えこふぁーむニュース 社長コラム
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社長コラム2009年11月19日 21:56
キューバ視察報告 Chapter11
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メキシコシティのバスの車窓からの光景です。
信号待ちになるとパンとか水とか雑貨とかいろんな物売りの人が車の間を縫って歩きます。
トロリーバスも走っていました。
排気ガスはそれ程、気になりませんでした。
大気汚染に関しては、そんなに深刻さは感じませんでした。
同 意 見⇒ http://www.y-asakawa.com/mekishiko-gazo/mexico_city.htm
一般的見解⇒ http://www.clean-kids.net/warming/03sekaikakuchi.html
ただ、のんびりとした印象はなく気ぜわしく感じました。
地下鉄もあって大きな街です。
メキシコシティの地下鉄網⇒ http://www.jametro.or.jp/sekai/02cont/15mexicocity.html
メキシコの警察官の制服がかっこ良かったです。
デザインもですが、黒色がほんとうの真っ黒で引き締まって見えます。
新型インフルエンザ発生前のメキシコシティの様子です。とにかく人が一杯でした。
サボテンとヘビと鷲はメキシコのシンボルだそうです。
帰国前の最後の夜に、食事を済ませてほろ酔い気分のまま、同行した知人と2人で街中の散歩に出掛けました。
時間にして1時間程度の外出だったと思いますが、迷子になって帰り道が分からず困っていると、
丁度巡回中の警察官に道を聞いて無事に帰ることが出来ました。
特に怖い目にも遭いませんでしたし、治安は良かったと思います。
(運が良かっただけなのかもしれません・・・)
宿泊したホテルは「ホテル カリンダ・ヘネベ」で、ロビーには古い電話機のコレクションが沢山陳列されていました。
大統領府とその中庭、大聖堂です。
とにかく誇らしげに国旗が大きい。
日本ではあんなに大きな国旗はサッカーの試合の時位じゃないとお目にかかれません・・・。
信号待ちで窓拭きをする子供達。
排気ガスで霞んでいるのではなく、バスの窓越しに写真を撮っているのでこのような映りになっています。誤解無きよう。
バスルームのティッシュとトイレットペーパー。
この折り方は、波型の部分が独立して折られていて、受け側に乗っかっていました。
ですから、ワンピースではなくツーピースです。
バスタオルで白鳥の形を作ったり、色々、もてなしの心とか遊び心を学んだような気がします
メキシコシティ空港へ降りるときに、モニター画面の高度計を見ていて3000mの表示があったので、
もう暫くだと思ったらいきなり強い衝撃が!! アッという間に着陸でした。
それもそのはず、空港自体が標高2000mを超える高地にあるのです。
帰国後一週間経って、新型インフルエンザ騒動が湧き起こり一瞬冷や汗をかきましたが、熱も出ずに事なきを得ました。
ニュースの中で、テオティワカン遺跡の立ち入り制限も伝えられていたので、お気の毒でした。
こちらはネット上で見つけたキューバの写真集です。
⇒ http://littlemore.bccks.jp/viewer/20382/1/A/VIEW#
実際にキューバに住まわれている方のレポートもありました。
⇒ http://www.geocities.jp/quebolachibichana/dificultad.html
さらにキューバ詳細情報・・・急場しのぎ
⇒ http://pub.ne.jp/cubaorganic/
⇒ http://www.t.hosei.ac.jp/~otadashi/travel_cuba2003.html
⇒ http://cuba2008.cocolog-nifty.com/blog/
~ お し ま い ~
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社長コラム2009年11月19日 20:09
キューバ視察報告 Chapter6
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前置きが長くなりました。
いよいよ主目的の「アラマール有機農園」を訪問しました。
組合組織で、案内して下さった男性は代表理事ということでした。
『キューバ有機農業ブログ』
『キューバ紀行』
ハバナ市のはずれに有機農園がありました。
日本のような畝(うね)たてはしないで、木枠で囲んだところに苗を植えていました。
スウェーデン製のスプリンクラーが完備されていました。 霧状(ミスト状)の細かい噴霧をしていて、水分補給と温度を下げる役割を果たしていました。
端っこにマリーゴールドやトウモロコシを植えていましたが、虫除けあるいは、逆に虫を一手に引き付けて本体の被害を防ぐような配慮がされていました。ほんとレンガを崩したような赤い土でした。
日差しが強いのでネットを張っていました。
昔の人が偉かったのは、農作業を通じて植物や小動物の在り方をみて感じて、哲学的な人生観を知らず知らずに形成していったからかも知れませんネ。
可愛いTシャツを着ている方が農園のミゲル・サルシネ・ロペス代表です
黒板に書いてある数字が賃金で、右から勤続1年目の人から5年目の人の賃金が段階的にオープンになっています。
共産国なので、働く人も働かない人も平等の悪平等かと想像していましたが、公平な制度だと思いました。
この代表の方は、目元が先代の林家三平師匠に似ていました。 「皆さんがあと一週間早く到着していたら、私はあなた方のお相手はするつもりはありませんでした!!」と、キッパリと言われたので何のことかと思いきや、野球のWBCでキューバが日本に負けたことを揶揄されているところでした。
今は亡き、林家三平師匠を知らない人のために・・・。 ⇒ こちら
写真で見るように、単一作物(モノカルチャー)で畑一面大量に栽培するようなことはしていません。
各作物の特性や相互作用を考慮して、隣同士の配列を工夫しているように見えます。
マリーゴールドは線虫除けだと思われますが、トウモロコシは風除けなのか虫除けなのか、はたまた害虫を誘引して我が身を自己犠牲で虫に食わせて主要作物を守るのか、興味は尽きません。
詳しい説明を聞く機会を逃してしまいました。もう一度、行ってみたいです。
果樹の苗木も育成していました。トロピカルフルーツも農園内で実がなっていました。
ピンボケ写真だったので載せませんでしたが、可愛い「ハチドリ」の姿も果樹園で見る事ができました♪
農園内でミミズを養殖していました。 土作りと落ち葉や生ゴミの処理を兼ねているそうです。ブロックで囲んでいたのは土竜(モグラ)除けだったのかもしれません・・・。 とにかく、ミミズはうじゃうじゃ居ました。ミミズはまさしく生きた「造粒機」ですネ。
世の中に不要な生き物はいないと信じています。 シロアリも腸内細菌が水素を作り出したり、木質系のリグニンやセルロースを分解したり・・・。 寄生虫も宿主の免疫を高める物質を分泌したり・・・。 ゴキブリだって人類や地球を救う何かを持っているかもしれません・・・。
ミミズは漢字で「地竜(または地龍)」と書くそうです。 調べてみると日本だけで300種類いるとか・・・。
ご参考⇒ http://www.supplerank.com/tv/09.html
結構役に立っているのですネ。 我々もミミズに負けないようにしなくては♪
ゴキブリの薬効についても調べてみました・・・。
こちら⇒ http://www.jinseido.co.jp/kanpo/manpo/971019.html
番外で「昆虫食」のお話・・・
すごい写真が載っています⇒ http://musikui.exblog.jp/m2006-12-01/
http://musikui.exblog.jp/i0/
ゴキブリにも負けないようにしなくては♪
他の人の訪問紀です⇒ http://homepage1.nifty.com/oj-hiroba/200607/200607_7.htm
ノーベル賞作家、ヘミングウェイの自宅を訪問しました。自宅玄関と妻&子供達が寝泊りする別邸、邸宅の庭です。
入場する際に、カメラの持ち込み料約500円を払いました。
家の中も庭も綺麗に管理されていました。
端の方では家庭菜園も作られていました。
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社長コラム2009年11月19日 18:11
キューバ視察報告 Chapter1
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平成21年 4月9日(木)~18日(土)まで、医療費・教育費は無料という国土面積が日本の三分の一の社会主義国、キューバへ視察に行ってきました。あと一週間帰国が遅れると新インフルエンザ騒動真っ只中でした・・・。
東西冷戦の終結によって、旧ソ連からの物資が途絶えた、島国キューバはこの20年間で急速に食料自給率を上げました。日本もおおいに学ぶべき点があると思います。
成田からJAL便でカナダのバンクーバー経由でメキシコシティーまで15時間。 メキシコで一泊して、キューバの首都ハバナまで二時間半のフライトでした。 時差は日本時間-13時間。
成田空港での為替レートは2万円が145ユーロでした。
・キューバの面積は日本の約3分の1、人口は10分の1です。
・ハバナには220万人が住んでいます。
・公用語はスペイン語。
・1兌換ペソ≒100円です。国家元首はカストロ氏。
写真は、メキシコで泊った「フィエスタ イン エアポートホテル」の中庭風景です。
ハバナでの第一夜、「トロピカーナ」でのショータイムです。 アメリカと友好状態にあった頃の置き土産です。 ラスベガスばりのショーが2時間ほど続きました。 舞台は野外ステージで多分1000人位収容できる広さでした。 雨の日はどうするんでしょうか・・・。
今では、観光立国として外貨獲得のドル箱なのかもしれません。 格式のあるお店なのか、短パンやサンダル履きでは入場できません。 踊り子さんたちも国家公務員のようです。
ショーの料金に含まれているのでしょうけれど、写真のラム酒「ハバナクラブ」とプラスチックケース入りの葉巻とバラの花がサービスで提供されます。
今回は、知り合いとその家族総勢7人グループでの贅沢な視察旅行でした。
三進交易株式会社 というところにお世話になりましたが、事前に在日キューバ大使館へ視察先の交渉をして頂いたり、親切な対応でした。 何よりも現地ガイドさんの人柄が良くて快適な旅行でした。
演奏は生バンド(オーケストラ)です。ラテンミュージックと一括(くく)りにしていいのか悪いのか、激しい民族音楽系の曲からしっとりとしたバラード系のものまで、賑やかでした。
「サルサ」というのは、「ソース」というのが語源で色んなものが混ざっているという意味だそうです。
色彩鮮やかな衣装とダンス、ノリの良い音楽と美味しいラム酒で、完全に舞い上がってしまい、不覚にも酔いつぶれてしまいました。
トロピカーナの動画がありました♪ (音声にご注意を)
こちら⇒ http://www.youtube.com/watch?v=Vl0JQmICy5k&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=RvxRVO3_6Y8&feature=related
二日酔いの早朝、ハバナを後に「カリブの真珠」といわれるビーチリゾート「バラデロ」へ移動しました。
このホテルは宿泊料金に含まれているのでしょうけれど、何を食べても飲んでもお金が掛かりませんし、サインも要りませんでした。 そのかわり、白い腕輪をはめられます。 「オールインクルーシブ」システムと言うそうです。初耳でした。
写真は宿泊した「メリア・バラデロホテル」と目の前に広がるカリブ海です。 この世の楽園といった感じでしたァ~♪
バラデロの動画がありました♪
こちら⇒ http://www.youtube.com/watch?v=CVvZCNcBy_Y&feature=related
ホテル メリア・バラデロ⇒ http://www.cubahotelreservation.com/jp/hotel.asp?hotel_code=SCTSMVaradero
途中、ヘミングウェイゆかりの漁村「コヒマル」へ立ち寄りました。
昼食は、ヘミングウェイゆかりの漁村コヒマルの「ラ・テラサ」に立ち寄りました。名作『老人と海』の舞台になった漁村です。
写真は、ヘミングウェイお気に入りのお店の外観と中に飾ってあった絵、そしてキューバ滞在中にお世話になったビールです。 ビールは「海賊」という銘柄だそうです。
写真は、スープとメインディッシュとデザートです。
お米が主食なので、我々日本人は違和感無く食べることが出来ました。
味付けも辛くなく美味しかったです。
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社長コラム2009年11月19日 16:46
「散水電車」を夏の風物詩に
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2007年8月8日 南日本新聞ひろばへの投稿・掲載
新聞投稿 「散水電車」を夏の風物詩に
環境カウンセラー 中村 義幸(四七)
猛暑日が連続十日間続いた鹿児島市内では、現在着々と路面電車の軌道敷に芝生を植える工事が進められております。部分的な軌道敷の緑化はほかでもあるようですが、鹿児島市電ほどの規模の緑化は全国初のようです。
緑化による都市景観の向上はもちろんですが、少なからずヒートアイランド現象の抑制や騒音の軽減にも責献するそうです。
新幹線の博多-鹿児島間全線開通や、大河ドラマ「篤姫」の放映も控えて観光客の増加が見込めるときに、県都の中心部を貫くさわやかなグリーンベルトの風景は人々の心を和ませることでしょう。
北海道の札幌と函館の市電では、冬の風物詩として除雪のための「ササラ電車」が走ります。車両の前部の回転する竹製のササラが、軌道上に積もった雪を跳ね飛ばすのです。
南国鹿児島では趣向を変えて、「散水電車」を走らせてはどうでしょう。芝生の養生に役立ち、掠しさも呼ぶ新しい夏の風物詩となり、全国の話題になるのではないでしょうか。
(肝付町)
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社長コラム2009年11月19日 16:41
稚魚放流は海への貯金
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2007年6月16日 南日本新聞ひろばへの投稿・掲載
新聞投稿 稚魚放流は海への貯金
会社役員 中村 義幸(四七)
先日、地元の漁協の全面的なご協力を頂き、所属する奉仕団体でヒラメの稚魚の放流事業を行いました。町内の幼稚園児も参加してくださり、にぎやかな笑顔あふれるひとときに、喜びと感動を覚えました。
海に囲まれている鹿児島県にとって、資源保護、経済活動、レジャーや観光面、食育や環境教育といった観点からも、重要な役割を果たす事業だと思います。
放流事業は例年、五月から七月にかけて実施されるそうです。放流用のヒラメ、マダイ、アラカブなどの稚魚の生産は、垂水市にある鹿児島県栽培漁業協会で行われています。
事前の打ち合わせで訪問する機会があったのですが、国や県の予算が逼迫して、漁協も経営が苦しくて、放流事業の継続が困難になってきているという寂しい状況でした。稚魚の放流は海への貯金です。
海の恩恵を受けていない人はいないと存じますので、ぜひ一度近くの漁協に放流事業の実施状況を尋ねていただけたらと存じます。
また川上にも目を転じて、植林など県土保全の県民運動にまで昇華して、県内一円にこの喜びと感動が広がることを望みます。
(肝付町)
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社長コラム2009年11月19日 16:36
「 信州コンフォート畜産シンポジウム 」 に参加して
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平成7年2月20日
(有) えこふぁーむ 中村 義幸
2月20日に興味あるシンポジウムに参加してきた。長野県松本市で開催された「信州コンフォート畜産シンポジウム」だ。21世紀畜産の大きなテーマとなるであろう「環境に優しい畜産(資源循環型畜産=エコフィード)」「家畜に優しい畜産(家畜福祉=アニマルウェルフェア)」について、畜産農家・畜産関係者・一般消費者が一堂に会した。会場は椅子が足りなくなるほどの盛況で関心の高さを示していた。
特筆すべきは、科学的に裏付けされた「信州コンフォート畜産認定基準値」が日本初の試みとして示されたことだ。また、一地方の家畜保健衛生所が中心になって立ち上がったことに地方分権の可能性を見出した。会場にいた私は、この制定によって確実に畜産農家と消費者の意識が変わり、今後の生産や消費行動に新たな一石を投じることになると確信した。今後はコンフォート畜産の確立に向けて、認定作業と年に二回の基準の確認・コンフォートシールの発行等、具体的な行動に移るそうだ。
パネルディスカッションの中では、生産者と消費者との相互理解・コミュニケーション不足も指摘されていた。生産現場が変わると農場見学等の交流も増え、相互理解の中から適正価格へのシフトに繋がる可能性も出てくる。また、バイオエタノールの台頭で飼料トウモロコシ価格が高騰したり、WTO(世界貿易機構)の日本に対する要求等生産現場での危機感も耳にした。
私共は5年前からコンフォート畜産に近い形で取り組んできた。単に豚の生産だけではなく、放牧を活用して荒廃山林や耕作放棄地の修復を行い、昨年からは稀少野菜の生産にも着手した。特徴は、取引先の要望に応じた季節毎の西洋野菜を植え付けることにより売れ残りが無い点だ。可愛い間引き野菜までもが商品になる。2年前からは地域特性を活かして、焼酎廃液の飼料化試験も進めてきた。今年の四月よりロンドン条約によって今までの海洋投棄が原則禁止になるからだ。リキッドタイプの飼料で期待以上の肉質になることがわかった。
食料・飼料自給率の低い中で、地球温暖化の影響や様々な外圧による不安材料には事欠かない。第一次産業は健康・環境・観光に直結している。バイオマスといったエネルギー分野でも注目されている。今後は農工融合・農医連携でファームタウン(仮称)といった省庁横断型の共管事業によって、オールジャパンでの取り組みが望まれる。
農工融合
http://www.gpc.pref.gifu.jp/infomag/gifu/100/6-sadakata.html
http://www.gpc.pref.gifu.jp/infomag/gifu/100/6-nitta_1.html
農医連携
http://www.kitasato-u.ac.jp/daigaku/noui/noui_no23.html
http://mslive2.mediasite.co.jp/mediasite/viewer/?cid=9d468de2-5a5b-4fef-a268-7aad444c54f1
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社長コラム2009年11月19日 16:34
えこふぁーむの取り組み
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有限会社 えこふぁーむ代表取締役 中 村 義 幸
鹿児島県肝属郡肝付町後田3098-2
TEL:0994-31-5758 FAX:0994-65-2781
Web http://www.ecopig.jp
E-mail ecofarm@ecopig.jp
【 えこふぁーむ設立の背景・きっかけ 】
日本は金額ベースでは経済大国・輸出大国、重量ベースでは輸入超過。
食糧自給率約40%、穀物自給率30%以下。
日本への年間総輸入量が8億トン、年間総輸出量が1億トン。
狭い国内に残る7億トンのうち、4億5千万トンが廃棄物(一廃約5千万トン、産廃約4億トン)。
食品廃棄物・・・食べ残し(残飯)、調理屑、食品加工屑、賞味期限切れなど、 「食品廃棄物」の総排出量は約2,000万トン。家庭からはその半分に当る1,000万トンが排出。
食品小売店やスーパーなどの食品販売業や、ファストフード、ファミリーレストラン等、外食産業などから合わせて約600万トン、食品製造業から約400万トンが排出。
別の統計からカロリー(熱量)ベースで見てみると、供給される食料の約30%が廃棄処分 (供給量-摂取量)。食べずに捨てられたものの価値は、年間で約11兆円。これは日本の農林水産業の年間生産額とほぼ同じ額に相当。
農家が苦労して作物を育てたり、漁師が一生懸命魚介類をとっている、その一方でそれに見合う分の食料を捨てているという生活を、日本人は送っています。
【 現在の取り組み・特徴 】
『食品リサイクル法』の施行に伴い、生ごみを乳酸発酵させて独自の飼料化に取り組んでおります(特許申請中)。生ごみは地域の学校給食センターや老人ホーム等から調理くずや食べ残しを回収しております。
出来た自家配合飼料は黒豚に給餌して、耕作放棄地や杉の伐採跡地等の遊休地にて放牧による飼育をしています。杉の伐採跡地では、広葉樹を植林して山の再生事業にも取り組んでいます。
その際、土壌汚染・地下水汚染を防ぐ意味で窒素量等の土壌分析をしながら、放牧地を休ませる輪転方式をとり、環境負荷の軽減に配慮しています。
繁殖用豚舎では発酵床方式で土着菌により糞尿を分解させています。臭いの無い豚舎として、迷惑施設からの脱却を目指しております。ここから出来た完熟堆肥を用いて、無農薬野菜を栽培しております。
と畜後は精肉・加工品共に直販方式で販売しております。 その折,個体情報履歴(トレーサビリティー)の公表にも取り組んでおります。 こうして私共の想いと共に、生ごみは肉や野菜や広葉樹林に姿を変えて地域を循環していきます。
【 現在の課題 】
個体情報の公表に際して、豚群管理が基本となるが個体識別番号(ID)を離乳後に耳標にて付与します。耳標が外れると個体情報公表豚肉としての出荷が出来ずに付加価値が下がってしまいます。IT関連分野の技術の進歩と共に、ICチップやICタグの導入も視野に入れる必要があります。
個体識別に間違いがあってはいけないので、より一層の現場での情報管理能力の向上が求められます。
個体情報公表の普及にあたっては、生産農家における情報管理の徹底と出荷先である屠場の協力が不可欠です。
経営面ではトレーサビリティーシステムのソフト開発費用や個体情報公開にかかる費用等を商品価格に反映させることが出来るよう、営業面でのさらなる努力が必要です。
【 今後の展望 】
今後は消費者の利便性も考慮して、携帯電話での読み取り機能を利用した個体情報のQRコード化もすすめる方針です。さらには、未出荷分についても個体情報を見られるようにし、公開情報の信頼性と透明性を高めて生産農家と消費者との距離を縮めていきたいと思います。
現在、「焼酎廃液の飼料化試験」にも取り組んでおり、成功すると地域特性に応じた社会貢献につながりそうです。九州をLOHAS(ロハス)アイランドやバイオマスアイランドと捉え,グリーンツーリズムや「食」を通じた都農交流等,体験型・滞在型での第一次産業を活用した地域活性化の可能性を探っております。
「食」の分野は、健康問題・環境問題に直結しています。安全な食べ物と多様な生き物を育む自然環境を是非、次世代にバトンタッチしていきたいと思います。
【 イ メ ー ジ 】
生ゴミ→ 餌→ 豚→ 堆肥→ 有機農産物→ 食品→ 日常生活→ 生ゴミ
↓ ↓
肉 エネルギー(自家消費)
【 付 記 】
平成16年度 消費者志向優良企業 の< 品質・安全分野 >で 経済産業大臣表彰 受賞
平成16年度 (財)かごしま産業支援センター 研究開発助成事業 (3,000千円)
平成16年10月 ap bank 第1回融資先として選定 (5,000千円)
平成18年 1月 生産情報公表豚肉の「生産行程管理者」と「小分け業者」のJAS認証取得
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社長コラム2009年11月19日 16:31
発酵床(バイオベッド)豚舎を活用した地域循環システム
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環境双方向産学会 in 鹿児島 (平成14年11月15日)
『 発酵床(バイオベッド)豚舎を活用した地域循環システム 』
株式会社 ト ッ プ ラ イ ン
代表取締役 中 村 義 幸
1. は じ め に
私共の会社は鹿児島県の大隅半島に於て、関連グループ3社と共に廃棄物処理を中心とする環境関連事業を行っております。中小企業ならではの迅速で小回りの効く、地域密着型の対応を目指しています。
「環境」という文字を『環』と『境』とに分解して、私なりの解釈をさせて頂くと、『環』は輪という意味で循環にも通じます。『境』は文字通り境(さかい) で、自然界と人間の経済活動(または物質文明)との境界を現しているように思います。つまり、全ての人は、生きていく上で「環境」との関わりをもっていることになります。さらには、業として「環境」に携わることは環(わ)の境界上にいて、自然界と人間社会との橋渡しをする重要なポジションだと思います。
日頃の事業活動の中で、再生可能な有機系廃棄物の飼料化・肥料化を通じて地域内で効率の良い循環システムを立ち上げ、健康な土づくり、エネルギーの回収を行い、地域の活性化さらには持続可能な社会づくりに貢献出来ないだろうかと常々考えておりました。
☆ 豚は 「 生きた生ごみ処理機 ? 」
昨年5月より黒豚を飼い始めました。どうして廃棄物処理業者が豚を飼い始めたのか?? それは、昨年5月に「食品リサイクル法」が施行されたのがきっかけでした。
この新法の登場は、私共が長年にわたり廃棄物処理に関わり、町から家庭系、事業系ゴミの収集運搬の委託・許可を受けている経緯もあり、生ゴミが比較的手に入りやすい状況にあったことからビジネスチャンスの到来と受け止めたのでした。
私達は、食品廃棄物を直接肥料化(堆肥化)するのではなく、餌として一旦与えて出てきたもの(排泄物)を堆肥化しようと考えました。つまり、豚を「生きた生ごみ処理機(大きな微生物)」の位置付けとしたのです。
単なる養豚業ではなく廃棄物処理施設あるいは再商品化処理施設としてみることで、将来的には処理施設の許可を取得して、収集・運搬、処理料金を頂きながら餌となる生ゴミを受け入れることが可能ではないかと、期待を込めて考えています。
【 イ メ ー ジ 】
生ゴミ→ 餌→ 豚→ 堆肥→ 有機農産物→ 食品→ 日常生活→ 生ゴミ
↓ ↓
肉 エネルギー(自家消費)
2. 背 景
人の健康と福祉は、エネルギー・水・食料・その他の資源が効率的・安定的に供給され、廃棄物が安全に処理されるかどうかにかかっています。よく、「地球規模で考え、足元(地域)から行動へ移す」という言葉を耳にしますが、経済の拡大に狂奔してきた20世紀後半には、経済活動の暴発的増大による地球温暖化や化学物質汚染に代表される様々な環境問題の発生、最終処分場の不足等、様々な問題を生じてきました。
日本は金額ベースでは経済大国・輸出大国といえますが、重量ベースでは明らかに輸入超過です。食糧自給率も政府目標が45パーセントとお粗末な限りです。穀物自給率に至っては30%を切っている現状です。御存知のとおり主な地下資源も輸入に頼っております。大雑把にみて日本への年間総輸入量が8億トンで、年間総輸出量が1億トンです。狭い国内に残る7億トンのうち、4億5千万トンが廃棄物(一廃約5千万トン、産廃約4億トン)です。廃棄物の埋め立て最終処分場容量の残余年数が少なくなるのは自明の理です。
食品廃棄物の量を見てみると、食べ残し(残飯)、調理屑、食品加工屑、賞味期限切れなど、「食品廃棄物の総排出量は約2,000 万トン」で、家庭からはその半分に当る1,000万トンが排出され、食品小売店やスーパーなどの食品販売業や、ファーストフード、ファミリーレストラン等、外食産業などから合わせて約600万トン、食品製造業から約400万トンが排出されています。別の統計からカロリー(熱量)ベースで見てみると、供給される食料の約30%が捨てられていることになります(供給量-摂取量)。
このようなムダを背景に、様々な問題点が浮かび上がってきました。
* 高含水率のため、焼却処理費用を増大させる(補助燃料の消費増)。
* 焼却の際にダイオキシンや他の有害物質の排出原因となる(温度低下・塩類の影響)。
* 食糧・飼料の大量輸入によって国土に窒素分が過剰蓄積する(地下水汚染・富栄養化)。
一方、戦後の国内農業は生産性が高まると信じて化学肥料・農薬散布に依存する形態となりました。単一作物の連作や規格品大量生産の影響もあり、畜産農家と耕種農家間の「食の循環」が分断された結果、地力の低下・土壌汚染がさらに作物の抵抗性を奪い、化学肥料・農薬を多投するといった悪循環に陥っています。
そのような中、昨今では消費者の健康・安全志向が高まるのと同時に、環境に対する意識が向上するのと相まって「有機農産物」への需要が伸びてきています。これに伴い、有機肥料に対する期待が集まっています。環境保全型有機農業へのシフトは、消費者にとってのみならず、生産者にとっても化学物質の暴露から逃れることや、土壌の本来持つ力の回復にもつながり喜ばしいかぎりです。
「食の循環」が復活するのを機に、家畜ふん尿をはじめとする有機系廃棄物由来の質の良い完熟堆肥が求められ、また、その処理・製造過程から未利用エネルギーを取り出す動きが見られるようになりました。このことは、地球温暖化防止にもつながり、エネルギー回収型資源循環システムの実現にも弾みがつき、地域の活性化にも少なからず寄与出来そうです。
3. 現 在 の 取 り 組 み
いきなり大規模に取り組むと、失敗したときのリスクが大きいので実験的に小規模に始めました(最大24~25 頭収容可)。最初はオス1頭、メス1頭の2頭の子豚(10㎏)を知人の養豚農家から分けてもらいました。私自身、豚を飼うのは初めての経験で、全くのズブの素人です。オスは去勢してあるので初めは♂♀の区別もつかない状態でした。
養豚をする上で考慮しなくてはいけない問題が、汚水(ふん尿)処理の問題です。平成16年度から養豚施設からの放流基準が今以上に厳しくなります。企業養豚として大規模に運営しているところは補助金を受けつつ自前の汚水処理施設を整備して対応できますが、中小規模の農家養豚では補助金を受けるにしても自己負担額が大きくなり、支払能力がないところは廃業を余儀なくされる運命です。
当然私共にも立派な処理施設を備えるだけの余裕はありません。そこで取り入れたのが汚水(ふん尿)処理施設不要の「発酵床(バイオベッド)」です。敷き床におがくず(これもリサイクルされたもの!)を80~90cm敷き詰め、これに培養した「土着菌(土着微生物)」を混ぜたものです。土着菌は近所の山の落ち葉の裏から簡単に採取でき(つまり無料)、米ぬかと廃糖蜜(これも一種のリサイクルか?) を加えることにより大量に培養できます。
発酵床については、姫路市の(株)福永微生物研究所(600頭肥育)の視察をして、土着菌に関しては、鹿児島大学農学部の柳田宏一教授の報文を参考にさせて頂きました。
土着菌は、地球が誕生以来40 数億年の環境の変化に耐えて今日まで生き長らえて、その土地や地域の環境に最も適応した強力な微生物として捉えることができます。わざわざ購入した高価な菌が、導入した地域で求められる所期の働き(優先種となること)をしてくれるとは限りません。微生物間でも、し烈な生存競争をした結果(拮抗)、その土地に合ったバランスが保たれているのではないでしょうか。また、一種類の微生物が独占的に作用するのではなく、数十種類の「微生物群」として作用しているものと思われます。
豚は、発酵床の上に糞尿をしますが、翌日には固形分は見当たらない程、土着菌が分解してくれます。山歩きをしていて野生動物の死骸や排泄物を目にすることが少ないことを思い起こすと理解しやすいと思います。しかも、豚小屋に付き物の悪臭はほとんどと言ってよいくらい発生しません。豚の体も汚れません。
最近、国立公園の山岳等に汲み取り不要の「バイオトイレ」が設置されるという報道を目にしますが、多分原理は同じようなことなのかもしれません。
数ヶ月経つと敷き床全体が目減りしてきますので、新しいおがくずの補充が必要になります。その際、古い敷き床の一部を豚舎から出して堆肥にします。この時点で色も形もホクホクの土壌の様に変化しています。
肝心の餌は、地元の老人ホームと老健施設から生ゴミを無料で譲ってもらい、ポリバケツで毎日回収しました。用途を伝えてあり箸・爪楊枝・プラスチック等の夾雑物は混ざっておりません。非常に協力的で助かります。
水分が多いのでザルで水を切り、水分は堆肥にかけて、ザルに残ったものに水分調整と栄養のバランス調整の意味合いで、ごく少量ですがフスマ・圧片麦・トウモロコシ粉等(いずれも安価)を加えて餌にします(自家配合飼料)。嗜好性は良く、ムシャムシャと音を立てて喜んで食べます。老人向けの献立なので脂肪分は相対的に低いのかもしれません。
頭数が少ないので企業養豚のように不断給餌とはいきません。朝昼晩の3食です。そのため、餌を待ちきれない時にはナント、足元の敷き床を食べています。敷き床に含まれている多様な微生物を摂取することにより、腸内細菌の働きも活発になるのか非常に見事な糞便をしてくれます。糞便自体も強烈な匂いはしません。寄生虫も見あたりません。
通常行われている飼育法では、毎日の糞出し作業が重労働と時間の消費の原因となっています。発酵床(バイオベッド)方式の場合、この作業がないので日常において時間を有効に使える利点があります。コスト低減効果と省力化が見込めます。
豚舎の外で完熟させた堆肥の一部は、おがくずの補充の際に種菌(戻し敷料)として混入させます。このことで、敷地内から汚物は外に一切出ず(当然、放流水もなし)、一種のクローズドシステムともいえます。余剰の完熟堆肥は有機肥料として有効利用できます。
足元がコンクリートや、すのこではなく、敷き床なので自由に掘ったり寝そべったり遊ぶことができます。そのためストレスが溜まらないのか毛艶も良く病気もしません。何よりも神経質ではなくのんびりしています。喧嘩もしませんし、尻尾をかじることもありません。病気(伝染病・寄生虫)予防のためのワクチネーションは購入以前に済ませてあります。
最初の2頭は昨年12月に出荷しました(肥育期間7ヶ月)。枝肉の一部を分けてもらい、通常の高価な配合飼料で育てられた豚肉と、私どもの安価な自家配合飼料で育った豚肉を、3人の養豚農家を招いて中身を明かさないで食べ比べをしてみました(忘年会とも言う)。その結果、養豚農家はしきりに首をひねっておりました。つまり、専門家でもハッキリとした違いがわからない美味しい豚肉に仕上がったわけです。脂身も真っ白でした。
第2陣として昨年10月に同じく黒豚の子豚(10㎏)を18頭購入しました。最初の一週間で2頭が痩せて死んでしまいました。ビックリして地元の県家畜保健衛生所に相談したところ、解剖して死因を探ってくれる事になりました(無料)。勉強のため、解剖にも立ち会いました。原因は、消化器官が未発達の段階で離乳食を与えないで、いきなり特製(?)自家配合飼料を与えたため、腸に炎症を起こし栄養を摂取できなかった為と判明しました。
残りの16頭は、病気一つしないで順調に育ってくれて、無事7月に出荷することが出来ました(肥育期間約9ヶ月)。正確には、出荷したのは15頭でした。社員が出産を経験してみたいという希望を持っていたので、母豚として1頭残して、発情のあった8月末に本交を済ませました。
確実に受胎したかどうかは、次の発情期が来るまで判らないので、この母豚とは別に、確実なところで妊娠済みの母豚を購入することにしました。妊娠済みの母豚は一貫生産農家にとって宝物ですから、通常、売買はされません。異例中の異例ですので、拝み倒して交渉をしました。
ですから、9月からは妊娠母豚が2頭居ます。うまくいくと年末くらいに子豚が生まれるハズです。今のところ出産に立ち会う自信(勇気)はありません・・・。社員は出産に備え、知人の養豚農家へ実地訓練に通っております。玉抜き、切歯等の処置も練習しています。
一貫生産ではなく、肥育だけのほうが出荷計画も立てやすいし、手間もかからないのですが、発酵床(バイオベッド)方式という飼育環境に適応した豚が確立出来るのではないかと思い、二世代・三世代と継代してみる狙いがあります。
一般論として、黒豚は白豚と比較して産仔数が少なく肥育期間も長くなる傾向があります。このような特性のため生産効率至上主義の現場では白豚飼育のほうが効率が良く、一時期黒豚の飼育頭数が激減したそうです。しかし、味が優れているので鹿児島県を代表するブランド品として生き延びることが出来ました。
生ゴミ由来の自家配合飼料で、正直、試食に耐える肉が出来るとは思っていませんでした。せいぜいハム・ソーセージの加工用か、最悪、ペットフードの原料用でも仕方がないと期待していませんでした。ところが、第2陣で出荷した豚も、規格からすると厚脂だったり、肥育期間が長すぎて重量オーバーだったりしましたが(規格外だと引き取り単価が安くなる)、味のほうは天下一品でした。素人の強みでしょうか・・・?
ここまで、何食わぬ顔で書き連ねて参りましたが、1年6ヶ月で17頭の出荷です。この間、2名の社員が交代で休みを取りながら貼り付いております。実験段階とはいえ、たぶん世界一高い単価の豚肉生産農家です。この構想が成功すると、逆に安い経費で美味しい肉が作れることになるので、これにめげずに、志は高く持って頑張るつもりです。オートメーション化が進んだ企業養豚では1名で 1,000頭の飼育を受け持っているそうです。
4. 今 後 の 展 開
本構想を今一度おさらいをすると、食品廃棄物を餌にして豚を「生きた生ゴミ処理機」の位置づけとし、一端豚の体内を通って出てきたもので堆肥をつくり、その堆肥を利用して有機農業へと発展させるという流れです。その過程の中で、生産・販売が生じます。
お金付で餌が手に入り、豚は商品として出荷でき、副産物である完熟堆肥は売れるかもしれません。売れないとしても、自社農園に使用して有機農産物をつくり有価物として出荷することができます。
2頭で始めて20頭規模までこぎつけました。今後は、さらにスケールアップして200頭規模で実験してみようと思っております。経済性を考慮した、最適な敷き床の厚みや飼育密度、自家配合飼料等のデーターもさらなる検証が必要です。
餌の扱いやすさ・保存性を考えて真空乾燥装置か、発酵飼料製造機を設置する計画もあります。さらには、餌の原料として焼酎廃液も受け入れようと考えております(地域特性を活かす)。
私共が出荷する豚は、脂肪の厚みや体重のことを考えると一般の規格から外れがちで良い単価が付きません。相場にも左右されます。それならば、付加価値をつけてPB(プライベート・ブランド)化を目指すというのもひとつの方向かもしれません。オーナー制度という消費者参加型のシステムも検討に値するようです。出資者はすなわち生ごみ排出者でもあるようにデザインする。こうすることによって,出資者は自分の豚を自分たちで育てている感覚になりますし,出資の見返りは肉となって返ってきます。もちろん自由に視察をしてもらって,飼育状況を見てもらいます。そうすることによって,食の安全や環境配慮を「実感」として提供できるのではないでしょうか。見た目と味では遜色ありませんので、生産者自らが販売価格を設定できれば足腰の強い経営につながります。幸い、手作りハム・ソーセージを作る技術を持ったスタッフも揃ったので二次加工への道もひらけます。
「行動無くして結果無し」という言葉があります。やってみなくてはどんな結果も出てきません。失敗したとしても次にその経験を活かすことが出来ます。
この実験に取り組む中で新たな発見にも遭遇しました。豚舎の外に積んである堆肥の中は、毎日、生ゴミの水をきる際に出る残汁をかけているせいか、常に 60℃以上を保っております。切り返しをする際、ムッとするくらいの熱気を感じます。微生物群が文句も言わずにセッセセッセと24時間体制で発熱してくれているわけです。
この堆肥の中に水道ホースをひくだけで簡易温水器が出来るのでは? と考えた延長線上に登場したのが「ヒートポンプ」です。一言でいうと高性能熱交換機で、都市部では10℃程度の地下鉄排気口の温度差で発電が出来てしまうスグレモノらしいのです。メタンガス発電のような複雑なシステムではなく、シンプルに直接的に温度差を利用してみようと考えております。
今まで見向きもされずに捨てられていた、未利用エネルギーの再利用です。うまくいくと冷暖房用の熱源として、あるいは発電まで可能かもしれません。一箇所あたりの量は少ないかもしれませんが、全国的規模・世界的規模で捉えると有用なエネルギー源として活用出来る可能性を秘めているのではないでしょうか。
現在、事業所や一般家庭用に普及しつつある機械式生ゴミ処理機(市販品)から出来るものは、あくまでもコンポストもどきであって、そのままでは完熟していないので肥料としては使い物になりません。塩分・脂肪分の課題もあります。そこで、その発生物を回収して高次発酵まで引き受ける受け皿企業としてお役に立てないか現在模索中です。資源循環型社会の構築にむけて、都会では出来ない田舎ならではのシステム作りの手法があるはずです。全国一律に実施すべきものと、都市部と農村部の棲み分けによって実効のあるものとに分かれると思います。新しい法律が施行されるということは、それに付随した新しい業務が派生します。法律の内容を吟味することで、私達が地域のために出来ることをなにか見つけられるかもしれません。お手伝いできそうな業務があれば、地域の行政や住民にアピールすることです。つまり、提案型企業となって新しい仕事を創出する訳です。
農業関連法等は普段馴染みが薄いかもしれませんが、化学肥料の過剰投与や家畜糞尿の農地還元により、身近な地下水が硝酸性窒素による汚染を受けているケースが見受けられます。直接的な修復法や間接的な手法により、新しいビジネスチャンスの到来と受け止めることも出来ます。
都市緑地保全法では都市計画法や環境基本法との調和を保つように謳われております。都市部のヒートアイランド現象緩和効果を狙った屋上緑化に関係があります。有機系廃棄物から製造した完熟堆肥を用いて、屋上緑化用植物の生産と都市部への供給といった新産業が創出できそうな気がします。軽量人工土壌の開発は盛んですが、肝心の屋上緑化用植物の供給が不足しては推進出来ません。記憶に新しいところでも、東京・福岡・名古屋と死者を出した都市型集中豪雨の被害がありました。国や東京都では屋上や壁面の緑化をする者に対して減税や補助金の交付・新規着工ビルへの義務化を決めており、今後強く推進を図る模様です。
<参 考: 屋上緑化に適した植物>
メキシコマンネングサ・ツルマンネングサ・サカサマンネングサなどのセダム類、サボテン、パンパスなどの砂漠に生えているような植物や、高原か岩場の植物。常緑樹でよく使われるのはオリーブ、イヌツゲ、エリカ類など。ビルの屋上という特殊な環境の特徴としては、1.恒常的に風が吹き、高いビルほど風が強い、2.盛土の厚さにも制限がある、3.これらの影響で土が乾燥しやすい、などが挙げられるでしょう。このことから、屋上緑化には、寒暖の差と風、乾燥に強く、根を深くはらないものがよいといえます。また、建物の荷重も考えると、大きくなりすぎない植物を選ぶ必要があります。土壌飛散や乾燥防止の観点からは、裸地を作らないために芝や地被植物で土壌を覆うとよいでしょう。
屋上緑化用植物の生産と共に、ビオトープに適した植物の生産も、今後需要が伸びると思われます。これらの一大生産・供給基地ともなると、栽培期間中はその地域の自然景観を形成することになり、地域住民からも旅行者からも歓迎されることでしょう。
河川法では「治水・利水第一主義」の河川行政に「多様な生物の棲む環境としての河川」という新たな視点が加わり、地域住民と川との垣根を低くして親水機能をもたせた、いわば共生の時代にふさわしい新工法「多自然型工法」が盛り込まれました。これまでの防災機能を維持しながら自然環境を修復する河川工事の手法です(環境修復型公共工事)。
この分野は素人なので実現可能かどうか判断がつきませんが、例えば、液肥や堆肥抽出水等でコンクリートを練った「バイオコンクリート(仮称)」が出来るとすると、護岸工事後の植物の着生が早まるかもしれませんし、魚礁を作れば海藻が付きやすくなり、磯焼けで壊滅状態の沿岸漁業の福音になる可能性も無視出来ません。
5. 今 後 の 課 題
家畜糞尿処理に関しては、大規模集中型の処理システムより、小規模分散型の個別処理システムのほうがリスクが少ないように感じます。もちろん一長一短はあるでしょうが、大規模型で対応する場合、一度機能不全に陥ると回復までに相当な時間がかかり、その間処理が出来なくなります。相手は動物ですので、排泄は待ったなしです。豚舎の今後の課題として多頭飼育(良い悪いは別にして)に適した構造の設計が必要です。最近の柳田教授の報文では、「高床式発酵床」が紹介されておりました。発想の転換で、一ヶ所に多頭飼育するのではなく町内の振興会単位で御協力を頂き、数頭ずつ地域で飼育して貰うことにより、子供からお年寄りまでの住民参加型のコミュニケーションが図られ環境意識の向上も期待出来るといった、福祉と環境学習を兼ね備えたシステムも田舎では可能かもしれません。
今回、御紹介しました構想は部分部分を眺めても、目新しいものや特別な技術は見当たりません。しかし、各々の組み合わせ方や全体の構想はビジネスモデルとして面白いものがあると思います。都市部では出来ないことを地方において実践することで、地方の活力が増すのではないでしょうか。
生ゴミ由来の餌料については、課題が山積しております。
現在、生ゴミの回収先が二軒と少ないので目が届きますが、将来、不特定多数の事業所や一般家庭から回収するとなると夾雑物の分別が大きな課題になりそうです。除去技術や倫理(モラル)の確立が求められます。
お弁当やお惣菜に含まれる食品添加物の問題も、餌として与えた場合の確固とした安全性は疑問です。しかし少なくとも、抗生物質や成長ホルモンが入っているとされる市販配合飼料よりは安全といえるのかもしれません。
現在、昨年秋に発生したBSEの影響で、牛に対しては肉骨粉の混ざった飼料は全面投与禁止となりました。近い将来、この延長線で豚に対しても禁止措置がとられるとなると(共食いは不自然という観点で)、私共の構想は根底から成り立たなくなります。生ゴミ中の肉の固形分はなんとか取り除けるとしても、可溶性成分で液体に移行するものは除去不可能だからです。一抹の不安が頭をよぎったとき、霧島高原ビール(株)(溝辺町)の山元社長が開発された、食品廃棄物を麹菌の利用で菌体タンパク質に変化させる発酵飼料製造技術があることを知りました。解釈の仕方では、元のタンパク質構造と違う別物に変化させるわけですので、このハードルはクリアーできるのではと甘い期待を抱いております。山元社長との会話の中で興味深かったのが、「一見、堆肥化と飼料化は似ているが中味(微生物の働かせかた)は全然違う」ということでした。堆肥化は完熟化の過程で、ある程度窒素分を減らさないといけないが、飼料化はいかに窒素分(菌体タンパク質)を減らさぬように維持するか・・・ということです。
これに関連して、最近興味のあるものに出会いました。「プロバイオテックス乳酸菌」と「ルーメン微生物」です。耳慣れない言葉ですが、プロバイオテックスとは、「動物やヒトに投与されたとき、消化管内の常在菌叢を改善することにより、宿主に有益な作用をもたらす単一あるいは複数の菌株からなる生きた培養菌」と定義されます。乳酸菌はpH4未満で優占種になるらしく、その酸性下ではいわゆる雑菌とか病原菌の活動が抑えられるそうです。飼料調整加工分野において有用微生物を積極的に利用する試みがなされていて、先進国においては抗生物質の飼料添加が厳しく規制されるに至り、代替物としてプロバイオテックス生菌剤や乳酸発酵物が家畜の発育促進、飼料効率の改善、下痢の予防や治療の目的で使用されつつあるそうです。今までの発酵飼料に求められていたのは嗜好性や貯蔵性の向上が主流でしたが、副作用や耐性菌の心配がないことから保健的効果も期待出来ると注目されています。早速、素人の強みを発揮して、今話題の「カスピ海ヨーグルト」を添加した自家配合乳酸発酵飼料を給餌して模様眺めといったところです。たしかに、嗜好性は良いようです。廃棄物処理業者は賞味期限切れの牛乳が手に入れば、どんどん増やせる有り難いポジションにおります。豚より牛に対する研究が先行しているようで、現在、独立行政法人「畜産草地研究所」(栃木県)の蔡義民博士と、メールにて情報交換を行っております。「ルーメン」とはウシの4つある胃のうちの第1胃(反芻胃)のことで、ルーメン内はpH6.0~7.0、39℃~41℃、微生物は、約70種類が生息するといいます。
その中には、セルロース分解菌、デンプン分解菌、そして、脂質分解菌等が存在し、この脂質分解菌に注目しました。その作用機序は難しくて判りませんが、うまくいくと、生ゴミ由来餌料の脂肪分低減に利用できるかもしれません。ひょっとすると、塩分分解(代謝)菌がいるかもしれません。これまた、堆肥の塩分障害の軽減につながる可能性があります。
驚いたことに、ルーメン内では飼料タンパク質の分解で生じたアンモニアから、アミノ酸を経て微生物菌体タンパク質が合成されるといいます。これは、「霧島高原ビール」で開発された飼料化装置の麹菌による菌体タンパク合成に相通じるものがありそうです。
素人の感覚(直感)にすぎませんが、同じ菌体タンパク質を合成するのであれば、麹菌よりルーメン内の微生物のほうがアバウトで扱いやすいような気がします。発酵自家製配合飼料の成分や機能性如何では、糞便の排出量軽減につながるかもしれませんし、そのまた逆かもしれません。まだまだ判らないことだらけです。畜産県鹿児島の良いところで、ルーメン微生物も近所の屠畜場の御協力により無料で手に入ります。今まで捨てられていたものですから、有効に利用できるとなるとこれも一種のリサイクルといえそうです。ただ、牛の体内から得たものを豚に与えて大丈夫なの?? という、素朴な疑問は残りますが・・・。
番外ですが、脂質分解菌を応用して飲食店のグリストラップ(油水分離装置)のメンテナンスに応用できる可能性もあります。
セルロース分解菌の応用としては、埋め立て処分場に注入して木くずや紙などのセルロースやリグニンを分解することにより、かさが減り、埋め立て残余年数を延命化できるかもしれません。(シロアリの消化管内微生物は、セルロース分解能は優れていますが入手困難です)
メタン生成菌も多く含まれているようで、畜産学の世界ではメタンの発生抑制(ゲップ防止=地球温暖化防止)の研究ばかりが盛んのようです。裏を返せば、発生促進の機序も解明が進んでいるでしょうから、今後増えそうな「バイオマスエネルギー」の利用へ応用できそうです。39℃~41℃が至適温度なので、メタン発生装置を加温するエネルギーが少なくて済むのではないでしょうか??
バイオレメディエーション(微生物による環境修復技術)やエネルギー分野まで幅広い可能性を秘めた「ルーメン微生物群」が宝の山に見えてきました。先日、財部町内に新しく出来た、民間の堆肥センター(処理能力 50㌧/日、バイオクリーン(株))へ視察に行って参りました。ちょうどタイミング良く、「真空乾燥機」のデモにも立ち会えました(処理能力 50㎏/バッチ←5時間処理)。
この乾燥機の優れたところは、減圧状況で30℃前後で乾燥できる点です。内部構造も工夫がしてありました。既知の乾燥装置では、ご飯粒は撹拌過程で餅状というか団子状になってしまい、表層部ばかりが乾燥して内部まで十分に乾燥が出来ないという欠点がありましたが、この装置では、ご飯粒はそのままの形状を保った状態で乾燥できるのです。焼酎廃液も問題なく乾燥出来るそうです。この装置を生ゴミ排出事業者にリース契約をしてもらい、私共が出来た乾燥物を回収するというシステムが可能であれば、回収時の輸送コスト減と能率UPに繋がりますし、夾雑物の除去の手間も低減されると思います。排出者にとっても収集業者にとっても、減容化はメリットがあります。自家配合飼料の原料としても有望です。飼料製造過程で生ゴミの混入率を上げることが出来ます。ただし、栄養価並びに栄養分のバランスの検証は必要です。
6. お わ り に
21世紀の課題は、①環境問題 ②人口問題 ③食料問題 ④エネルギー問題 といわれております。不思議な事にこれらすべてに「農業分野」が絡んでいるように思えてなりません。しかも、農林水産業は微生物の働き抜きでは語れません。つまり21世紀は微生物の活用如何にかかっていると言えそうです。まだまだ自然から学ぶ点も沢山あるような気がします。自然界の自浄能力を越えた規模拡大は間違っているということです。また、私たちのライフスタイルも「適量生産・適量消費・リサイクル」の足るを知る生活様式へと移行すべきなのかもしれません。
8月には、この道の大先輩でいらっしゃる県立農業大学校(牧園町)畜産工学部長の川井田先生と渡辺バークシャー牧場(霧島町)の渡辺社長のお話を伺ってきました。Know how の蓄積よりも、Know whoのネットワークを広げることが近道と感じている今日この頃です。
7. 謝 辞
共同研究者として助言を頂きました、鹿児島大学法文学部経済情報学科の大前慶和助教授並びに大前ゼミの学生諸氏に深く感謝申し上げます。
【参 考 資 料】
「大隅半島の人口は1600万人?」
大隅半島の人口が1600万人と聞いて驚かれると思いますが、もちろん、これだけの人々が住んでいる訳ではありません。ちょっとした数字のマジックで、実は、家畜の排泄物の量を人間の排泄量に置き換えて算出した数字です。鹿児島県内の産業廃棄物発生量は、大まかに申しますと、約1,000万トンといわれており、そのうち家畜糞尿は600万トン発生し全体の6割を占めております。鹿児島が畜産県といわれる所以です。曽於・肝属地区からは320万トン発生し、県内の半分以上を占めます。
水質の汚濁程度を調べる目安としてBOD(生物化学的酸素要求量)という指標がありますが、BOD量で換算いたしますと、牛一頭は人間の59人分、豚一頭は人間の15人分の糞尿を排泄していることになります(一個体当たりの排泄量と濃度から算出)。
一例を申し上げますと、1,000頭飼育している養豚場があるとすると、そこ一箇所だけで約1万5千人分の人のし尿を排出していることになります。
平成8年度の曽於・肝属地区の牛の出荷頭数は、約30,000頭・豚の出荷頭数は、 950,000頭といわれております。30,000×59=1,770,000人分の排泄量。
950,000×15=14,250,000人分の排泄量となり、合わせますと約1,600万人の人間が住んでいる計算になります。ちなみに、これには鶏や子豚・子牛の数は含めておりません。数字上のお遊びでしたが、意外に思われたかもしれません。
県では、この家畜糞尿を利用してコンポスト(堆肥)化を図り、有機農業に切り替えるべく、環境保全型農業を推進しております。市・町単独あるいはJA独自に取り組んでいるところもあるようです。
今後の、地下水・河川等の環境汚染が改善されていくことを願いたいものです。畜舎の汚水処理やコンポスト化に伴う施設整備の費用が、肉等の価格に上乗せされる時期も来るかもしれませんが、将来の我が身に降りかかるかもしれないツケを考えると消費者としても理解を示すべきかもしれません。
また、最近では土着菌を利用した畜産分野での新しい取り組みや、家畜糞尿から発生したメタンガスを利用する新エネルギー分野への応用等、新技術の導入によっては宝の山に変身する可能性も秘めています。なんとか皆で知恵を出し合って大隅半島を時代の最先端の地にしたいものです。 (中 村 義 幸)
『畜産における土着微生物の利用』より(鹿児島大学農学部付属農場 柳田宏一教授)
土着微生物は山の頂上付近で低温性糸状菌、中腹では酵母菌、裾野付近では高温性糸状菌、平地の畑では乳酸菌、水田では乳酸菌や細菌等が多いといわれている。 〈中 略〉
季節別には春が乳酸菌、夏が細菌、秋になると酵母菌、冬には糸状菌が多くなる(薄上秀男)といわれている。
新エネルギーの利用実績と目標
● 日本の1次エネルギー総供給に占める新エネルギーの割合は、1998年度(暫定値)で1.2%であるが、国の2010年度の目標は3.1%である。
1)新エネルギー(一次エネルギー) (単位:原油換算)
エネルギー分野
1998年度(暫定値)
2010年度目標
太陽光発電
3.4万kl
122万kl
太陽熱利用
91.3万kl
450万kl
風力発電
1.6万kl
12万kl
廃棄物発電
114.3万kl
662万kl
廃棄物熱利用
4.4万kl
14万kl
温度差エネルギー等
4.1万kl
58万kl
黒液・廃材その他
461万kl
592万kl
合計
(1次エネルギー総供給に占める割合)680万kl
(1.2%)1910万kl
(3.1%)
2)従来型エネルギーの新利用形態(広義の新エネルギー)利用形態
1998年度(暫定値)
2010年度目標
コージェネレーション
463万kW
1,002万kW
クリーンエネルギー自動車
3.9万台
365万台
燃料電池
1.3万kw
220万kw
出所:資源エネルギー庁:パンフレット(考えよう、日本のエネルギー)、(財)原子力発電技術機構(2001年3月)
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社長コラム2009年11月19日 16:28
「環境関連事業に携わって思うこと―循環・再生・共生―」
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環境カウンセラー 中村 義幸
現在私は、鹿児島県内で環境関連事業に携わっております。業務内容は一般廃棄物処理業・産業廃棄物処理業・建築物環境衛生一般管理業・リサイクル処理業と多岐にわたり、今後は農業法人を設立して、食品リサイクル法に対応した養豚システムの確立とそこから発生する完熟堆肥を利用した有機農業に取り組む計画です。
「環境」という文字を『環』と『境』とに分解して、私なりの解釈をさせて頂くと、『環』は輪という意味で循環にも通じます。『境』は文字通り境(さかい)で、自然界と人間の経済活動(または物質文明)との境界を現しているように思います。つまり、全ての人は、生きていく上で「環境」との関わりをもっていることになります。さらには、業として「環境」に携わることは環(わ)の境界上にいて、自然界と人間界との橋渡しをする重要なポジションだと思います。
人の健康と福祉は、エネルギー・水・食料・その他の資源が効率的・安定的に供給され、廃棄物が安全に処理されるかどうかにかかっています。よく、「地球規模で考え、足元(地域)から行動へ移す」という言葉を耳にしますが、経済の拡大に狂奔してきた20世紀後半には、経済活動の暴発的増大による地球温暖化や化学物質汚染に代表される様々な環境問題の発生、最終処分場の不足等、様々な問題を生じてきました。
日本は金額ベースでは経済大国・輸出大国といえますが、重量ベースでは明らかに輸入超過です。食糧自給率も政府目標が45パーセントとお粗末な限りです。御存知のとおり主な地下資源も輸入に頼っております。大雑把にみて日本への年間総輸入量が七億トンで、年間総輸出量が一億トンです。狭い国内に残る六億トンのうち、四億五千万トンが廃棄物です。廃棄物の最終処分容量の残余年数が少なくなるのは自明の理です。
今や大量生産・大量消費・大量廃棄といった時代は終わり、廃棄物ゼロを目指す(ゼロエミッション)資源循環型社会に突入しました。当然、ライフスタイルも変化するでしょう。これまで廃棄物処理業といわれてきた分野は今後、再生資源化処理業に転換する必要があります。発想の転換で、廃棄されたレアメタルを多く含んだ電子機器は都市鉱山と位置付けることも出来そうです。
私達は後に、先の産業革命と並び称せられるような、エコロジカル革命の真っ只中に居るといっても過言ではありません。このダイナミックに変化する時代に「環境カウンセラー」が果たす役割は大きいといえます。広義でのエコロジカル・デザイナーあるいはエコロジカル・アドバイザーと呼べるのかもしれません。
製造分野や輸送分野でのエネルギー効率の重要性やLCA(ライフサイクルアセスメント)を考慮した設計、持続可能な環境保全型農業、地球に優しいエコロジカルな汚水処理や自然界の知恵を取り入れた地域デザインにいたるまで、「循環・再生・共生」を合言葉に活躍の場は拡く多くなることでしょう。
旧来の生活様式を改める意識改革の推進のためには、環境教育の充実も求められます。今後は、「参加型自然体験環境教育」プログラムも増える見込みで、インタープリテーション(自然解説)の出来る指導者養成と社会的地位の確立が急がれます。
資源循環型社会の構築にむけて、都会では出来ない田舎ならではのシステム作りの手法があるはずです。全国一律に実施すべきものと、都市部と農村部の棲み分けによって実効のあるものとに分かれると思います。
例えば、地方ならではの環境関連業務としては、グリーンツーリズムやエコツーリズム・ネイチャーゲーム等の企画・立案・運営の仕事があります。離島は特に恵まれています。環境教育の一環とした位置付けも可能です。カヌーやヨット、スキンダイビングといった水辺(すいへん)活動ともドッキングできます。米国やカナダでは層が厚く普及していますが、森林や海辺のガイドの仕事も、これからの日本では求められると思います。国立・国定公園が多い鹿児島県は、お客様の受け入れだけではなく、こういったインタープリターやレンジャーの養成場といった面でも可能性を秘めており、専門的な訓練や学習をすることにより、地域を知り尽くしている我々が先頭に立つことも可能です。
自然環境との係わりは人間が本来持ち合わせている五感を復活し満足させるとともに癒しに繋がり、心の荒廃に起因する事件が増えている日本で、心理的療法といった側面からも今後は益々需要が高まると予想されます。ソフト(手法・教材)の開発・ハード(施設)の整備が望まれます。
自己完結型とか地域循環型といった言葉をキーワードとするならば、究極の可能性を離島は秘めているといえます。現に、屋久島はゼロエミッション(廃棄物ゼロ)の島を標榜して熱心に取り組んでいます。成功すれば、世界中の離島が抱える環境問題を解決できる福音となるでしょう。地方の離島から世界を股にかけて現地の技術指導に飛び回る仲間が生まれても不思議ではありません。離島のハンディを利点と捉えることにより、新たな視点で郷土を眺めることが出来ないでしょうか。
「環境カウンセリング」を行う際に忘れてならないのは、環境関連法との整合性です。時代的背景や社会構造の変化に伴い、近年、様々な制度をとりまく状況も大きく変化してきました。「循環関連六法」・「農業環境三法」・「都市緑地保全法」・「河川法」等の成立や改正が矢継ぎ早に行われております。
新しい法律が施行されるということは、それに付随した新しい業務が派生します。法律の内容を吟味することで、私達が地域のために出来ることをなにか見つけられるかもしれません。お手伝いできそうな業務があれば、地域の行政や住民にアピールすることです。つまり、提案型企業となって新しい仕事を創出する訳です。
農業関連法等は普段馴染みが薄いかもしれませんが、化学肥料の過剰投与や家畜糞尿の農地還元により、身近な地下水が硝酸性窒素による汚染を受けているケースが見受けられます。直接的な修復法や間接的な手法により、新しいビジネスチャンスの到来と受け止めることも出来ます。
鹿児島県川辺町では廃棄物の焼却灰中のダイオキシン分解試験に成功するとともに、逆に焼成してエコレンガという有価物を生み出しています。地方のハンディどころか、地方からも全国へさらには世界へと情報を発信できる好例といえます。
都市緑地保全法では都市計画法や環境基本法との調和を保つように謳われております。都市部のヒートアイランド現象緩和効果を狙った屋上緑化に関係があります。屋上緑化用植物の生産と都市部への供給といった新産業が創出できそうな気がします。
河川法では河川行政に「多様な生物の棲む環境としての河川」という新たな視点が加わり、「多自然型工法」が盛り込まれました。これまでの防災機能を維持しながら自然環境を修復する河川工事の手法です。
持続可能な資源循環型社会づくりにむけて、世の中は規制緩和の流れにあっても、環境関連法案は明らかに強化されていく方向にあります(昨今、規制緩和という言葉が一人歩きしておりますが、本来は「規制と緩和」で助詞の「と」が抜け落ちているような気がします)。また、これまでの環境関連法は企業レベルでの話のような印象が強く、一般住民には縁のないようなものに感じられていましたが、徐々に一般住民にも関連の深いものが増えてきています。
どのようなスタンスで環境問題に取り組んでいくべきかは一人一人が自己責任で決めることですが、その時々の時代的背景や社会構造の変化の中で、世の中の流れを見極めながらの取り組みもますます重要になってくるのではないでしょうか。そのお手伝いの一端が「環境カウンセラー」の使命だと存じます。その活動への社会的要請は確実に高まっております。
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社長コラム2009年11月19日 16:12
「肝属(きもつき)川」を想う
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株式会社 トップライン
代表取締役 中村 義幸
「川」と聞いて想い浮かぶ光景は人によって千差万別だと思う。同じ河川でも河口部と源流部とでは、生態系を含めてまったく違う表情をみせる。また、普段穏やかな流れを見せている身近な川も、豪雨時には恐ろしい様相に急変する。
全国に109ある一級河川の中で最南端を流れる肝属川は、水を一杯たたえて悠然と流れる姿とは程遠い。排水路と見間違えそうな箇所もある。高隈山系に端を発し、波見・柏原に至るまで34kmと長さは九州管内の一級河川20本中19番目と短く、勾配がきついためである。この短い肝属川に支川が35本もあるという。
肝属川をはさんで、今でも隣接町の飛び地が結構みられる。昔、川を行政区の境界としていた時代のなごりである。現在のように捷水路(ショートカット)や堤防の整備が充分ではなかった頃は、暴れ川として流域は水害に悩まされた。特に、昭和13年には259名もの犠牲者を出している。
また、肝属川流域には弥生時代・古墳時代の遺跡やクマソ・ハヤトに関する神話、神武天皇にまつわる伝承が数多くあり、古くから人々の生活に関わってきたことがわかる。江戸時代には河口部は内外の貿易船で活況を呈したそうだ。全国に名を馳せた商家もあった。後に、肝属川の一部を利用して志布志湾と錦江湾を運河で結ぶといった壮大な計画もあったと聞く。昭和30年、支川である串良川の上流に高隈ダムの建設が着工され、灌漑事業完成後は笠野原台地に大きな恵みをもたらした。さらには、ノボリコ(ウナギの稚魚)捕りのシーズンには河口付近に灯りがずらりと並び、その光景は風物詩となっている。
長年にわたり歴史・文化・経済を育んできた肝属川の、文句もいわずに全てを受け入れてきたその姿には頭が下がる思いだが、昨今では水質汚濁がすすみ、九州でもワースト上位の常連になってしまった。家畜の死骸が流れていることもあるという。
汚濁源として畜産廃水に起因するものが約1/2、一般家庭からの生活廃水に起因するものが1/4を占めている。川面が泡立ったり、悪臭を放つ場面も稀に見られる。流域の自治体や農協では畜産環境センターや堆肥センターを整備したり、公共下水道整備や小型合併処理浄化槽の設置に力をいれて汚名返上に躍起になっている。「川は、流域に住む人々のこころの鏡」という言葉を聞いたことがあるが、今の状況を考えると私共、流域住民の意識改革が急務なのかもしれない。現に、行政に頼らず汚染防止に取り組む市民グループが様々な形で立ち上がってきているのは朗報といえる。各種団体単独での活動には限界がある。行政レベルでの連絡協議会はあるようだが、同じ流域に住むものとして対立構造ではない、行政と市民の分け隔てのない横のつながりが今後の課題となる。
長年、治水事業と環境保護は相反するものといわれてきた。しかしながら、その後の時代的背景や社会構造の変化に伴い、近年、河川制度をとりまく状況も大きく変化した。河川は単に治水や利水の役割を担うだけでなく、潤いのある水辺空間や多様な生物の生息・生育環境として位置付けられ、また、地域の風土と文化を形成する重要な要素としてその個性を活かした川づくりが求められてきている。
極論かもしれないが、長い目で見ると小さな生き物が棲息できないような環境は、人間にとっても望ましくない環境といえる。
明治二十九(一八九六)年の旧河川法から続く「治水・利水第一主義」の方針を、旧建設省は実に百年ぶりに転換し、平成九(一九九七)年に改正された河川法には、環境保全への配慮が盛り込まれた。河川行政に「多様な生物の棲む環境としての河川」という新たな視点が加わった瞬間である。地域住民と川との垣根を低くして親水機能をもたせた、いわば共生の時代にふさわしい新工法も着手されている。
これまでの防災機能を維持しながら自然環境を復元する河川工事の手法「多自然型工法」だ。肝属川においても新工法による整備が相当すすんできている。
役所が発注する工事を、業者がただやるだけだったのは過去のこと。これからの時代はそうはいかない。ノウハウを持っている土木業者が環境と調和した川づくりの一翼を担う。単なる発注者と受注者の関係ではなく、受注者も提案型企業となって、市民の目線で取り組む姿勢が必要となる。そこには、工事の完工が終わりではなく、始まりなのだという意識も求められる。多様な生物を育む河川と地域住民との共棲と調和が生まれたときに初めて完工したといえる。このことは、この新工法が画一的なものではなく、現場の数だけバリエーションがあることを示している。言い換えれば環境調和型の工法に「絶対」というものがないことを提起している。これからの時代は、多自然型工法が普通の方法と呼ばれるのが望ましい。
せっかく、親水機能をもった環境調和型の護岸が出来ても肝心の水が汚くては、生物はもちろんのこと人々も寄り付かない。本当の意味での工事の完成には流域住民の協力が不可欠である。川に対するイメージは、子供時代に経験した原体験に基づくものが多いと思う。子供に川の絵を描かせると、日本の子供達は水色の美しい川の姿を描くという。これは世界的に見ても珍しいことらしい。子供達は正直だ。地域の川に入れば直感的に足の裏できれい・きたないを感じ取ってしまう。肝属川流域の子供達が、妙な川の絵を描きはじめない内に、自分達の世代で汚したものは自分達の世代で修復すべきだろう。
日本は古来、秋津島・瑞穂の国と呼ばれ山紫水明の幽玄な美しい国とされてきた。やはり、身近には美しい川があって欲しい。また、私達にはきれいなまま次世代へ受け渡す責任がある。
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