海や川そして土壌でみた有機物のはたらき
2017年2月28日
奈良大和 発酵土壌農業ファンド
微生物のはたらき
言うまでもなく、海や川は漁業にとって漁場、すなわち生活の場であって、副作用のあるような技術や生物にやさしくないような技術は、一見良さそうに見えてもたいへん困るのです。
だから、学者ではないですが一所懸命勉強し、膨大な量の観察を行って、魚はもちろん水域の生物が喜ぶ姿を確認し確信をもって活動を続けてきました。
平成15年頃から始めたことですが、当時はまだ「発酵」とか「微生物」などと口走ると、ただややこしい人というような目で見られたものですが、昨今の情勢はがらりと変わり、「発酵食品」や「腸内微生物」といったキーワードを通じて、少なくとも人間にとってたいへん良いことで大切なことなのではないか、と多くの人々が気づき始めているように思います。
とはいえ深遠なる微生物の世界のことなど本当のところ人間にはまだほとんどわかっていないというほうが正しいので、知ったかぶりをして説明するのも非常に困難を伴うものですが、環境保全活動を続ける中で、子どもたちにレクチャーする機会も多々あり、そんな機会にどう説明するかを考えることが、逆に自分たちがことを大づかみに把握するのにたいへん役立ったものです。
結局、子どもニュースではないけれど、子どもたちにわかりやすい説明とは大人にもわかりやすいのであって、それは実践して、見たことを率直に伝える以外にありません。
それをきっかけにすごい勢いで興味をもつ人もいれば、まったく展開しない人もいる。現象は見えるが微生物は見えないので、展開しないのも無理ないことで、深い話や理論付けは興味をもってもらってからのことだと思っています。
そうした意味から、多少なりともわかりやすいように、私が水辺や施設を中心に微生物の偉大さを見た最も印象的な事柄を並べると、
①しじみやあさりが大繁殖した。
②ヘドロの臭いや粘りが激減した。
③河口に稚魚や傷ついた魚がたくさん来た。
④驚くほど臭いの軽い養豚場などを見た。
⑤下水処理場で驚くほど臭いのしない余剰汚泥に触れた。
⑥水処理への活用を勧めた染色工場から「余剰汚泥が減ってコストが下がった」と喜ばれた。
と、だいたいこんなところです。
①については、善玉微生物を施用した淀川などの河口域で大規模に見られた現象であり、相当ヘドロ気の強い砂地でもしじみなどが一気に増えました。貝類はその場の環境が安全と判断すれば猛然と産卵すると言われています。
③とも関連しますが、善玉微生物いっぱいの環境は生物に安全なのだなと強く思ったものです。
②は道頓堀浄化活動などでとくに感じられたこと。善玉微生物施用前後で比較採取した川底の泥の変化にたいへん驚いました。気分の悪くなるほど臭く、にちゃにちゃの泥が、サラサラになっているケースを何度も経験しました。善玉微生物は泥の分子の電気的な結合を切断するそうです。
④は様々な活用現場を視察した中でも最も感動する事例です。
養豚場は近代的な設備を有する施設でも表現し難い臭いに困惑しますが、善玉微生物技術を中心に管理している施設は、古い設備でも本当に、劇的なほど臭いが軽微です。
臭いは善玉環境か悪玉環境かを判断できる最もわかりやすい指標とされています。悪玉微生物によって発生している悪臭を薬品で消臭すると、拮抗している善玉微生物も除去してしまうので、次の瞬間には繁殖力の強い悪玉微生物が支配する環境に向かっていきます。だから薬品を使い続けなければならなくなる。
ところが善玉微生物を優勢にするという観点で対処すれば、悪玉は抑制され悪臭は抑えられる。
微生物的に言えば当たり前なのですが、一般にはなかなかこうした物の見方はしないと思います。しかし、経験からすると悪臭はほとんどの場合一瞬で抑えられます。ウソのように・・。
農業現場では微生物も他の施用物、たとえば薬剤などと混同している生産者が多いと思います。与えられ方がそうなのでこれも無理ないところでありますが、幸いにしてこのように他の視点から微生物の力を見てきたことから、薬剤などと混同して微生物をとらえることはない。農業生産において微生物を考えることは、薬剤や化学肥料を考えることと比較すれば、おそらくうがい薬と人間の免疫力くらいの違いがあリます。
だから土を人の体と同じようにとらえて、善玉微生物をしっかり備えるように作っていきたいと思います。
そしてさらにはそうして作られた土をくぐった水が、川や海の生物を育むことまでをイメージしながら農業に取り組みたいと思います。
有機物発酵のしくみと土づくり
子どもたちに微生物のことを説明するやり方にこういう方法があります。三角形の各点に「植物」「
動物(人間を含む)」「微生物」があり、植物は「作る」役目、動物は「使う」役目、微生物は「戻す」役目、とし、3つの役目が常につながっていると説明します。
植物が作ってくれたものを動物が使って活動し、ゴミを出す。そのゴミを微生物がまた植物が使える形に戻してくれる、のである、と。
そういう見方をすると、悪玉と呼んでいる微生物にも重要な役割があり、死んだ有機物や無駄な有機物を「腐敗」という方法で、さながら打ち消すように急速に無機物の状態にまで分解する。
人間の都合で善玉と呼ばれている微生物たちの多くは、「発酵」という方法で、もうちょっとゆっくり有機物を分解し、植物が吸い取れるように細かく溶けやすくし、様々な栄養素に変えてくれたりします。悪玉君が働くと腐っていくが、善玉君が働くとヨーグルトや味噌などが生まれます。
つい最近まで、植物は窒素・リン・カリなど無機の栄養しか吸収できないと言われていましたが、発酵によってアミノ酸などの形に可溶化された有機物なら植物はそのまま吸収でき、しかも糖分の消費という労力を省くことができると考えられています。
人間がヨーグルトや味噌によって楽に栄養を吸収でき健康になれるというのと似ているようです。
技術規格にすると難しいことになりますが、有機物をそのまますき込むと、常に発酵して作物に有機栄養が供給されるような土作りを行うのが≒有機農業、と私たちは考えています。
そしてそのしくみはほとんどすべて微生物によって稼動されます。
つまり有機農業≒微生物農業と言ってよいと思います。
私たちは青ネギを出荷するまでにどうしても発生する端材などをあらかじめ発酵させ、それを中心として畑に有機物と発酵微生物を供給しようと考えています。
また微生物を学ぶルーツとなった海辺の環境を活動の流れから、海の有機物を併せて供給し、さらに悪玉微生物たちには遠慮していただく環境を作ろうと考えます。
これまでの試験栽培ではすべて成功と言ってよい成果でています。非常に良いものが高い確率でできるのは間違いありません。
あとは少々手間が増えても心が折れませんように・・。
言うまでもなく、海や川は漁業にとって漁場、すなわち生活の場であって、副作用のあるような技術や生物にやさしくないような技術は、一見良さそうに見えてもたいへん困るのです。
だから、学者ではないですが一所懸命勉強し、膨大な量の観察を行って、魚はもちろん水域の生物が喜ぶ姿を確認し確信をもって活動を続けてきました。
平成15年頃から始めたことですが、当時はまだ「発酵」とか「微生物」などと口走ると、ただややこしい人というような目で見られたものですが、昨今の情勢はがらりと変わり、「発酵食品」や「腸内微生物」といったキーワードを通じて、少なくとも人間にとってたいへん良いことで大切なことなのではないか、と多くの人々が気づき始めているように思います。
とはいえ深遠なる微生物の世界のことなど本当のところ人間にはまだほとんどわかっていないというほうが正しいので、知ったかぶりをして説明するのも非常に困難を伴うものですが、環境保全活動を続ける中で、子どもたちにレクチャーする機会も多々あり、そんな機会にどう説明するかを考えることが、逆に自分たちがことを大づかみに把握するのにたいへん役立ったものです。
結局、子どもニュースではないけれど、子どもたちにわかりやすい説明とは大人にもわかりやすいのであって、それは実践して、見たことを率直に伝える以外にありません。
それをきっかけにすごい勢いで興味をもつ人もいれば、まったく展開しない人もいる。現象は見えるが微生物は見えないので、展開しないのも無理ないことで、深い話や理論付けは興味をもってもらってからのことだと思っています。
そうした意味から、多少なりともわかりやすいように、私が水辺や施設を中心に微生物の偉大さを見た最も印象的な事柄を並べると、
①しじみやあさりが大繁殖した。
②ヘドロの臭いや粘りが激減した。
③河口に稚魚や傷ついた魚がたくさん来た。
④驚くほど臭いの軽い養豚場などを見た。
⑤下水処理場で驚くほど臭いのしない余剰汚泥に触れた。
⑥水処理への活用を勧めた染色工場から「余剰汚泥が減ってコストが下がった」と喜ばれた。
と、だいたいこんなところです。
①については、善玉微生物を施用した淀川などの河口域で大規模に見られた現象であり、相当ヘドロ気の強い砂地でもしじみなどが一気に増えました。貝類はその場の環境が安全と判断すれば猛然と産卵すると言われています。
③とも関連しますが、善玉微生物いっぱいの環境は生物に安全なのだなと強く思ったものです。
②は道頓堀浄化活動などでとくに感じられたこと。善玉微生物施用前後で比較採取した川底の泥の変化にたいへん驚いました。気分の悪くなるほど臭く、にちゃにちゃの泥が、サラサラになっているケースを何度も経験しました。善玉微生物は泥の分子の電気的な結合を切断するそうです。
④は様々な活用現場を視察した中でも最も感動する事例です。
養豚場は近代的な設備を有する施設でも表現し難い臭いに困惑しますが、善玉微生物技術を中心に管理している施設は、古い設備でも本当に、劇的なほど臭いが軽微です。
臭いは善玉環境か悪玉環境かを判断できる最もわかりやすい指標とされています。悪玉微生物によって発生している悪臭を薬品で消臭すると、拮抗している善玉微生物も除去してしまうので、次の瞬間には繁殖力の強い悪玉微生物が支配する環境に向かっていきます。だから薬品を使い続けなければならなくなる。
ところが善玉微生物を優勢にするという観点で対処すれば、悪玉は抑制され悪臭は抑えられる。
微生物的に言えば当たり前なのですが、一般にはなかなかこうした物の見方はしないと思います。しかし、経験からすると悪臭はほとんどの場合一瞬で抑えられます。ウソのように・・。
農業現場では微生物も他の施用物、たとえば薬剤などと混同している生産者が多いと思います。与えられ方がそうなのでこれも無理ないところでありますが、幸いにしてこのように他の視点から微生物の力を見てきたことから、薬剤などと混同して微生物をとらえることはない。農業生産において微生物を考えることは、薬剤や化学肥料を考えることと比較すれば、おそらくうがい薬と人間の免疫力くらいの違いがあリます。
だから土を人の体と同じようにとらえて、善玉微生物をしっかり備えるように作っていきたいと思います。
そしてさらにはそうして作られた土をくぐった水が、川や海の生物を育むことまでをイメージしながら農業に取り組みたいと思います。
有機物発酵のしくみと土づくり
子どもたちに微生物のことを説明するやり方にこういう方法があります。三角形の各点に「植物」「
動物(人間を含む)」「微生物」があり、植物は「作る」役目、動物は「使う」役目、微生物は「戻す」役目、とし、3つの役目が常につながっていると説明します。
植物が作ってくれたものを動物が使って活動し、ゴミを出す。そのゴミを微生物がまた植物が使える形に戻してくれる、のである、と。
そういう見方をすると、悪玉と呼んでいる微生物にも重要な役割があり、死んだ有機物や無駄な有機物を「腐敗」という方法で、さながら打ち消すように急速に無機物の状態にまで分解する。
人間の都合で善玉と呼ばれている微生物たちの多くは、「発酵」という方法で、もうちょっとゆっくり有機物を分解し、植物が吸い取れるように細かく溶けやすくし、様々な栄養素に変えてくれたりします。悪玉君が働くと腐っていくが、善玉君が働くとヨーグルトや味噌などが生まれます。
つい最近まで、植物は窒素・リン・カリなど無機の栄養しか吸収できないと言われていましたが、発酵によってアミノ酸などの形に可溶化された有機物なら植物はそのまま吸収でき、しかも糖分の消費という労力を省くことができると考えられています。
人間がヨーグルトや味噌によって楽に栄養を吸収でき健康になれるというのと似ているようです。
技術規格にすると難しいことになりますが、有機物をそのまますき込むと、常に発酵して作物に有機栄養が供給されるような土作りを行うのが≒有機農業、と私たちは考えています。
そしてそのしくみはほとんどすべて微生物によって稼動されます。
つまり有機農業≒微生物農業と言ってよいと思います。
私たちは青ネギを出荷するまでにどうしても発生する端材などをあらかじめ発酵させ、それを中心として畑に有機物と発酵微生物を供給しようと考えています。
また微生物を学ぶルーツとなった海辺の環境を活動の流れから、海の有機物を併せて供給し、さらに悪玉微生物たちには遠慮していただく環境を作ろうと考えます。
これまでの試験栽培ではすべて成功と言ってよい成果でています。非常に良いものが高い確率でできるのは間違いありません。
あとは少々手間が増えても心が折れませんように・・。