肥育屋の技術 ~半分購入・半分投資ファンドのご紹介~
このファンドの募集にあたり、いわて門崎丑牧場の千葉社長へのインタビューをまとめた動画を公開中です。
この動画の中で私が特にお見せしたい部分をご紹介します。
~動画より抜粋(55秒あたりから)~
市場の中で必ずしも誰が見てもいい牛は買わない
ちょっと今形が悪いとか、ちょっと発育が悪いとか、そういう牛を選んで買ってます
それは牛そのものの能力が悪くて牛が小さいのか、それともその牛を育てた人の管理の能力が低いのか、それを見極めて私は買い求めます。
トップの牛を買うのは誰でもできますから、そうじゃなくて手のかかる牛をそういう安価な牛を揃えてます。
牛のいいところをいいなりに、いい方向性に持ってけるってことが、肥育屋の技術だと思うんで、それを私はずっと貫いてます。
これをお聞きした時、すごいな、すごい自信だな、と思いました。牛の肥育期間は、2年半ぐらいです。その間、手がかかること込みで引き受けて、最高に美味しいお肉に育てる、簡単にできることではありません。
畜産業界の最大の課題は、収益性の低さだと私は考えています。セキュリテでも、これまでに牛に関するファンドはいくつもありましたが、ファンドをつくる度に直面したことは、ほとんどの事業者さんが、子牛価格の高騰に悩まされているということでした。子牛価格の高騰は、事業性すら危うくするほどのインパクトを持っていました。
5年ぐらい前、私がざっくり理解したところでは、肥育農家の事業モデルはこんな感じでした。1頭の子牛の仕入れに50万円、2年半育てるのに飼料や人件費等で40万円、併せて90万円のコストがかかり、販売価格は100万円、粗利としては10万円程度しか出ない。そんなビジネスでした。
この数字は、正確ではないにしろ、遠からず、の数字だったと思います。そして、当時、50万円ぐらいと聞いていた子牛価格は、今や70万円~80万円まで高騰しています。そうなると、その費用を販売価格に転嫁できない限り、生産者はすぐに赤字になってしまいます。
以下の参考情報に記載の独立行政法人農畜産業振興機構(alic)の資料より、「粗収益と生産コストの推移(肉専用種)」を見てみてください。赤いラインの生産コストは、子牛代と肥育代込みの金額であり、青いラインの粗収益は、牛(肉)が市場でいくらで売れたかの価格ですが、このグラフを一見して気付くのは、ラインが交差することがあるということです。
つまり、実際に赤字の事態が起こっているのです。
(出所:alic)
2年半、手塩にかけて育てた牛が、投入した資金より、安い価格で販売されてしまうのです。こんなこと、あっていいのでしょうか。
今の仕組みでは、残念ながら、生産者に価格決定権がないのです。こうした畜産農家のおかれた現状にいつもショックを受けていました。
<参考情報>
「畜産をめぐる情勢(牛肉・肉用牛関係抜粋)」 2018年11月、農林水産省生産局畜産部
「畜産の情報『肥育期間短縮に取り組む黒毛和種肥育経営』」、2016年12月、独立行政法人農畜産業振興機構(alic)
説明が長くなりましたが、だから、いわて門崎丑牧場の千葉社長から、目の前の牛を指して、それが36万円で買った牛であること、今の子牛価格が大体70万円だから半分であることを聞いた時に、心からすごいな、と思ったのです。36万円は、「訳アリ」価格なわけですが、その「訳」が何かを見極めることができるのが、「肥育屋の技術」というわけです。
子牛の購入価格を抑えることができれば、それだけで他の生産者より利益率が上がります。そうなると、会社に利益も出ますが、同時に、直接販売をする場合には、より競争力のある価格で卸すことができるようになります。
ここで、ようやく「半分購入」の話になりますが、今回の「半分購入・半分投資」では、1口30,000円(取扱手数料抜)のお申込額につき、15,000円が出資金として、15,000円がいわて門崎丑牧場のお肉セット(卸価格で15,000円相当、税・送料込)購入分として営業者へ支払われます。
注目すべきは、「卸価格」です。普通に1万5千円相当で想像するより、はるかにたくさんのお肉になると思います。パーティーなどで使って頂いてもいいですし、適切な量をお送りするため、複数回に分けての発送を予定しているので、量についてはご安心してお申し込みください。
最後にちょっと、セキュリテ裏話を。
実は「半分購入・半分投資」の構想は、大分前からありました。「半分寄付・半分投資」の被災地応援ファンドをつくった、ちょっと後には、社内に半分購入のファンドをつくりたい、という声はありました。いろいろな事情から、これまでつくらないできたにも関わらず、今回に限って、やってみようとなったのは、ひとつは、いわて門崎丑牧場さんの牛肉のクオリティに間違いがないという事実、そして、それを投資家の方にまずは十分食べてみていただきたいと思わせられたこと、あとは、ここだけの話ですが、やはり当社の担当者の熱意というのも大きかったかな、と思いました。担当者が熱心になるファンドは、つまり事業者さんが良いからなので、結局は事業者さんが良い、という話に戻ってしまいますね。
このように満を持して登場したセキュリテ初の「半分購入・半分投資」ファンド。
いわて門崎丑牧場 門崎丑と遠野牛ファンドの詳細をぜひご覧ください。
(ミュージックセキュリティーズ・杉山)
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