未電化ソーラー市場トレンドレポートより (II)

2018年8月16日
途上国未電化家庭用太陽光システムファンド

暑さもようやく峠を越した感があります (ちなみにわたしは家ではエアコンは使っていません).
暦の上では 立秋 ですね.

温暖化問題の専門家としては,今年の夏の暑さの何%が温暖化に起因するのか,気になるところです (アトリビュートという指標で定量化することができます).

実は先週まで,JICA の 途上国政府の人向けの能力開発プログラムを行っていました.パリ協定の NDC という各国目標に関するものでした.参加いただいた人たちにとって,かなり有意義なものになったと自負しています.同時に,わたしの制度提案が難しくないということも実証できました.

 
SHS EGAO の方ですが,3Dプリンタで作成したコントローラー筐体に回路を収め,テストを行う段階となってきました.基板レベルでのテストは繰り返されているのですが,それを筐体に組み込んでのテストになります.
 
 
現時点では 中身が見えるように半透明でつくっています (最終バージョンは 白系統色を考えています).下の方に青く透けて見えるのが 146 Wh のリチウムイオンバッテリーです.わたしの MacBook Pro の 約2 倍の容量です.テンキーパッドは (いまはテープで貼っただけですが) PAYGo の入力を行います.
 
サポーターの方が,現状で 485人,金額も目標額の 63% まで増えてきました.現在,セキュリテで出資を募っているプロジェクトの中では,サポーターが一番多いものとなっています.どうもありがとうございます!引き続きよろしくお願いします.遅れていた「特典」として SHS を提供する件も,来週には,ミュージックセキュリティーズの人と話をして,決めたいと思います.
 

さて,前回 ご紹介した “The 2018 Global Off-Grid Solar Market Trends Report” の続きを見てみましょう.
 
まずは,ソーラーランタンもしくはピコソーラーと呼ばれる10W以下のシステムと,それより大きな SHS (PnP=Plug-and-Play) のトレンドです.いまなお,安価なピコソーラーのシェアが大きいですが,SHSにシフトしてきているのがわかります.所得水準の比較的高い南アジアでその傾向が強く,アフリカではこれから,という感じでしょうか.
 
 

次は,単なる照明や携帯充電用のUSBだけでなく,外部需要機器(電気製品) がバンドルされたSHSが急速に増えてきたようすです.われわれも,(冷蔵庫はムリですが) その他はオプションで提供することを考えています.また 携帯電話充電もできる懐中電灯を2つ搭載しようと考えています.
 
 

下図は,現在の各国の PAYGo型SHS 主要プレーヤーです.製造業を兼ねている場合には,コンペティターですが,ディストリビューター(* で表記) の場合には,売り込み先になるわけですね.トップ5社 で,販売数の7割 程度を占めるようです.
 
 

将来の市場規模推計見通しがあったので,それもお見せいたしましょう.
 

全体が大きくなる中でも,SHSの拡大が顕著と見込まれていることが分かります.PnP SHSは,一年でほぼ2倍の割合で増える見込みとなっていて,2020年には年間 700万ユニット,2022年には 2,400万ユニットと見通されています.その理由として,以下のようなものが挙げられています:
 
  • 市場のファンダメンタルズが上昇傾向にあること (市場の大きな潜在的サイズ,所得向上傾向,ディストリビューションインフラを含め 国内でのビジネスのやりやすさ向上,ビジネスを行うライセンスなどの政策面の環境整備,技術面の進歩,拡大を希求する民間セクターの成熟).
  • 加えて,交換/アップグレード市場の拡大も,2017–22年の売上げの 60–65% に達すると見込まれています.すなわち,既存ユーザーは,ソーラー製品のメリットをよく知っているわけですね.これは EGAOにとっての追い風です.
 
  • PAYGo機能の拡大や,いろいろな需要機器が使えるようになってきたことも,需要拡大を大きく後押ししています(とくに TVと扇風機で,2022年までの SHSの 半分以上に これらそれぞれが バンドルされると見込まれています).EGAOは,種類が豊富で安価な AC機器も使えますので(従来型のDC機器オンリーのSHSに比較して) 大きなアドバンテージがあります.
 
このレポートでは,現在 オフグリッドソーラー製品カンパニーで利益が十分に出ている企業がほとんどいない (おそらく多額の投資に見合うだけの収益構造が確立できていない) ということを踏まえ,4つのポイントをベースに,4つの「勝つためのビジネスモデル」を考察しています.
 
4つのポイントとは,
  • ・ できるだけ多くの国を対象とすること
  • ・ 複数の製品を扱うこと
  • ・ 現地生産でなく中国製(パーツや製品) を安価で調達すること 
  • ・ 低コスト資本のためのファイナンスソース
で,EGAOプロジェクトは,最後の点は,小さいながら このセキュリテによる資金調達が該当するとすると,どれも当てはまっていると言えそうです.
 
4つの 勝つためのビジネスモデル は,
  • ・ The Energy Ladder Companion
  • ・ The Banker
  • ・ The Fast Follower
  • ・ The Value Chain Specialist
で,われわれのモデルは,この中の The Fast Follower がピタリときます.
 
このビジネスモデルは,先駆者や国際機関等の市場開拓や消費者教育などの努力をベースにして,それを活用するモデルとなります.低コスト生産ベースを持ち,各種投資などをできるだけ抑える形で,魅力的な製品を競争力のある価格で,フレキシブル/タイムリーに提供します.自分のディストリビューションチャンネルは持たず,マスター・ディストリビューターに製品を卸す形となります(その先はリテーラーですね).最終消費者に対する価格設定やマージン設定は,ディストリビューターやリテーラーに任せることになります.
 
われわれは,このようなレポートの分析を待たずに,望ましいビジネスモデルを考案してきたのですが,(まだ利益を得る段階に至っていませんが) その方向性の正しさが示されたようで嬉しいですね.
 
あとは,現実化 (materialization) です!
 
 
松尾 直樹
 
 
 

ファンド情報

途上国未電化家庭用太陽光システムファンド
株式会社PEARカーボンオフセット・イニシアティブ
会計期間
2019年1月1日 ~ 2021年12月31日
一口
10,500
償還率
3.98 %
参加人数
526
調達実績
17,490,000
【ご留意事項】
当社が取り扱うファンドには、所定の取扱手数料(別途金融機関へのお振込手数料が必要となる場合があります。)がかかるほか、出資金の元本が割れる等のリスクがあります。
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