LIVING IN PEACE BLOG 2008年06月
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勉強会・セミナー2008年6月18日 13:23
Common Wealthのサマリー
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Common Wealth: Economics for a Crowded Planet
ちなみにこの本のサイトは
http://www.sachs.earth.columbia.edu/commonwealth/index.php
ここで、クイズゲームとかも楽しめます。
本書のタイトルCommon Wealthは、(人類)共有の富とでも言うのでしょうか。科学の発展は、確実に世界をせまいものにしつつあり、それだけに、僕たちが直面している課題というのは、以前よりもより世界的な(commonな)ものであると、Sachs氏は主張します。特に現在私たちが直面している課題は、
1環境の保護
2人口の安定
3格差の是正と極度の貧困の終焉
の3つで、これらはお互いに密接に絡み合っています。問題は一つの国家のアクションによっては解決できず、世界的な協力関係によってのみ解決できるものだと彼は主張します。
上の3つの問題の解決は、継続可能な発展(Sustainable Development)につながるものです。 Sustainable Developmentは、上の3つの問題が適切に解決されてこそ実現が可能になります。 Sachs氏は、正しい方法をとれば、Sustainable Developmentは達成可能であると説きます。
環境の保護
科学技術の発展と、人口増加、一人当たり生産量の増加にともない、人類が地球環境に与えうるインパクトは年々増大しています。 すべての人が、現状を永続させることは不可能であることを知っています。 この30年で、脊髄動物の種はなんと半減しています(ところで、映画Earthはとてもよいですね)。 砂漠化も多くの地域で進み、十分に水が供給されない地域が増え、他方では水面の上昇により水没の危機にある国も増えています。 気温の上昇は、天災を増加させ、同時に新たな類の病気が蔓延する原因ともなっています。
これらの解決のためには、市場システムをうまく活かした政策の導入、規制、技術革新、食糧流通システムの効率化などが強く求められています。
人口の安定
人類の人口は、指数的に増加しています。西暦0年から1700年ごろまで、地球の人口は常に10億以下でした。それが、今や60億人。そして、現状が続けば、人口は2050年までに90億になる事が予想されています。継続可能な発展を達成するためには、これは80億以下に抑える必要があります。
人口の増加は、貧困の罠(自力では貧困から抜け出せなくなる状況)と密接に関わっています。最貧国における高い出生率は、幼児の高い死亡率に一因があります。しかし、高い出生率は、家庭が貧困から抜け出すことをより困難にし、それはその国家の経済成長を低下させ、他の国家にも影響を与えることになります。
人口の安定のためには、出生率を下げるインセンティヴを導入する必要があります。現に、先進国で多少の個別差がありながらも出生率が低いのは、インセンティヴによるものが多いのです(低い死亡率、高い養育費など)。途上国において出生率を下げるためにとるべきアクションは、医療制度を発展させ子供の死亡率を下げること(これには援助が必要です)、女の子の進学率を上げ、同時に女性の社会発展を促進することなどにあります。
格差の是正と極度の貧困の終焉
いまだに、世界の人口の6分の1である10億人は極度の貧困の中に生きていて、そのうち数百万人が毎年貧困のために亡くなっています。アフリカでは、5歳以下の幼児の死亡率は17.9%になります。 世界における幼児の死者数は毎日26,000人ですが、このうち3分の1は、ほんの少しのお金があれば(例えば蚊帳一つあれば)防げるものです。
お金があれば幸せになれるわけではありませんが、ない状態で幸せになる事は難しい。また、貧困は、政治不安や紛争、テロの温床にもなりえます。
貧困を解決するための基本的な処方箋は、以下のものになります。 まずは、人口を適切な水準に保つこと。 そして、そのうえで農業生産性を向上させ、社会インフラを整備し、民間部門主導の発展を促進するための技術の支援などを行う事にあります。
これにも多くのお金が必要です。 Sachs氏は、援助の必要性を説いています。 Easterlyは、これまでの多くの援助がまったくの無駄だったと説き、その原因はインセンティヴを考慮しなかったことによると主張していますが、Sachs氏は援助が事実無駄に使われうる事に同意しながらも、その無駄な援助は多くの場合先進国による「援助のための援助」であったこと、正しい方法によって運営された援助は、大きな効果をもたらしてきたことを話します。 特に、日本の開発援助が東・南アジアの国々の発展に大きく寄与してきたことを高く評価しています。
貧困の撲滅は、先進国が自らの収入の2.4%を毎年援助することによって達成することができるとSachs氏は主張します。アメリカの軍事費二日分で、アフリカ全土のマラリア対策費1年分を賄う事が出来るそうです。(そんな簡単なものではないと思いますが)軍事費の見直しを少しばかりすれば、貧困の撲滅のための資金は十分に拠出することが可能です。
現在、いくつかの国でMillennium Village Projectが進められています。 これは、村単位で農業・医療保険・教育などを発展させることにより経済開発に成功したロールモデルを数多く生み出しています。この経験を国家単位に適切に活かすことができるのであれば、2025年前に極度の貧困(1日に1ドル以下で生活すること)を撲滅させるMillennium Promiseを達成することは可能になるでしょう。
アクションの必要性
最初にも書いたように、僕たちがいま直面している問題は、より世界的な問題であり、皆の協力によってのみ乗り越えられるものになっています。政府のみならず、企業、NGOなど,大学・研究機関らの組織の連携がうまくいってこそ、問題は解決に進めることができます。
また、個人レベルでも今すぐにできることがあると、Sachs氏は話します:
・まず、僕たちの世代が直面している問題を認識すること
・各地に旅行して、現実を見ること
・永続可能な発展の実現のためにアクションをしている組織に自分も入ること
・周りの人々を巻き込むこと
・インターネットを活用して、永続可能な発展について知らせること
・自分の属している企業や、政府に働きかけること
・Millennium Promiseのスタンダードに沿って生活を送るようにすること
Jeffrey Sachsの地に足付いた楽観主義には本当に感じるところが多いです。僕も、いつまでもこうありたいと思います。まずは、自分ができるところから、少しずつでも着実にやっていこうと思います。 -
勉強会・セミナー2008年6月13日 12:59
KIVAに掲載されているMFIの世界分布
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前回の投稿で、KIVAを紹介いたしました。
今回は、そのKIVAに掲載されているMFI(KIVAのウェブ上では、"Kiva's Field Partners"と呼ばれています)のデータを集め、その分布を世界地図に表してみました。
この地図は、SAS(http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/)という統計パッケージで作成しております。
・世界地図の説明と解釈
世界地図と横棒グラフが重ねて表示されています。
世界地図は、各国におけるMFIの合計を表しています。一方、横棒グラフは地域別(アフリカ、アジア、中米、南米、欧州、オセアニア)にこのMFIを合計したものを表しています。
国レベルの集計ではやや詳細すぎて全体の傾向を捉えにくいため、地域別でより大まかなトレンドを把握するためです。
この世界地図からわかることは、特にサハラ砂漠以南のアフリカにおけるMFIが多いことです。次に多い地域としては、東南アジア、中央アジア、中米、南米などに多く分布しています。自明かもしれませんが、貧しい地域にこそMFIがより多く分布していることが確認できます。
・データソースについて
KIVAのField Partrnersを紹介するページ(http://www.kiva.org/about/partners)から、VBAで各MFIについて、MFI名・国名・地域・リスク関係の指標・金利関係の指標などに関する10項目を収集しました。収集時期は2008年3月です。その結果、106のMFIについてデータが作成できました。
そのうち、国・地域名・金利の欠損値があるものは除外した68のMFIを分析対象としています。
・世界地図にするメリット
データというものは膨大で複雑であり、人間の情報処理能力で直感的にわかることは滅多にありません。
そこで、まずはグラフ化する(データを目に見える形で表す)ことで、データの概要や傾向が瞬間的に把握することが可能になるのです。
この他にも、円グラフ、折れ線グラフなど、テレビで資料として用いられることも珍しくありません。その分野の専門家でなくとも(テレビの一般視聴者でも)、グラフ化することで、直感的な理解が得られます。
・コメント
データの件数がそれほど多くないこともあり、わざわざ世界地図にするほどでもなかったかな、という気がしないでもありません。このデータの質・量では、より厳密な統計分析や回帰モデルを用いるのは少々厳しいです。
しかし、「MFIは貧しい地域に多く分布しているだろう」、という漠然とした考え(思い込み?)を実際のデータで検証する姿勢は重要であると考えています。
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