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社長コラム2009年11月5日 14:28

世界湖沼会議出席並びに北米・南米視察報告

中村 義幸


  この度、北米・南米を訪問する機会に恵まれましたので、ご報告させて頂きます。

  月刊 生活排水社の企画で、「第7回世界湖沼会議参加と北米・南米生活排水視察団」(団長:北尾高嶺 豊橋技術科学大学教授)の参加募集があったので応募したところ、全国から15名の参加がありました。



  期  間  平成9年10月25日~11月5日(12日間)

  視察地  ロサンゼルス、マイアミ(USA)、サンパウロ、リオデジャネイロ(ブラジル)、
       ブエノスアイレス、サンマルチン・デ・ロス・アンデス(アルゼンチン)
  言  語  ブラジル(ポルトガル語)・アルゼンチン(スペイン語)

  通  貨  10月24日現在
ア  メ  リ  カ:1米ドル=Q.80
ブ  ラ  ジ  ル:1レアル=I.20
ア ル ゼ ン チ ン:1アルゼンチンペソ=Q.21

  時  差  アメリカ東海岸:-14時間、アメリカ西海岸:-17時間
ブラジル・アルゼンチン:-12時間


・ 米国への機中にて

今年の7月より、米国の航空会社は国内線・国際線を問わず、全席禁煙となりました。

空港ビルも館内全面禁煙となり、愛煙家にとっては厳しい移動となりました。十数時間に及ぶ機中は、満席状態で身動きが取れず、真ん中に座った私はトイレに行くにも一苦労でした。ユナイテッド航空の客室乗務員は、こちらが手を貸してあげたくなるほどの高齢の方が勤務していて、老眼鏡をかけてがんばっていました。制服も地味で、日本の航空会社のような華やかさはありませんでした。


・ ロサンゼルス空港にて

空港に降り立ってから、タバコを吸おうと思い外に出てみると、空気の悪いのには閉口しました。

朝夕のラッシュ時には、市街地の上空はスモッグでかすんでいました。

12月1日からの「京都会議」で米国は当初、地球温暖化ガスの削減率0%を主張していましたが、身をもって理解できたような気がしました。


・ ロサンゼルスの現地ガイド談

米国は車社会で16歳になると車の免許を取り、高校への通学にも車で乗りつけるそうです。

ただし、学校の駐車場には限りがあるので全員には駐車スペースが行き渡りません。

どう割り振るか?日本でしたら上級生が優先されるでしょうが、米国では成績順に割り当てて、成績の悪い人はスクールバスで通学するそうです。その結果、どの学生も良く勉強するそうです。日本車がずいぶんと目にとまりました。

米国内の大都市になりますと、中華街・日本人街・韓国人街といったように移民系の人々が集まって出来る独特の街があるそうですが、商売をはじめる人がいるとすると、それを聞きつけた人は、ある程度その商売が軌道にのるまで親身になって応援するそうです。

日系人の場合は、最初だけお祝いで盛り上げて、その後は「そのうち来るから…」と言ったきり、知らん顔をしているそうです。なんとなく、わかるような気もします。

ハリウッドのチャイニーズシアター前には、映画俳優の手型・足型が路上のセメント面に押してあるので有名ですが、西部劇で名をはせたジョン・ウェインは、手のひらではなく「げんこつ」を押してありました。男らしくていいじゃないかと思われますが、これには訳がありまして、身長が165cmで手が小さいので「げんこつ」になったのだそうです。彼の映画の撮影現場には、ジョン・ウェインセットというのがあって、ジョン・ウェインを大きく見せるために廻りのセットは小さ目に作られたそうです。ドナルド・ダックは大きな足型を残していました。マリリン・モンローはハイヒールの足跡を残していましたが、さすがに人気があるらしく、擦り切れて跡が薄くなっておりました。見学者はご多分にもれず、日本からの団体客が圧倒的に多かったです。私もその中の一人でしたが…。


・ロサンゼルス市の下水処理システム

ロサンゼルス市は、サンタモニカ湾の水環境の保全に向けて4つの下水処理施設(965.4 平方キロメートル・400万人対象)を10ヶ年計画で整備中。事業費は30億ドル以上。

全量きれいな処理水の状態で放流できるようになったのは、1988年以降。それまでは、流入汚水の2/3が一次処理のみで放流されていたそうです。日本のシステムとの相違は、それぞれの施設が管路で繋がっていて連携をもって運転されている点。各々が挟雑物・汚泥貯溜槽をもつのではなく、4つの処理施設のうち1ヵ所に管路を通じてまとめて処理されます。二次処理水は、凝集剤を加えた後にろ過装置を通し、塩素消毒を行った後、還元剤を用いて脱塩素され再利用水になります。一部は河川に放流されていました。

アメリカ南西部は乾燥地帯で処理水は貴重な資源として再利用されています。

再利用法:公園・道路緑地帯・ゴルフ場・墓地等のかんがい用、発電所の冷却水用、道路清掃用として。

下水道汚泥は、コンポスト(堆肥)化を推進しています。

日本の下水処理水の再利用率は0.7%なので、近年の給水制限や節水等の問題や、将来の水需要の増加や渇水対策を考えた場合、もっと処理水の再利用率を高める必要があります。

水洗トイレの洗浄水に飲料水レベルの水を使用している日本は、世界の中でも少数派。


・ マイアミ市の都市景観

フロリダ半島先端部にあるマイアミ市は、リゾート地として全米各地より家族の保養や老後の安住の地として、また海外からの観光客でにぎわっていました。海辺と人間の居住区の間がうまく調和して一体になっています。海岸の景観にも気を配り、日本で見られるテトラポットのような無粋なものは見当たりませんでした。半分オープンスペースを設けている買い物広場は、開放的でバンドの生演奏も常時行われ、買い物や食事が楽しく出来るように演出されていました。マイアミ海岸では、トップレスの女性も見受けられましたが、自然と溶け込んでいて妙な違和感はありませんでした。街中でも水着姿で買い物をする老若男女がいて活気づいていました。


・ マイアミ空港にて

サンパウロへの移動日が野球のワールドシリーズ決勝戦の日で、「マイアミマーリンズ」の優勝がかかっていました。飛行機出発の時間がちょうど8回の頃で、マーリンズが同点に追いつくとTVの前は大騒ぎでした。予定時刻が過ぎても搭乗案内がないので、不思議に思っていたら、機長をはじめクルー達が皆TV観戦していました。結局、延長戦になりマーリンズの優勝を見届けてから搭乗案内が始まりました。国民性の違いでしょうか?文句を言う人は誰一人居ませんでした。優勝が決まった瞬間、そこに居合わせた男女は誰構わず抱き付いてキスの嵐でしたが、私には、おこぼれが廻りませんでした…。


・ サンパウロ森林院

広大な森林を抱えるブラジルにあって農地の獲得は、伐採による森林開発と焼畑により無秩序に行われてきました。その結果、1980年の中頃までに毎年200万haの森林が被害を受けたといいます。この開発を食い止めるため、ブラジル政府は全土の環境保護計画を1988年に制定しました。現在では、このプログラムによって森林保全が行われています。アマゾン流域の熱帯雨林は、その広大な面積ゆえ、ブラジルのみならず全世界の環境への影響力をもっているので環境保護計画の制定は喜ばしいことです。

サンパウロ森林院は、1896年に植物研究所として農務局の所管で発足しましたが、1987年3月より環境局へ移管されました。現在、森林の保全・種子管理・林産物の利用技術開発・環境教育等の業務を行っています。森林保護は、主に水源涵養林としての観点から行われています。日本でも水源涵養の視点で森林を見つめ直すべきと思います。渇水対策や水害防止効果を考えるとその経済効果は意外と大きいのではないでしょうか。


・ サンパウロ市内排水処理

サンパウロ市は標高800mのところに位置し、サンパウロ州全体の人口は1,100万人です。

下水道普及率は90%を超えています。しかし実際は、産業廃水並びに生活排水共に全く未処理のまま放流されています。単なる下水路でしかありません。市内を流れるティエテ川は、嫌気状態が進み黒色を呈し、すさまじいまでの異臭と水面一面に広がるゴミとで悲惨な状況でした。この川は、イグアスの滝(幅4km・落差65m)を経由して、ラプラタ川へ流れ込んでいます。下流域のウルグアイやアルゼンチンにとっては迷惑な話です。

ゴミ処理に関しては、広大な土地を持っていることもあり、ほとんど埋立て処理でフィリピンでも問題になったスモーキーマウンテン同様の状態でした。この排水処理やゴミ処理の状況は、他の都市でも似たり寄ったりで、リオ・デ・ジャネイロのリゾート地として有名な、コパカバーナ海岸やイパネマ海岸も汚染が進んでいると考えられます。

生活環境の改善を考えた時、必要なものは、処理施設等のハード面も大切ですが、環境教育といったソフト面も大切に思います。しかし、貧富の差が激しく多民族性・文盲率が高いなど、今日明日の食事にありつくことが問題とされている現状では、環境保全より経済発展が優先されるのかもしれません。日本においても、大戦後の復興期では、経済発展・開発最優先で、のちに公害病が出現しましたが、歴史は繰り返されるのでしょうか?

経験してきたものを糧に、先進国が途上国に出来る事は何なのか、あらためて考えさせられました。医療の世界でも治療より予防が重視されていますが、環境面でも同じです。


・ サンパウロ市内にて

F1レーサーで、若くして事故死したアイルトン・セナが埋葬されている墓地へ行きました。セナが埋葬されている場所は、広々とした墓地のほぼ中央で、一本ぽつんと植えられている木の下でした。世界各地から墓参りに来た人の花があふれて、ひときわ目立っていました。現地ガイドの話によると、土葬の場合、一ヵ所に5名分が重ねるように埋葬できるそうです。

世界一のサッカースタジアムへ行きました。15万人収容できるそうです。グランド整備の人が念入りに手入れをしていました。毎日使用される施設ではありませんが、貧しい生活をしている人がいる一方で、このような施設にお金をかけることから、さすがサッカー王国だと実感しました。建設時の雇用効果は大きかったでしょうが、完成後は普段ひっそりとしていました。

サンパウロ市内でも一番の高級住宅地には豪邸が軒を連ねておりましたが、ご多分に漏れず、ユダヤ系の成功者が多いそうです。その一方で、板にトタンを差し掛けただけの簡単な住居の前では、子供たちがパンツ一つでボールを蹴っていました。官庁街では、地震が少ないためか、大きなガラスをふんだんに使ったモダンな作りの建物が多かったです。

南米の空港では、あちこちに灰皿があり、米国とは明らかに喫煙に関する意識が違いました。


・ リオ・デ・ジャネイロ市内にて

リオ・デ・ジャネイロはポルトガル語で「1月の川」と言う意味だそうです。海に面しているためか、サンパウロと比べると開放的で明るい雰囲気の町でした。リオのカーニバルといった先入観があったせいかも知れません。ホテルは、コパカバーナ海岸やイパネマ海岸に面して建てられており、長く続く砂浜を一望にできました。海岸では様々な露店が軒を連ね、多くの人で賑わっていました。大西洋に足を浸そうと砂浜に一歩踏み込めば、そこには、目のやり場に困るようないでたちの男女で、また、これが同じ人類かと思われるようなプロポーションで歩いている人・甲羅干しをしている人、人・人・人…まるで別世界でした。洋服を着ているこちらが恥ずかしくなり、早々に退散しました。

コルコバードの山頂には、大きなキリスト像が両手を開いて十字架のように立っています。そこへはケーブルカーでいくことができます。ケーブルカーが出発するといきなり若

い女性が一人一人の写真を撮り始めるので、何事かと思うと帰りの車中で出来上がった写真を販売するのだそうです。山頂のトイレは本来無料なのですが、子供が入り口に箱を置いてチップを強要しておりました。北米・南米を通じて、慣れないチップ制度に戸惑いましたが、チップ制度は貴重な収入源としてまた、コミュニケーションの手段として、生活

の中に深く根付いていました。小銭を用意するのが少々不便でした。

ブラジルでは、ビールが安くて350mlの缶でしたら、コーラ等のジュースと変わらぬ価格で販売されていました。呑ん兵衛には、こたえられない環境です。「ピンガ」というサトウキビが原料のブラジル焼酎は、鹿児島の黒糖酒よりも甘みが強く、薄い褐色の色も着いていて39°という強さの割には、ストレートで飲みやすかったです。五合瓶位で約400円という価格も魅力でした。本場のブラジルコーヒーは、苦みと酸味が強くて同行した人々の間では不評でした。男女共にジーンズを履いている人が多かったです。

南半球では、初夏ということもあり、観光客も多く見受けられました。


・ブエノスアイレス市内にて

ブエノスアイレスはスペイン語で「空気のきれいなところ」という意味で、アルゼンチンの首都です。市内を流れるラプラタ川の対岸は、ウルグアイです。ラプラタ川の川幅は、42kmで向こう岸は見ることができず、川面は海のように波立っていました。川の色は、上流の土壌を運んでいるためか、茶褐色でした。河口付近の川幅は220kmあり、そこにある中州は、年間50mのペースで大西洋の方へ移動しているそうです。日本の川のイメージと、あまりにもかけ離れた壮大なスケールに圧倒されました。思わず、中国の人が瀬戸内海を見て「日本にも大きな川があるのですネ」と言った逸話を思い出してしまいました。

市内の「7月9日大通り」は、道路幅が150mありました。街の建物は、整然としていて美しい印象を受けました。日本車や東洋人は、ほとんどお目にかかれず、異国情緒たっぷりでした。ホンダのシビックが300万円位するそうです。さすがにラテン系の国だけあって、公園のここかしこで若いカップルが人目もはばからず、抱き合っておりました。


・ 世界湖沼会議

第7回世界湖沼会議は、アルゼンチン南西部のアンデス山脈のふもと、ラカール湖畔のサンマルチン・デ・ロス・アンデス市(人口2万人)で開催され、36カ国から420人が参加しました。テーマは、「持続可能な湖沼と貯水池の利用(きれいで自然な湖沼環境の保全)」で、他に「淡水資源の管理」・「湖沼管理と生態系保全のためのモデリング手法」・「環境教育と市民参加」等、7つのセッションに分かれていました。

ラカール湖は、海抜1,200mに位置し、面積49k㎡・平均水深166mで、ラニン国立公園内にあります。その湖水は、アンデス山脈を縫ってチリ側の太平洋へ注いでいます。

湖の流域では、鱒類の養殖も行われ、ある程度商業ベースにものっているようですが、禁漁期間を設けて水産資源の保護を行っていました。国立公園の保護官は、公園内の状況を熱心に説明してくれ、我々のどんな質問にも丁寧に答えてくれました。その姿から、誇りを持って職にあたっていることを感じとる事ができました。

  標高が高いこともあり、湖を取りまく山々の頂には、残雪が見受けられ、澄みきった空の青さと雪の白さが湖面に映り、この世のものと思えぬ、心洗われる風景でした。

市内のレストランでは、牛肉はもちろん、鹿肉や鱒・きのこ・ハーブ・チーズ等、自然の恵み一杯のメニューでした。

国際会議場となったホテルでは、現地の女子高生達がボランティアとして参加してましたが、我々日本人のつたない英語と、彼女たちの習いたての英語が通じたといっては、飛び跳ねて喜ぶ姿が今でも目に焼き付いています。一般的に、南米では英語とトラベラーズ・チェックは通用しないと考えた方がよろしいようです。


・最  後  に

ブラジルでは、ガソリンエンジン車の約半分が、サトウキビからつくった「ガソホール」を燃料にしていますが、年々利用者は減ってきているようです。し尿やゴミに関しては、きちんとした処理場による処理は、行われていないようでした。リオデジャネイロで見た散水ろ床方式の汚水処理施設も、目詰まりが激しく計画設計通りの能力を発揮していないように思われました。念願の南十字星を見る事ができ感激しました。治安に関して悪いといわれていましたが、同行メンバーで被害にあった方はおりませんでした。


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