LIVING IN PEACE BLOG
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メールマガジン2009年4月7日 09:25
メールマガジン Piece & Peace No.004
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リビング.イン.ピース(LIP)メールマガジン Piece & Peace No.004 09/04/03号
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こんにちは。
第1回現地視察に続いて、第2回の現地視察レポートを代表の慎よりお届けします。
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2009年3月29日(日) 第一日目
ベトナム航空で、カンボジアの首都プノンペン入り。
空港を出ると、南国の暑さが迎えてくれる。日本の真夏くらい。
空港出口には、旅行客を捕まえるタクシーの客引きの人だかり。 「9ドルでホテルに
連れてっていってくれる」という客引きに、「そりゃ高いよ」と言ったが、ラチがあ
かない。タクシー業者でトラストを組んでいるようなので諦めて、9ドルでホテルへ。
町は、雑然としつつも活気であふれている。こういう雰囲気、すごく好き。
タクシーの隣を、家族5人乗りバイクが走り去っていったり。
タクシードライバーはボブディランを流していた。こんなところでLike a Rolling
Stone*2を聞けるとは思ってなかったのでびっくり。このCDは、日本人の旅行客がく
れたのだそう。
宿泊先で夕食。ココナッツミルクのたっぷり入ったカレーと、地ビールであるAngkor
Beer。とても美味しい。職場の人の忠告を守り、氷だけは飲まないように注意する。
食後ホテルでボーっとしていてももったいないので、プノンペン市街に繰り出す。
ここは、数か所以外に信号がなく、道路を渡るのもちょっと大変。路上で寝ている人も少なくない。一応蚊帳を張ってはあるが、決して快適ではなさそうだ。夜中に
ゴミ処理車が活動していて、街のいろいろな所に山積しているゴミを片付けていた。
道の片隅でトランプをしている人を隣で見ていたら受け入れてくれた。後でこの国
の至る所で感じることになるのだけれど、カンボジアの人たちは皆とてもフレンド
リーだ。
混じって一緒にトランプをする。6枚のカードが配られ、3枚と3枚の組み合わせ
でオイチョカブのようなものをするルールのようだけれど、やっている人たちはほ
とんど英語を使えないので、理解にてこずった。最初は勝っていたのだけれど、負
けがこんでしまい、終了。その場を後にする。
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2009年3月30日(月) 第二日目
今日は、プノンペン市内のマイクロファイナンス金融機関を訪ねる。
CEOから直接プレゼンを受け、それ以外にもファイナンス担当者やITシステム担当
者からも話を聞く。
ITシステムが予想をはるかに超えて、しっかりと整備されていてビックリした。
現場担当者のインプットの質がしっかりと担保されているのなら、かなり確実に顧
客の信用情報を管理できていることになる。技術進歩はすごい。特に、それが多く
の国に直接移植できるという点において。ここのビジネスパーソンの多くは携帯を
持っているし、無線LANの設備も充実している。
僕の親であれば、今のカンボジアの状況は戦後間もないころの日本のそれに似てい
ると話すのかもしれない。ただし、唯一違うのは、いくつかのハイテク機器の存在
だろう。こういった技術の移転可能性があるからこそ、カンボジアの経済はアメリ
カや日本のそれに近づいていくことができるのだと思う。
マイクロファイナンス金融機関の人たちに、路上でトランプを一緒にしたことを話
したらビックリされた。ルールについて教えてもらおうとしたが、その人たちもあ
まり分からないようだ。
その後、このマイクロファイナンス金融機関の支店がある、Pursat *3まで車で移
動。プノンペンから北西に約170km。この幹線道路には信号が一つもない。道の
周りは多くが畑で、牛が普通に道を横断している。右側車線で、前の車を追い越す
ときには反対車線に飛び出してから追い越すことになる。なので、向かってくる
車と至近距離ですれ違うこともしばしば。お互い時速100kmくらいで走っている
ので、ぶつかったら大惨事になることは間違いない。交通事故も少なくないよう
だ。移動中に2件の交通事故を見かけた。比率としては、かなり高い。
Pursatに到着。標識にもほとんど英語を見かけない。外国人の姿も見られない。
さっそく現地でマイクロファイナンス金融機関から借入を行っている人のところ
を訪ねていく。
最初に訪ねたのはMen Pheroさん。6人家族のお母さん。
彼女は何回かの融資サイクルを経て、今は3種類のローンを借りている。一つは豚
の飼育、一つは警官たちをターゲットにしたモーテル、一つはタクシーのための
車の購入のため。最初は100ドルからの借り入れだったが、それを着実に返すに
つれ借入額は大きくなり、いま車について借りているローンは2,000ドル。満期
は2年で、金利は月に2.5%。これはかなり一般的なレートのようだ。毎月、金利
と元本の支払い額が決まっていて、彼女はそれを返済しないといけない。このロ
ーンでは土地の権利が担保になっている。また、彼女は借入の際に、その金額の
3%をデポジットとしてマイクロファイナンス金融機関に預けないとい けない。
グループ貸付・無担保というのが、マイクロファイナンスのステレオタイプとし
て語られることが多い。でもカンボジアではどちらかというと個人貸付の方が多
いし、担保がついている場合も少なくない。その意味では、カンボジアでのマイ
クロファイナンスと、普通の貸し付けを分けることは難しい。ただし、マイクロ
ファイナンスが登場する前までは、彼女のような人々は金融サービスに触れる機
会がなかった。今、彼女のビジネスは幸いにもうまく行っていて、家も大きくな
っているが、金融サービスがなければ、このような初期資本投資もできなかった
だろう。
彼女に、「最初にお金を借りるときは怖くなかった?」と聞いてみたると、「確
かに少し怖かった。だけど、自分が行うビジネスがうまくいくという確信があっ
たから、借入への一歩を踏み出すことができたの」と彼女は答えた。『ユヌス自
伝』に出てくる、最初に借入を始める人の話を思い出した。
もう一件を訪ねる。
今度の借入人は男性で、Chhoeum Bummarathさん。
大理石を削って置き物を作って売るのが彼の仕事だ。3回目となるローン金額は
1500ドルで、2009年3月30日の今日借りたばかり。満期は18カ月で、金利は月に
3%。 彼はこのお金で大理石を買う。それは、1kgで1.5ドル。50kg分の塊を買う
と、だいたい5体の彫刻品を作ることができて、それは平均すると20ドルで売れ
るのだそうだ。他のより小さいサイズの彫刻品も併せて、彼の一か月あたりの
売上は305ドルから360ドル。
うん?疑問が2つ。
50kgの大理石は75ドルする。これに彫刻を施して売ると100ドル。彼の一カ月の
売上が300ドルということは、彼は月に225ドルを材料費に充てていることになる。
1.じゃあ、そもそも彼はなんで1500ドルも借りる必要があるのだろう?
「残るお金はモーテル購入に充てるのだ」とのこと。なるほど。
本業で必要な運転資金は常に300ドル弱なので、このローンの主な使途はモーテ
ル購入ということになる。
2.彫刻稼業のキャッシュフローは回るのか?
彼の彫刻品稼業では、75ドルの原材料から100ドルの商品が作られる。ただし、
他に器具その他も買わないといけないので、これも考慮すると、彼の売上に対
する利益率は20%弱になる。ここから月の利子である3%を返済すると、15%
程度しか残らない。一カ月の300ドルの売上から手に入る収入は50ドルくらい。
この状態が続くのなら彼のキャッシュフローはちゃんと回るのだけれど、こ
の売上はかなり不確実だ。かつ、彫刻品の購入者の多くは観光客であること
も考えると、今後一気に売り上げが落ち込む可能性がある。
彼に聞いてみた。「本当にこれは返せると思う?」 すると、「このローン期
間に返さないといけないお金は2,000ドル弱だけど、全部返した後に500ドル
くらいは手元に残る計算でいるよ」という答えが返ってきた。
僕たちが直接会えるということは、今日会った2人は成功事例なのだろう。
これは日本でも同じだと思うけれど、お金を稼ぐことは決して簡単じゃない。
でも、失敗を恐れずにビジネスを始めようとする人のために、マイクロファ
イナンスは力を貸してあげることができるのだと感じた。
でも、この人たちが事業で失敗したら?残念ながら、まだこの国では、セー
フティネットは十分ではない。
また、マイクロファイナンスでお金を借りると、その次の月から返済が始ま
るため、借り手には早期に稼ぎを出せる事業を選択するインセンティヴが生
じる。これが昂じて、国の産業の在り方が変化する可能性があるのではない
かと、少し不安になった。 カンボジアでは、国民の80%が農業従事者で、
貧困層は農業従事者に集中している。マイクロファイナンスによって、これ
まで農業に従事していた人たちが、離農してしまう可能性があるのだ。もち
ろん、農業ではなくても生産性の高い事業を行えることができれば問題は な
いのだが。
一人当たりの貸付金額も決して高くないため、農業従事者に対してはグルー
プ貸付を提供している場合がほとんどだ。その代り、今日会ったような個人
事業者は個人で担保をつけて借入をしている場合が多い。
その日は現地のホテルへ。インターネットは一切使えない。
僕たちを案内してくれた人たちと一緒に食事をする。カンボジアでは、どこ
で食事をしても全部とても美味しい。
その日は片頭痛がやってきた。夕方の8時に就寝して、11時間寝ることに。
夢の中でも片頭痛から来る熱に浮かされたのだけれど、夢の中でトライアス
ロンのアイアンマンレースでゴールした直後に、一気に楽になる。
*1 慎は朝鮮籍保有者です。この国籍は、植民地後、日本に住んでいた朝鮮
半島出身者に便宜的につけられたものです。韓国籍を取得した人は、国籍
保有者としてみなされますが、慎の家庭ではそうしておらず、法律上は無
国籍者となります。そのため、パスポートも保有しておりません。
*2 YouTubeでのライブ映像。 http://www.youtube.com/watch?v=xO0gSJGJ7Fs
*3 カンボジアの地図。http://www.maplandia.com/cambodia/pursat/
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いかがでしたでしょうか?前回までのマイクロファイナンス機関の説明に
加え、慎や私たちの考え方についても、少しはお伝えできましたでしょう
か?
それでは。
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代表の慎が今月、ダイヤモンド社より本を出版致します。タイトルは『15歳からのファイナンス理論入門―桃太郎はなぜ、犬、猿、キジを仲間にしたのか?』、 こちらも宜しければ、まずは書店で手にとって頂ければと思います。
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