになります。
また、仲間内の監視により、
・借入段階
・借入後の投資
・投資後の行い
において、モラルハザードが減少する可能性が生じ得ます。
3)リスク分散
グループでの連帯責任のため、ひとりがデフォルト(債務不履行)しても他者がその分を賄うということになります。
これは、表現を変えると、ひとりひとりの借り手の個別リスクを分散しているともいえます。もちろん、マイクロファイナンスには批判もあります。たとえば、グラミン銀行の貸付方法については、「グラミン銀行はただ単に、撤廃されるべき社会制度(女性差別など)を利用しただけなのではないか」、という批判があるようです。また、多くのMFIにより、日本の多重債務者問題に類似した問題が起こっており、深刻な社会問題になりつつあります。
これら批判は一面において当を得ているとは思います。それでもなお、マイクロファイナンスは、本来であれば資金調達をすることがかなわなかった人々に対し道を開いたという点において、少なくない人々に新たな機会をもたらしたという点で、評価されるべきなのだと思われます。
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