ケニアと日本の繋がり
国交のはじまり
日本とケニアの国交が樹立したのは1963年、ケニアがイギリスから独立した年でした。翌年には在ケニア日本大使館が開設され、1966年には青年海外協力隊の第一期生がナイロビで活動を始め、日本政府からのケニア向けの最初の政府開発援助(ODA)による円借款(有償資金協力)も行われました。
ケニアにとって日本は重要な援助供給国
ケニアへの援助は円借款・無償資金協力・技術協力を合わせて2020年時点で累計約7,682億円に上ります。ケニアにとって日本は主要な開発パートナーであり、日本からの援助はインフラや農業・教育分野の発展に役立てられてきました。
主要港であるモンバサ港や、天然資源の少ないケニアで重視されている地熱発電のオルカリア発電所の建設にも日本からの円借款が供与されています。(参考記事「ケニアの経済」)
TICAD(アフリカ開発会議)
日本政府の主導の元、アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development, TICAD)という国際会議を、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行およびアフリカ連合委員会(AUC)と協働で定期的に開催しています。TICADでは、開発に携わる国際機関だけではなく、民間企業や市民社会の参加も掲げ、アフリカのオーナーシップの尊重と国際的なパートナーシップの推進を基本理念に掲げながら、アフリカの開発につながる議論を行っています。
1993年の第1回からは5年毎に日本で開催されていましたが、2016年8月に開催された第6回は初めてアフリカ(ケニアの首都ナイロビ)で開催されました。採択された「ナイロビ宣言」は、この初のアフリカ開催をTICADにおけるアフリカのオーナーシップの現れであるとして評価しています。
この第6回では、国際一次産品価格の下落、エボラ出血熱の流行、暴力的過激主義の頻発を最重要課題とし、①経済多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進、②質の高い生活のための強靱な保健システム促進、③繁栄の共有のための社会安定化の促進を取り組むべき優先分野の3つの柱とする「ナイロビ実施計画」を進めることが決まりました。
また、政府として民間企業の対アフリカ進出を後押しするため,投資協定及び租税協定交渉を推進する旨が述べられ、アフリカ首脳及びアフリカ経済界代表からも,日本企業の取組に対する評価と更なる投資促進を期待する声も上がりました。
今年2022年8月に行われたTICADVIIIで岸田総理は、次の領域について今後3年間で官民総額300億米ドル規模の資金を投入するとの発言をしました。すなわち、①グリーン分野への投資、②日本・アフリカ双方のスタートアップへの投資促進、③アフリカ開発銀行との協調融資など開発分野での金融実施、④感染症対策としての資金拠出、⑤保健医療・教育・農業・司法行政等の分野での人材育成、⑥地域安定化への体制強化、⑦食糧安全保障です。
ビジネスパートナーを目指して
TICADでも触れられているように、ビジネス面での繋がりも構築されてきています。2020年の日本からケニア向けの輸出額は768億円、一方ケニアからの輸入額は72.8億円でした。日本からの輸出品目は50%以上を自動車が占め、鉄鋼や機械などの工業製品が続きます。ケニアからの輸入品目は切り花や紅茶、コーヒーなどの農産物が主です。ODAに比べると、貿易の規模はまだ小さいのが現状です。
2022年5月3日、ケニアの首都ナイロビにて、第2回日アフリカ官民経済フォーラム(JafEF: Japan Africa Public-Private Economic Forum)の全体会合が開かれました。日アフリカ官民経済フォーラムは、経済産業省、日本貿易振興機構(JETRO)とアフリカ側の開催国が共同で開催するもので、日本とアフリカの民間企業の協力とアフリカにおける日本企業のビジネス活動の促進を目的として、日アフリカ双方の官民ハイレベルが参加して行われるフォーラムです。前述した第6回TICADにて立ち上げが宣言されました。
このフォーラムには、日本および15か国のアフリカ諸国より約250名の政府・企業関係者が参加しました。日本の経済産業省は、①イノベーションを通じた社会課題解決・ビジネス拡大、②アフリカ産業化の促進―産業人材育成・ビジネス環境整備、③未電化地域へのグリーンエネルギー等の導入及びインフラデジタル化推進、④民間投資を支援するファイナンス協力強化、に取り組んでいくと表明しました。
今後のパートナーシップの強化
アフリカは紛争や貧困、飢餓、気候変動など多くの問題に直面する他、新型コロナウイルスの流行やウクライナ紛争によるインフレなどの影響を受け、以前として脆弱であることは否定できません。また、日本からアフリカへの政府開発援助 (ODA) も海外直接投資 (FDI) も減少しており、アフリカにとっての最大の貿易国である中国の影響力が大きいことも事実でしょう。
そのような中、日本としては、TICADや日アフリカ官民経済フォーラムといった枠組みを通じて、政府開発援助やNGOによる草の根支援だけでなく、日本政府や民間企業がアフリカ諸国とのビジネスを通じたパートナーシップも深め、今後ケニアとの関わりも多角的に発展していくことが期待されます。