ブラジル訪問報告
2017年12月29日
長岡ナカムラコーヒーロースターsファンド
ブラジル訪問報告
(滞在期間:2017.7.10~7/16)
ナカムラコーヒーロースターs
中村一輝

私たち、ナカムラコーヒーロースターs初めての産地訪問・買い付けの旅はブラジルとなりました。滞在期間は7/10~7/16の7日間で、5月~9月まで収穫期のブラジルは収穫の真っ只中でした。
ブラジル行きに直行便はなく、アメリカやヨーロッパ、中東などの第3国を経由して入国します。今回はアメリカ経由で、成田からニューヨークまで約12時間、乗り継ぎ5時間の後ニューヨークから約10時間かけてブラジル・サンパウロに到着。成田を出発してから24時間以上かけてブラジルに入国し、さらに、サンパウロから農園のあるミナス・ジェライス州まで約300キロ、車で4時間程かかります。
ブラジルではミナス・ジェライス州の産地を訪問し、買い付けを行いました。
前半に『カルモ・デ・ミナス』という産地、後半は『サントアントニオ・ド・アンパーロ』という産地の順で訪問しました。
このふたつの産地は同じミナス・ジェライス州の産地ですが、対照的なキャラクターのコーヒーが収穫される産地です。
カルモ・デ・ミナスはフルーツを思わせる華やかな酸の質が特徴的で、COEでは優勝をはじめ多数の上位入賞農園を輩出する優良産地です。(COEとはカップ・オブ・エクセレンスという生産国ごとに開催される品評会です。)
一方、サントアントニオ・ド・アンパーロはチョコレート、ナッツの風味が特徴の伝統的なブラジルコーヒーの名産地です。

(カルモコーヒーにて、カッピング前のミーティングの様子)
7/10【滞在1日目】
サンパウロに到着し、早速ミナス・ジェライス州へ向かいました。
途中、休憩の為にファストフード店に立ち寄りましたが、こちらでブラジル一杯目のコーヒーを頂きました。『カフェジーニョ』という所謂エスプレッソで、ブラジルでコーヒーといえばこれだそうです。
さらに、コーヒーのおともに『ポン・デ・ケイジョ』も美味しく頂きました。ミナス・ジェライス州発祥のチーズと芋の粉で作るモチモチのチーズパンで、ブラジル滞在中は朝食やおやつに幾度となく食卓に登場しました。
サンパウロから約4時間後、まず到着したのはミナス・ジェライス州サン・ロレンソというカルモ・デ・ミナスの隣町です。前半のカルモ・デ・ミナス滞在中はサン・ロレンソのホテルに宿泊しました。サン・ロレンソは日本でいう軽井沢の様なリゾート地です。
湧き水が有名な町で、町の中心にある公園内では成分の異なる数種類の湧き水を自由に汲んで、飲み比べをすることが出来ます。(今回は残念ながら時間が取れず、こちらの公園には行けませんでした。)
カルモ・デ・ミナス滞在中はカルモコーヒーという、自らも農園を所有しカルモ・デ・ミナスのコーヒーを輸出する輸出業者を拠点に農園訪問や買い付けの為のカッピング(コーヒーのテイスティング)を行いました。
美味しい食事も毎日ご馳走になり、夕食はカルモコーヒー代表のルイス・パウロさんのご自宅で毎晩シュハスコを堪能させて頂きました。シュハスコとはブラジル風のバーベキューです。一番人気の部位はピッカーニャという牛のお尻のお肉(日本でいうイチボ)で、味付けは岩塩とコショウのみですが肉の味が非常に濃くとても美味しく頂きました。
1日目はホテルにチェックイン後、夕食を頂き終了です。
7/11【滞在2日目】
この日はカルモコーヒーのオフィスで買い付けの為のカッピングを行いました。
昼過ぎまで行い、全部で50のサンプルをカッピングしましたが、どのサンプルも豊かなフレーバー、そして多様なフレーバーを感じる素晴らしいコーヒーでした。どのコーヒーを買い付けたいかと聞かれても困るほどですが、明日もまた50のサンプルをカッピングします。
非常にハードな時間が続きます。

(イルマス・ぺレイラ農園)
カッピング後、夕方からは当店でも販売したことのあるイルマス・ぺレイラ農園を訪問しました。こちらの農園はカルモコーヒー代表のルイス・パウロさんのお母様マリアさんが営む農園です。
収穫されたチェリーはサイズごと、熟度ごとに細かく選別され、畑では多数の品種が実験的に栽培されていました。馬の飼育も行われる広大な畑と繊細な生産処理のコントラストが印象的でした。

(イルマス・ぺレイラ農園)
7/12【滞在3日目】
この日は終日カッピングで50以上のサンプルをカッピングしました。
2日間で100以上のカルモ・デ・ミナス産のサンプルをカッピングしましたが、フレーバーの豊かさと多様性、柔らかく滑らかな質感、包み込むような甘さ、そしてバランスの良さをサンプル全体を通して感じました。また、エスプレッソを抽出した際のポテンシャルにも期待が膨らみました。

(カルモコーヒーにて、カッピング中の様子)
7/13【滞在4日目】
この日は昼過ぎまでカルモ・デ・ミナス地域の農園を訪問し、夕方からは次の産地サントアントニオ・ド・アンパーロへ移動となります。

(アルタ・ビスタ農園にて、オーナーのホブソンさんと)
まずはクリスチーナという村にある、ホブソンさんが営むアルタ・ビスタ農園です。ホブソンさんはとても真面目で謙虚なお人柄のオーナーだそうです。こちらの農園は標高1,000~1,290mにありますが標高以上に寒くなるエリアで、冷た過ぎる風がコーヒーの木に当たることを防ぐ為に、風よけにバナナの木が植えられていました。

(IP農園にて、ルイス・パウロさんとそのお父様)
続いて、IP農園(イシードロ・ぺレイラ)を訪問しました。
こちらの農園はカルモコーヒー代表のルイス・パウロさんの祖父イシードロ・ぺレイラさんが1967年に設立した農園です。現在のオーナーはルイス・パウロさんのお父様です。
ふたつの農園を訪問した後、カルモコーヒーのオフィスへ戻り買い付けの話となりました。
ナカムラコーヒーロースターsは100サンプルの中から、私と妻どちらも高いスコアを付けたサンプルをブラインド(銘柄名を伏せて)で選び出し、買い付けることになりました。以下、買い付けることが出来た銘柄です。
■シャパーダ
■セニョール・ニキーニョ
■アルタ・ビスタ
■イルマス・ぺレイラ
■IP
偶然にも訪問した農園のコーヒーが全て選ばれ、さらにセニョール・ニキーニョはカルモ・デ・ミナス滞在中に大変お世話になったルイス・パウロさんが所有する農園です。
導かれるように買い付けた5銘柄となり胸が熱くなったことを今でも鮮明に覚えています。
さて、買い付けの興奮冷めやらぬまま、夕方から次なる産地サントアントニオ・ド・アンパーロへ移動です。カルモ・デ・ミナスからは車で3時間程の距離です。
サントアントニオ・ド・アンパーロではサマンバイア農園のオーナー、カンブライアさんのゲストハウスでお世話になりました。
ゲストハウスに到着すると美味しい夕食とサトウキビの蒸留酒カサーシャと、カイピリーニャというカサーシャとライムでつくるカクテルを頂きこの日は終了となりました。
7/14【滞在5日目】
午前中はサンコーヒーというサントアントニオ・ド・アンパーロのコーヒーを輸出する輸出業者でカッピングです。
今回は時期的にまだ買い付け用のカッピングサンプルが用意できていなかった為、今年のロットのタイプサンプルをカッピングさせて頂き、今年の出来をチェックさせて頂きました。
穏やかな酸の質とチョコレート、ナッツ系の甘いフレーバーはカルモ・デ・ミナスのコーヒーとはまた違った良さがあり、毎日飲みたいと思う美味しいコーヒーでした。

(サンコーヒーにて、カッピング中の様子)

(パティオで乾燥中のコーヒーチェリー)
午後は2016年ブラジル・ナチュラルCOEで1位を獲得したグアリロバ農園の訪問です。
(COEとはカップ・オブ・エクセレンスという生産国ごとに開催される品評会です。)
こちらの農園はナチュラルのコーヒーのみを生産しており、パルプトナチュラルのコーヒーは生産していません。完璧な完熟豆のみを手摘みで収穫し、パティオに薄く広げて乾燥させるラド・ア・ラド(side by side)式を採用しています。コストは一番かかる方法ですが、パティオに並べられた完璧な完熟チェリーはとても綺麗で黒い艶を帯びていました。
こちらの農園では4月末から収穫が始まっているそうですが、収穫時期をずらして収穫効率を上げるために様々な品種を植えていました。(一斉に収穫のタイミングを迎えても収穫しきれない為。)
また、灌漑システムが整備されており、土の下にチューブを通して水と肥料を流していました。その為、葉は艶々でとても健康に育っていることが良くわかりました。
さらに、昔はコーヒーの木は、古い方が良いと言われていたそうですが、今は病害虫に対抗する為には木は新しい方が良いと言われ定期的に剪定を行い、あまりに古くなった木は抜いているそうです。
【滞在6日目】7.15
この日はカンポアレグレ農園を訪問し、機械収穫の様子を見ることが出来ました。
畑の中へ収穫機を走らせながら木を揺すってチェリーを落とし収穫していきますが、機械を走らせるスピード・木を揺する強さを調整する事で、熟したチェリーを落とし、まだ熟していないチェリーを落とさずに収穫作業を行っていました。

(収穫機)
この日はサビ病というコーヒーの木の病気も話題に上がりました。
サビ病はカビ菌の一種が原因で湿気を好み、ここ数年の気候変動、特に雨量の増加によって被害は深刻になっています。サビ病に罹ると葉が落ちて光合成できなくなり、木は死んでしまう為、サビ病で枯れた木は根から全て抜いてしまうそうです。
【滞在7日目】7.16
最終日です。
この日は朝食後、カンポアレグレ農園へ行き苗床の様子を見せて頂きました。
こちらでも様々な品種が実験的に栽培されていました。
その後、昼前にはサントアントニオ・ド・アンパーロを出発し日本へ帰国の途に就きました。

(サマンバイア農園にてチェリーを味見、完熟したチェリーからはキャラメルのような甘さを感じます。)
【ブラジルの技術革新】~ボリュームから品質の時代へ~

(カンポアレグレ農園)
ブラジルには40万のコーヒー農園があり、そのうち90%が20ヘクタール以下の小規模農園と言われています。しかし、この農園の規模はあくまでブラジルの基準であり、中米では1ヘクタール以下で小規模農家と言われています。ブラジルコーヒー農園のスケールの大きさが分かる数字ではないでしょうか。
ちなみに、ブラジルでは40ヘクタール以上で中規模農園と言われるそうです。
そして、ブラジルでのコーヒー栽培のほとんどは平坦地や丘陵地帯で行われている為、機械で大量に収穫することが可能です。しかし、機械での大量収穫は様々な品質のコーヒーが混ざった状態で収穫され、良い豆、良くない豆、普通の豆が混ざった状態で流通していました。
このため、ブラジルコーヒーは中庸で平板な味わいのコーヒーとして扱われてきました。
しかし、品質を追求し始めた生産者の様々な技術革新により高品質なロットが生み出されるようになりました。
私たちが訪問した農園では、手摘みで完熟チェリーのみを収穫することはもちろんですが、機械収穫の場合でも収穫後に何度も選別することでグレーディングを行い高品質ロットがつくられていました。
具体的には、
■チェリーのサイズで選別
■水に浮かべて比重で選別(未熟は水に浮き、完熟は沈む)
■グリーンセパレーターで選別(完熟は軽いプレッシャーで果肉が剥け、未熟は剥けない)
■その後、さらに目視で選別
このようにして広大な畑で収穫されたブラジルコーヒーは、生産者の様々な試みと努力による繊細なプロセスを経ることで、ボリュームから品質の時代へと向かい、私たちは美味しいブラジルコーヒーを楽しむことが出来るようになったのです。
【帰国して】
コーヒーの仕事に従事する中で始点である生産地を訪問し、生産者の方々と関係性が築けたことに私たちは心から感動しました。
また、終点であるお客様と私たちは普段接していますが、今までは点と線として感じていた、生産者、バイヤー、エクスポーター、ロースター、バリスタ...そして、お客様との繋がりがブラジル帰国後にはこれらが環として繋がり、そして循環し始めたことを今実感しています。
そして、これからも作り手と飲み手を繋げる存在としてあり続けるべく、日々コーヒーに向き合っていきたいと考えているところです。

(グアリロバ農園にて、オーナーとそのご家族の皆様)
以上、ブラジル訪問の報告となります。
(滞在期間:2017.7.10~7/16)
ナカムラコーヒーロースターs
中村一輝
私たち、ナカムラコーヒーロースターs初めての産地訪問・買い付けの旅はブラジルとなりました。滞在期間は7/10~7/16の7日間で、5月~9月まで収穫期のブラジルは収穫の真っ只中でした。
ブラジル行きに直行便はなく、アメリカやヨーロッパ、中東などの第3国を経由して入国します。今回はアメリカ経由で、成田からニューヨークまで約12時間、乗り継ぎ5時間の後ニューヨークから約10時間かけてブラジル・サンパウロに到着。成田を出発してから24時間以上かけてブラジルに入国し、さらに、サンパウロから農園のあるミナス・ジェライス州まで約300キロ、車で4時間程かかります。
ブラジルではミナス・ジェライス州の産地を訪問し、買い付けを行いました。
前半に『カルモ・デ・ミナス』という産地、後半は『サントアントニオ・ド・アンパーロ』という産地の順で訪問しました。
このふたつの産地は同じミナス・ジェライス州の産地ですが、対照的なキャラクターのコーヒーが収穫される産地です。
カルモ・デ・ミナスはフルーツを思わせる華やかな酸の質が特徴的で、COEでは優勝をはじめ多数の上位入賞農園を輩出する優良産地です。(COEとはカップ・オブ・エクセレンスという生産国ごとに開催される品評会です。)
一方、サントアントニオ・ド・アンパーロはチョコレート、ナッツの風味が特徴の伝統的なブラジルコーヒーの名産地です。
(カルモコーヒーにて、カッピング前のミーティングの様子)
7/10【滞在1日目】
サンパウロに到着し、早速ミナス・ジェライス州へ向かいました。
途中、休憩の為にファストフード店に立ち寄りましたが、こちらでブラジル一杯目のコーヒーを頂きました。『カフェジーニョ』という所謂エスプレッソで、ブラジルでコーヒーといえばこれだそうです。
さらに、コーヒーのおともに『ポン・デ・ケイジョ』も美味しく頂きました。ミナス・ジェライス州発祥のチーズと芋の粉で作るモチモチのチーズパンで、ブラジル滞在中は朝食やおやつに幾度となく食卓に登場しました。
サンパウロから約4時間後、まず到着したのはミナス・ジェライス州サン・ロレンソというカルモ・デ・ミナスの隣町です。前半のカルモ・デ・ミナス滞在中はサン・ロレンソのホテルに宿泊しました。サン・ロレンソは日本でいう軽井沢の様なリゾート地です。
湧き水が有名な町で、町の中心にある公園内では成分の異なる数種類の湧き水を自由に汲んで、飲み比べをすることが出来ます。(今回は残念ながら時間が取れず、こちらの公園には行けませんでした。)
カルモ・デ・ミナス滞在中はカルモコーヒーという、自らも農園を所有しカルモ・デ・ミナスのコーヒーを輸出する輸出業者を拠点に農園訪問や買い付けの為のカッピング(コーヒーのテイスティング)を行いました。
美味しい食事も毎日ご馳走になり、夕食はカルモコーヒー代表のルイス・パウロさんのご自宅で毎晩シュハスコを堪能させて頂きました。シュハスコとはブラジル風のバーベキューです。一番人気の部位はピッカーニャという牛のお尻のお肉(日本でいうイチボ)で、味付けは岩塩とコショウのみですが肉の味が非常に濃くとても美味しく頂きました。
1日目はホテルにチェックイン後、夕食を頂き終了です。
7/11【滞在2日目】
この日はカルモコーヒーのオフィスで買い付けの為のカッピングを行いました。
昼過ぎまで行い、全部で50のサンプルをカッピングしましたが、どのサンプルも豊かなフレーバー、そして多様なフレーバーを感じる素晴らしいコーヒーでした。どのコーヒーを買い付けたいかと聞かれても困るほどですが、明日もまた50のサンプルをカッピングします。
非常にハードな時間が続きます。
(イルマス・ぺレイラ農園)
カッピング後、夕方からは当店でも販売したことのあるイルマス・ぺレイラ農園を訪問しました。こちらの農園はカルモコーヒー代表のルイス・パウロさんのお母様マリアさんが営む農園です。
収穫されたチェリーはサイズごと、熟度ごとに細かく選別され、畑では多数の品種が実験的に栽培されていました。馬の飼育も行われる広大な畑と繊細な生産処理のコントラストが印象的でした。
(イルマス・ぺレイラ農園)
7/12【滞在3日目】
この日は終日カッピングで50以上のサンプルをカッピングしました。
2日間で100以上のカルモ・デ・ミナス産のサンプルをカッピングしましたが、フレーバーの豊かさと多様性、柔らかく滑らかな質感、包み込むような甘さ、そしてバランスの良さをサンプル全体を通して感じました。また、エスプレッソを抽出した際のポテンシャルにも期待が膨らみました。
(カルモコーヒーにて、カッピング中の様子)
7/13【滞在4日目】
この日は昼過ぎまでカルモ・デ・ミナス地域の農園を訪問し、夕方からは次の産地サントアントニオ・ド・アンパーロへ移動となります。
(アルタ・ビスタ農園にて、オーナーのホブソンさんと)
まずはクリスチーナという村にある、ホブソンさんが営むアルタ・ビスタ農園です。ホブソンさんはとても真面目で謙虚なお人柄のオーナーだそうです。こちらの農園は標高1,000~1,290mにありますが標高以上に寒くなるエリアで、冷た過ぎる風がコーヒーの木に当たることを防ぐ為に、風よけにバナナの木が植えられていました。

(IP農園にて、ルイス・パウロさんとそのお父様)
続いて、IP農園(イシードロ・ぺレイラ)を訪問しました。
こちらの農園はカルモコーヒー代表のルイス・パウロさんの祖父イシードロ・ぺレイラさんが1967年に設立した農園です。現在のオーナーはルイス・パウロさんのお父様です。
ふたつの農園を訪問した後、カルモコーヒーのオフィスへ戻り買い付けの話となりました。
ナカムラコーヒーロースターsは100サンプルの中から、私と妻どちらも高いスコアを付けたサンプルをブラインド(銘柄名を伏せて)で選び出し、買い付けることになりました。以下、買い付けることが出来た銘柄です。
■シャパーダ
■セニョール・ニキーニョ
■アルタ・ビスタ
■イルマス・ぺレイラ
■IP
偶然にも訪問した農園のコーヒーが全て選ばれ、さらにセニョール・ニキーニョはカルモ・デ・ミナス滞在中に大変お世話になったルイス・パウロさんが所有する農園です。
導かれるように買い付けた5銘柄となり胸が熱くなったことを今でも鮮明に覚えています。
さて、買い付けの興奮冷めやらぬまま、夕方から次なる産地サントアントニオ・ド・アンパーロへ移動です。カルモ・デ・ミナスからは車で3時間程の距離です。
サントアントニオ・ド・アンパーロではサマンバイア農園のオーナー、カンブライアさんのゲストハウスでお世話になりました。
ゲストハウスに到着すると美味しい夕食とサトウキビの蒸留酒カサーシャと、カイピリーニャというカサーシャとライムでつくるカクテルを頂きこの日は終了となりました。
7/14【滞在5日目】
午前中はサンコーヒーというサントアントニオ・ド・アンパーロのコーヒーを輸出する輸出業者でカッピングです。
今回は時期的にまだ買い付け用のカッピングサンプルが用意できていなかった為、今年のロットのタイプサンプルをカッピングさせて頂き、今年の出来をチェックさせて頂きました。
穏やかな酸の質とチョコレート、ナッツ系の甘いフレーバーはカルモ・デ・ミナスのコーヒーとはまた違った良さがあり、毎日飲みたいと思う美味しいコーヒーでした。
(サンコーヒーにて、カッピング中の様子)
(パティオで乾燥中のコーヒーチェリー)
午後は2016年ブラジル・ナチュラルCOEで1位を獲得したグアリロバ農園の訪問です。
(COEとはカップ・オブ・エクセレンスという生産国ごとに開催される品評会です。)
こちらの農園はナチュラルのコーヒーのみを生産しており、パルプトナチュラルのコーヒーは生産していません。完璧な完熟豆のみを手摘みで収穫し、パティオに薄く広げて乾燥させるラド・ア・ラド(side by side)式を採用しています。コストは一番かかる方法ですが、パティオに並べられた完璧な完熟チェリーはとても綺麗で黒い艶を帯びていました。
こちらの農園では4月末から収穫が始まっているそうですが、収穫時期をずらして収穫効率を上げるために様々な品種を植えていました。(一斉に収穫のタイミングを迎えても収穫しきれない為。)
また、灌漑システムが整備されており、土の下にチューブを通して水と肥料を流していました。その為、葉は艶々でとても健康に育っていることが良くわかりました。
さらに、昔はコーヒーの木は、古い方が良いと言われていたそうですが、今は病害虫に対抗する為には木は新しい方が良いと言われ定期的に剪定を行い、あまりに古くなった木は抜いているそうです。
【滞在6日目】7.15
この日はカンポアレグレ農園を訪問し、機械収穫の様子を見ることが出来ました。
畑の中へ収穫機を走らせながら木を揺すってチェリーを落とし収穫していきますが、機械を走らせるスピード・木を揺する強さを調整する事で、熟したチェリーを落とし、まだ熟していないチェリーを落とさずに収穫作業を行っていました。
(収穫機)
この日はサビ病というコーヒーの木の病気も話題に上がりました。
サビ病はカビ菌の一種が原因で湿気を好み、ここ数年の気候変動、特に雨量の増加によって被害は深刻になっています。サビ病に罹ると葉が落ちて光合成できなくなり、木は死んでしまう為、サビ病で枯れた木は根から全て抜いてしまうそうです。
【滞在7日目】7.16
最終日です。
この日は朝食後、カンポアレグレ農園へ行き苗床の様子を見せて頂きました。
こちらでも様々な品種が実験的に栽培されていました。
その後、昼前にはサントアントニオ・ド・アンパーロを出発し日本へ帰国の途に就きました。
(サマンバイア農園にてチェリーを味見、完熟したチェリーからはキャラメルのような甘さを感じます。)
【ブラジルの技術革新】~ボリュームから品質の時代へ~
(カンポアレグレ農園)
ブラジルには40万のコーヒー農園があり、そのうち90%が20ヘクタール以下の小規模農園と言われています。しかし、この農園の規模はあくまでブラジルの基準であり、中米では1ヘクタール以下で小規模農家と言われています。ブラジルコーヒー農園のスケールの大きさが分かる数字ではないでしょうか。
ちなみに、ブラジルでは40ヘクタール以上で中規模農園と言われるそうです。
そして、ブラジルでのコーヒー栽培のほとんどは平坦地や丘陵地帯で行われている為、機械で大量に収穫することが可能です。しかし、機械での大量収穫は様々な品質のコーヒーが混ざった状態で収穫され、良い豆、良くない豆、普通の豆が混ざった状態で流通していました。
このため、ブラジルコーヒーは中庸で平板な味わいのコーヒーとして扱われてきました。
しかし、品質を追求し始めた生産者の様々な技術革新により高品質なロットが生み出されるようになりました。
私たちが訪問した農園では、手摘みで完熟チェリーのみを収穫することはもちろんですが、機械収穫の場合でも収穫後に何度も選別することでグレーディングを行い高品質ロットがつくられていました。
具体的には、
■チェリーのサイズで選別
■水に浮かべて比重で選別(未熟は水に浮き、完熟は沈む)
■グリーンセパレーターで選別(完熟は軽いプレッシャーで果肉が剥け、未熟は剥けない)
■その後、さらに目視で選別
このようにして広大な畑で収穫されたブラジルコーヒーは、生産者の様々な試みと努力による繊細なプロセスを経ることで、ボリュームから品質の時代へと向かい、私たちは美味しいブラジルコーヒーを楽しむことが出来るようになったのです。
【帰国して】
コーヒーの仕事に従事する中で始点である生産地を訪問し、生産者の方々と関係性が築けたことに私たちは心から感動しました。
また、終点であるお客様と私たちは普段接していますが、今までは点と線として感じていた、生産者、バイヤー、エクスポーター、ロースター、バリスタ...そして、お客様との繋がりがブラジル帰国後にはこれらが環として繋がり、そして循環し始めたことを今実感しています。
そして、これからも作り手と飲み手を繋げる存在としてあり続けるべく、日々コーヒーに向き合っていきたいと考えているところです。
(グアリロバ農園にて、オーナーとそのご家族の皆様)
以上、ブラジル訪問の報告となります。