【連載Vol.4】「再生可能自然エネルギーと小水力発電」(小水力発電解説シリーズ)
2020年12月24日
地域の自立を目指す 小水力発電ファンド
再生可能自然エネルギーと小水力発電
1,再生可能自然エネルギーの今
菅首相は2020年秋の通常国会所信表明で2050年のゼロカーボンをめざしエネルギー構成の見直しを宣言しました。
また2030年にパリ協定に基づく温暖化ガス排出の26%削減目標も国際公約しています。その行動アクションの一環として石炭火力発電所のフェードアウトを打ち出し代替として再生可能エネルギーと原子力発電を当てるとしましたが、原子力発電が福島第1原発事故以降の脱原発機運から脱却できない現在、再生可能自然エネルギー(以降自然エネルギーと現す)へのシフトは重要且つ急務なのです。
自然エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、木質バイオマス等をエネルギー源とし、これを電気エネルギー、熱エネルギーとして利用するものです。しかし、これら自然エネルギーのエネルギー源分布は薄く広い範囲から調達必要があります。
その上、可搬性は極めて悪く。自然エネルギーを利用するには密度の薄いエネルギー源を広く集め、移動させることなくその土地で利用することが望ましいのです。
それでもエネルギーとして利用するにはコストは大きく、エネルギーへの変換効率も極めて低く、今まで自然エネルギーが一般に普及しなかったのはこれらの理由によるものです。
しかし平成23年3月11日に発生した東日本大震災、そして福島第一原子力発電所の事故により自然エネルギーを取り巻く様相が大きく変わりました。
災害時のエネルギー断絶への不安。原発事故による環境汚染、周辺住民の生命に対する恐怖が高じて原子力発電に対する懸念が高まりました。
代替え施設としての火力発電所は化石燃料を大量に消費することから、燃料費の高騰、資源の枯渇、海外依存度がほぼ100%であるがための国際情勢の変化による輸入の停止、それにまして温暖化ガス排出による地球温暖化による環境破壊への危惧が高まり、これら従来型のエネルギーに置き換わるものとして自然エネルギーへの関心が高まってきたとのは当然と言えます。
このような既存エネルギーに対する市民の意識変化に呼応するように自然エネルギーによる発生電力の固定価格買い取り制度(FIT)が平成24年7月1日にスタートしました。
FIT開始3年間のプレミアム価格によりバブル的に自然エネルギー事業が日本各地に誕生し、加速度的に広まりました。しかしその多くは太陽光発電事業でした。
開発が比較的容易で工事期間が短く、買い取り価格の高かった太陽光発電の急激で大規模な拡大は多くの歪を生み、自然エネルギー普及に対する阻害要因を発生させる事態に及び、平成26年度までのプレミアム期間終了後は太陽光発電事業が大きく減速する要因の一つになりました。
自然エネルギーの特性を生かし、活用するには地域での事業、地域での消費が絶対条件と考えますが、現状は中央の大資本が自然エネルギー事業の主体になっている事例が多く、中央資本が手を染めることは地域の資源と地域の資金を搾取することに他なりません。また雇用や産業振興においても地域に対する貢献はほとんど無いのが実情です。いわばエネルギーの植民地化と言える状態です。
本来地域エネルギー事業はその目的を地域の農業や産業の再興、雇用の創出等地域の活性化に資するための事業でなければならないと考えます。
地域の住民が地域の資源を地域のために生かす。そこから生まれる多くの価値にこそ意義があると考えます。
エネルギーの地産地消こそが再生可能自然エネルギーを普及させ定着させる大きな力になると考えています。
2、小水力発電の可能性
前述のように太陽光発電事業は平成27年以降大きく減速しました。
そこで太陽光発電以外の自然エネルギー事業の一つとして、小水力発電の可能性について考えてみます。
日本列島は地球上では温帯域に位置しますが四方を海に囲まれ、寒暖の海流に恵まれているため他の同緯度の国々に比べ温暖湿潤であり降雨量も多く地球的「水循環」の水配分において大きな恩恵を受けていいます。
降雨そのもののエネルギー量は小さいですが、山を下り川として集積された水は大きなエネルギー量を持つことになります。国土の多くを山地とし、標高差に起因する流れの強い川を多く持つ日本は水エネルギーに恵まれており、水力発電に適した国土であるといえます。
事実国内あらゆるところで巨大ダムによる水力発電が昭和の中ごろまで開発されエネルギー構成の大きな地位を占めてきました。現在その地位は火力発電、原子力発電にとって代わられ総エネルギー量に占める水力発電の割合は小さくなっていますが、水力発電が日本の高度経済成長に果たした役割が多大であったことはいまさら述べることも無いでしょう。
3、長野県における小水力発電
私達が事業展開を行なう長野県における水力発電の可能性について考えてみます。
長野県は日本の中央に位置し海からも遠く降雨量は多くありませんが、3,000m級の山々を擁する急峻な県土により、雨を集め、落差のある沢や渓谷を経て千曲川や天竜川の様な大河として多くの水エネルギーを蓄積しています。
降雨量の少ない長野県の水力発電の賦存量が全国有数なのはこのためです。事実多くのダム式水力発電所が県内各所に存在します。
水力発電と言うと大規模なダム建設を伴う発電事業を連想しますが、現在では環境意識やダムそのものの費用対効果、管理運営の手間などの面から大型のダム建設には市民の抵抗感が大きく、また可能性のある地点はほぼ開発され尽され、新規のダム建設は事実上不可能となっています。
しかし自然の水系そのものを活かし、また農業用水のような人工の水系を利用したダムを伴わない小規模な水力発電、既存の砂防ダムを利用した小水力発電事業は自然環境に対する負荷も少なく、今後地域のエネルギー供給源として大きな期待が寄せられています。
このような小水力発電の可能性の面から長野県を検証してみると、大河に流れ込む中小河川は多く、山間地の農地に水を供給する用水網が張り巡らされています。山間の河川が多いことは土砂災害を防ぐための砂防ダムも多く整備されているとこです。まさに小水力発電の可能性を大いに秘めた県土と言えます。県も小水力発電の可能性に着目し、県庁内に係る部署を横断的に束ね、窓口を一本化し事業者への支援態勢を構築しています。
またこの組織が県内の小水力発電に可能性のある地点の調査を行い。候補地をリストアップし県内事業者の支援に役立てています。
このような行政の後ろ支えは全国的の稀有であり、事業を試みる者として非常に心強いものです。
発電事業はインフラ整備に関わる事業であり公共性の高い事業です。行政との連携は何より必要であり不可欠なものですので長野県の取り組みは非常にありがたいものであります。
私達3V小水力発電株式会社はこのような環境を背景に地域と寄り添い地域振興と安定したエネルギーの供給を目指し事業を展開しています。
鈴木 純一
NPO法人諏訪圏ものづくり推進機構のSEE研究会小水力発電部会所属
現在、3V小水力発電株式会社と茅野市内における小水力発電建設計画に参画
1,再生可能自然エネルギーの今
菅首相は2020年秋の通常国会所信表明で2050年のゼロカーボンをめざしエネルギー構成の見直しを宣言しました。
また2030年にパリ協定に基づく温暖化ガス排出の26%削減目標も国際公約しています。その行動アクションの一環として石炭火力発電所のフェードアウトを打ち出し代替として再生可能エネルギーと原子力発電を当てるとしましたが、原子力発電が福島第1原発事故以降の脱原発機運から脱却できない現在、再生可能自然エネルギー(以降自然エネルギーと現す)へのシフトは重要且つ急務なのです。
自然エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、木質バイオマス等をエネルギー源とし、これを電気エネルギー、熱エネルギーとして利用するものです。しかし、これら自然エネルギーのエネルギー源分布は薄く広い範囲から調達必要があります。
その上、可搬性は極めて悪く。自然エネルギーを利用するには密度の薄いエネルギー源を広く集め、移動させることなくその土地で利用することが望ましいのです。
それでもエネルギーとして利用するにはコストは大きく、エネルギーへの変換効率も極めて低く、今まで自然エネルギーが一般に普及しなかったのはこれらの理由によるものです。
しかし平成23年3月11日に発生した東日本大震災、そして福島第一原子力発電所の事故により自然エネルギーを取り巻く様相が大きく変わりました。
災害時のエネルギー断絶への不安。原発事故による環境汚染、周辺住民の生命に対する恐怖が高じて原子力発電に対する懸念が高まりました。
代替え施設としての火力発電所は化石燃料を大量に消費することから、燃料費の高騰、資源の枯渇、海外依存度がほぼ100%であるがための国際情勢の変化による輸入の停止、それにまして温暖化ガス排出による地球温暖化による環境破壊への危惧が高まり、これら従来型のエネルギーに置き換わるものとして自然エネルギーへの関心が高まってきたとのは当然と言えます。
このような既存エネルギーに対する市民の意識変化に呼応するように自然エネルギーによる発生電力の固定価格買い取り制度(FIT)が平成24年7月1日にスタートしました。
FIT開始3年間のプレミアム価格によりバブル的に自然エネルギー事業が日本各地に誕生し、加速度的に広まりました。しかしその多くは太陽光発電事業でした。
開発が比較的容易で工事期間が短く、買い取り価格の高かった太陽光発電の急激で大規模な拡大は多くの歪を生み、自然エネルギー普及に対する阻害要因を発生させる事態に及び、平成26年度までのプレミアム期間終了後は太陽光発電事業が大きく減速する要因の一つになりました。
自然エネルギーの特性を生かし、活用するには地域での事業、地域での消費が絶対条件と考えますが、現状は中央の大資本が自然エネルギー事業の主体になっている事例が多く、中央資本が手を染めることは地域の資源と地域の資金を搾取することに他なりません。また雇用や産業振興においても地域に対する貢献はほとんど無いのが実情です。いわばエネルギーの植民地化と言える状態です。
本来地域エネルギー事業はその目的を地域の農業や産業の再興、雇用の創出等地域の活性化に資するための事業でなければならないと考えます。
地域の住民が地域の資源を地域のために生かす。そこから生まれる多くの価値にこそ意義があると考えます。
エネルギーの地産地消こそが再生可能自然エネルギーを普及させ定着させる大きな力になると考えています。
2、小水力発電の可能性
前述のように太陽光発電事業は平成27年以降大きく減速しました。
そこで太陽光発電以外の自然エネルギー事業の一つとして、小水力発電の可能性について考えてみます。
日本列島は地球上では温帯域に位置しますが四方を海に囲まれ、寒暖の海流に恵まれているため他の同緯度の国々に比べ温暖湿潤であり降雨量も多く地球的「水循環」の水配分において大きな恩恵を受けていいます。
降雨そのもののエネルギー量は小さいですが、山を下り川として集積された水は大きなエネルギー量を持つことになります。国土の多くを山地とし、標高差に起因する流れの強い川を多く持つ日本は水エネルギーに恵まれており、水力発電に適した国土であるといえます。
事実国内あらゆるところで巨大ダムによる水力発電が昭和の中ごろまで開発されエネルギー構成の大きな地位を占めてきました。現在その地位は火力発電、原子力発電にとって代わられ総エネルギー量に占める水力発電の割合は小さくなっていますが、水力発電が日本の高度経済成長に果たした役割が多大であったことはいまさら述べることも無いでしょう。
3、長野県における小水力発電
私達が事業展開を行なう長野県における水力発電の可能性について考えてみます。
長野県は日本の中央に位置し海からも遠く降雨量は多くありませんが、3,000m級の山々を擁する急峻な県土により、雨を集め、落差のある沢や渓谷を経て千曲川や天竜川の様な大河として多くの水エネルギーを蓄積しています。
降雨量の少ない長野県の水力発電の賦存量が全国有数なのはこのためです。事実多くのダム式水力発電所が県内各所に存在します。
水力発電と言うと大規模なダム建設を伴う発電事業を連想しますが、現在では環境意識やダムそのものの費用対効果、管理運営の手間などの面から大型のダム建設には市民の抵抗感が大きく、また可能性のある地点はほぼ開発され尽され、新規のダム建設は事実上不可能となっています。
しかし自然の水系そのものを活かし、また農業用水のような人工の水系を利用したダムを伴わない小規模な水力発電、既存の砂防ダムを利用した小水力発電事業は自然環境に対する負荷も少なく、今後地域のエネルギー供給源として大きな期待が寄せられています。
このような小水力発電の可能性の面から長野県を検証してみると、大河に流れ込む中小河川は多く、山間地の農地に水を供給する用水網が張り巡らされています。山間の河川が多いことは土砂災害を防ぐための砂防ダムも多く整備されているとこです。まさに小水力発電の可能性を大いに秘めた県土と言えます。県も小水力発電の可能性に着目し、県庁内に係る部署を横断的に束ね、窓口を一本化し事業者への支援態勢を構築しています。
またこの組織が県内の小水力発電に可能性のある地点の調査を行い。候補地をリストアップし県内事業者の支援に役立てています。
このような行政の後ろ支えは全国的の稀有であり、事業を試みる者として非常に心強いものです。
発電事業はインフラ整備に関わる事業であり公共性の高い事業です。行政との連携は何より必要であり不可欠なものですので長野県の取り組みは非常にありがたいものであります。
私達3V小水力発電株式会社はこのような環境を背景に地域と寄り添い地域振興と安定したエネルギーの供給を目指し事業を展開しています。
鈴木 純一
NPO法人諏訪圏ものづくり推進機構のSEE研究会小水力発電部会所属
現在、3V小水力発電株式会社と茅野市内における小水力発電建設計画に参画