ドラマ化もされた人気漫画「夏子の酒」で描かれた「幻の米」のモデルとなったのが「亀の尾」という品種です。漫画の舞台が新潟だったこともあり新潟のお米という印象が強かった「亀の尾」ですが、実は山形県が原産地なのをご存知でしたか？

冷害に苦しんでいた明治26年（1893年）、現在の庄内町・熊谷神社近くの田んぼの中に他よりたくましく育っている3本の稲穂を見つけたのが阿部亀治（1868-1928）という人物でした。篤農家としても知られる亀治はこの不思議な稲穂を研究し、3年の年月を費やして生まれたのが「亀の尾」という品種でした。強風や冷害にも耐える亀の尾は多くの農家に広がっていきました。しかし、化学肥料を使用する現代農法では極端にもろいお米になってしまうため徐々に作付けをする農家が減少し、昭和40年代後半には作付けする人がいない「幻の米」という時代が続きました。

米鶴酒造では昭和58年から地元の農家と共に蔵人自らも参加して品質の良い酒米の栽培を開始しました。昭和62年には「亀の尾」の栽培を開始、酒米として酒造りに使用するようになりました。栽培に非常に手のかかる品種であり収穫量も限定されるため、「亀の尾」を使用したお酒は非常に高価で貴重なものとされています。

酒造りに精通した蔵人が自らお米の栽培をする米鶴酒造だからこその発見もありました。亀の尾を栽培する田んぼの中に、やはり3本だけ他よりもたくましく育っている稲穂を米鶴酒造の蔵人が発見しました。このお米は日本では初めて蔵元によって登録された新種であり、米鶴オリジナルの酒米として栽培されています。「亀の尾の選りすぐり」という意味を込めて「亀粋」と命名されました。

 
 

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