sugi 2021年1月16日 22:00

「ブレンドファイナンス」について(1)

当社では「ブレンドファイナンス」の手法を強みとしています。事業者の皆さまの多様な資金ニーズに対して、個人からの小口出資を募るセキュリテのファンドを中心に寄付や購入、法人からの出資や寄付などを組み合わせ、事業者の皆さまにとって最適な資金調達をご提案しています。

また、今週からは、セキュリテのインタビューシリーズ「私のブレンド・ファイナンス」も始まりました。そこでは、少し視点を変え、セキュリテのファンの方々が、どのようにご自身のポートフォリオの中で、セキュリテのインパクト投資やその他の投資、寄付を位置づけ、組み合わせているか、当社への期待なども含め、お話頂く企画になっています。

▶「私のブレンド・ファイナンス」第1回はこちら:
 「自分のお金が循環しながら社会を豊かにしている実感(ゲスト下山俊一さん)

しかし、この「ブレンドファイナンス」という言葉ですが、多くの方は聞いたこともないのではないでしょうか。調査したことはありませんが、認知度がわずかに6%しかなかった「インパクト投資」という言葉以上に、一般の方には馴染みがないのではないかと想像しています(インパクト投資の認知度については、こちらの記事をご覧ください。)。

そこで、今回から複数回に分けて「ブレンドファイナンス」を取り上げ、当社としてどのような意味で使っているのか、ブレンドファイナンスの世界的な動向、募集中のブレンドファイナンスのファンドの紹介をしていきたいと思います。

 

|ミュージックセキュリティーズの「ブレンドファイナンス」


ブレンドの意味
ブレンドファイナンスは、英語で書くと「Blended Finance」のことであり、その発音から日本では「ブレンディッドファイナンス」や「ブレンデッドファイナンス」と言われることもあります。

このBlendedの使い方は、「Blended Coffee(=ブレンドコーヒー)」のブレンドの使い方と同じです。ストレートコーヒーやシングルオリジンコーヒーが単一の生産国や生産者等に限定したコーヒーであるのに対して、ブレンドコーヒーは、産地や豆の銘柄、焙煎度合いなどが異なる複数のコーヒー豆を混ぜ合わせてつくったコーヒーです。

同様に、ブレンドファイナンスも、字義通りには、ブレンドされた、つまり混ぜ合わされた金融、性質の異なる資金が組み合わされた金融という意味になります。

当社では、ブレンドファイナンスという言葉を意識する前から、性質の異なる資金をブレンドすることにより、これまで必要な資金を調達できなかった事業に資金調達ができ、また、これまで投資には縁のなかった人に参加の機会をつくれるということを、日々の取り組みの中で経験的に理解し、積み重ねてきました。

「性質の異なる資金」というのは、出し手(個人か法人か、官か民かなど)、リスク許容度や期待リターン、投資動機などが異なる資金ということです。お金のリターンがどこまで求められるのか、返済の必要のない資金なのか、商品やサービスでお返しする形でいいのか、といったことを考慮しながら、投資、寄付、あるいは購入を組み合わせてファンドやプロジェクトを組成しています。

寄付と投資のブレンド~セキュリテ被災地応援ファンド
例えば、2011年の東日本大震災の後には、「セキュリテ被災地応援ファンド」として、被災事業者を応援したい個人から、寄付と出資を組み合わせる形で資金を募集しました。1口1万円(+取扱手数料500円)のうち、半分の5千円を出資金、半分の5千円を義援金として、約40の事業者に総額10億円以上をお渡しすることができました。

出資者からみれば、1口1万円を拠出した瞬間、期待利回りはマイナス50%になるという、金融商品として異例のファンドでしたが、被災により大きなダメージを受けた事業者に、通常のファンドを組成することは難しく、また、資金使途が明確な形で義援金を出したい、という個人のニーズにも合致することで、このファンドは成立しました。(震災から10年の特設ページはこちら

個人×銀行×財団の資金のブレンド~ソーシャルインパクトボンドファンド
また、日本で最初の個人が小口で参加できるソーシャルインパクトボンドの事例となった「広島県がん検診推進SIBファンド」も、当社のブレンドファイナンスの一例です。このファンドは、「ソーシャルインパクトボンド」という官民連携の枠組みの中で、金融機関からの融資、財団からの出資、そしてセキュリテを通じた個人からの小口出資という異なる性質の資金がブレンドされました。

▶「広島県がん検診推進SIBファンド」のスキーム図
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公的資金の「呼び水効果」を活用したふるさと投資
その他、ブレンドファイナンスにつながる取り組みとしては、2013年以降、当社が全国の自治体と取り組んできた「ふるさと投資」の枠組みがあります。この枠組みでは、自治体が補助金や助成金等の公金を、地域の中小事業者に直接事業資金として投入するわけではありませんが、彼らがファンドを組成するための費用の一部として拠出することで、事業者が、ファンドを通じて、その数倍から十数倍もの民間資金を、主に域外の個人投資家から調達することを可能にするものです。

上記は、公的資金による「呼び水効果」が発揮された例ですが、実はブレンドファイナンスが特にSDGs達成のためのファイナンスとして、国際機関等で注目されているのは、公的資金の入れ方次第で、まさにこうした呼び水効果が狙えるからです。この辺りのことは、次回、もう少し書きたいと思います。

法人投資家のニーズに応えるSDGファンド
セキュリテでは主に、個人からの小口出資を募るファンドを扱っていますが、SDGs達成に寄与する事業に投資したい、という法人投資家のニーズに応える為、当社では昨年より「サステナビリティ部」を設け、法人向けのSDGファンドの組成にあたっています。

SDGsの達成につながるような社会的リターンが大きい事業の場合、一般的な事業と比較して、事業全体の経済的リターンが小さいものも多く、資金調達が困難な場合があります。そうした場合に、ブレンドファイナンスの手法が生かされます。

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​(出所:当社のサステナビリティ部のページより)


では、今回はここまでとして、次回は、世界的にブレンドファイナンスがどのような文脈で使われているのか、その考え方や取り組みについて、簡単にご紹介したいと思います。
 


(文責:杉山章子)

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(プロフィール)セキュリテを立ち上げた2009年にミュージックセキュリティーズ入社。マイクロファイナンスファンドや東日本大震災の被災地応援ファンドを主に担当し、弊社西日本支社開設時から4年間は西日本支社長として大阪オフィスにて勤務。これまでにファンドの組成営業、運営、監査、広報・マーケティング等、セキュリテに関する幅広い業務を担当し、執行役員や取締役も歴任。
国際基督教大学卒業。米国コロンビア大学国際公共政策大学院修了。

【ご留意事項】
当社が取り扱うファンドには、所定の取扱手数料(別途金融機関へのお振込手数料が必要となる場合があります。)がかかるほか、出資金の元本が割れる等のリスクがあります。
取扱手数料及びリスクはファンドによって異なりますので、詳細は各ファンドの匿名組合契約説明書をご確認ください。
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