金融リテラシー教育について
本日は、現在募集中のファンド「LIPミャンマーMJI貧困削減ファンド1」の投資対象である「MJI ENTERPRISE Co., Ltd.」(以下MJI)の金融リテラシー教育の取り組みについてご紹介させて頂きます。
MJIは、マイクロファイナンス事業を行うだけでなく、BOP層の情報ギャップ解消と金融リテラシー向上などの事業・生活支援を目的として、マイクロファイナンス顧客向けフリーペーパー「Mango!」の編集・発行も行っています。MJIは、なぜこのような金融リテラシーの向上に寄与する取り組みを行うようになったのでしょうか。
以下でご案内するのは、マイクロファイナンス貧困削減投資ファンドシリーズの調査を担当している特定非営利活動法人Living in Peaceが、「Mango!」の編集に携わっているMJIスタッフへ会いにヤンゴンのMJI本店を訪れた際のインタビューです。
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(MJI本店)
チャイムを鳴らすとMJIの代表である加藤さんが出迎えてくれ、「今、ちょうどMango!の編集会議中です」と、中に案内してくれた。
そこでは20代くらいの若者たちが壁にプロジェクタでスケジュールを投影し、リビングで何やら議論をしていた。
(Mango! 編集会議)
流暢な英語でインタビューに答えてくれたのは、コンテンツ企画と編集を行なっているThant Kyaw Ooさんである。
(MJIのCSR担当、Mango!編集メンバーであるThant Kyaw Oo青年)
不思議な巡り合わせを感じ、Mango!の編集に参加
ーー どのような経緯でMango!の編集に関わり始めたのですか?
Thant Kyaw Ooさん:
MJIに入社した理由を説明するために、まず僕がもともとどんなことに興味があったかを説明しますね。
僕は大学の工学部2年生だった頃に、友人2人(うち1人は日本人)とMIVAという学生団体を立ち上げ、友人たちから寄付を募って、孤児院の子供たちに絵本を届ける活動をしていました。
(MIVAの活動風景)
僕は元々このような社会貢献活動に関心があったわけではなく、大学1年生の頃は授業に出てバイトに行くという普通の学生でした。しかしあるとき、たまたま友人に誘われて一人暮らしの老人の家を訪れ、本を読んであげたり料理をして一緒にごはんを食べたり、パゴダや教会に連れて行ってあげたりするボランティア活動に参加しました。そのとき僕は、活動を継続していくうちに手を貸した人たちの表情がどんどん明るくなっていくことが分かりました。それがとても嬉しかった。この経験を通して、自分が人と話すのが大好きであることと、それが結構うまいということを自覚しました(笑)
卒業後はハンディキャップのある人を支援するNGOで、コミュニケーションオフィサーとして働いていました。ただ、1年もすると政府への申請書類作成など事務作業などが増え、本来自分がやりたいこととの間にズレを感じるようになっていました。そんなときにMJIのことを知りました。そして面接の場でミャンマーで活動する日本企業が協働で立ち上げたBOP層向けフリーペーパー作成プロジェクトのことを聞き、Mango!の活動にとても惹かれました。さらに初期の編集メンバーとしてMIVAで一緒に活動していた日本人の友人が1年前までMango!に携わっていたことを知り、不思議な巡り合わせを感じてMJIに入社しました。
今年2月にMJIに入社したばかりでマイクロファイナンスのことは全く知らなかったため、今は業務内容について一生懸命勉強中です。そしてマイクロファイナンスを通じて、農村部の女性たちの生活レベルの向上に貢献したいと思っています。他にはMJIで働きながら開発経済学を学ぶため、ヤンゴン大学の夜間部にも通っています。ミャンマーの農村部の問題を理解するのに、大学で学んでいることが役立っています。
Mango!を通して顧客の方と関わるのが面白い
ーー 雑誌の記事を書くのも、基本的には人に対して話しかけるようなものですからね。今のMJIでのMango!の編集の仕事は、Thant Kyaw Ooさんの人と話すのが好きという強みが活かせるポジションだと思います。
Thant Kyaw Ooさん:
そうですね。僕は話したり書くことで人に物事を伝えるのが得意なので、MJIの広報活動として外に情報を発信するのは向いています。そしてMJIの女性顧客の方たちの興味があること、例えばビジネス・教育・健康などで新しい記事の内容を考えるのも好きです。
ーー 雑誌作りはどのように進められているのですか?
Thant Kyaw Ooさん:
Mango!のコンテンツは、子供が怪我した場合の応急処置といった”定型コンテンツ”と、教育やビジネスでの顧客のサクセスストーリーといった毎号変わる”特集コンテンツ”の2種類で構成されています。特集コンテンツの企画・編集は、創刊時からプロジェクトを進めてきたミャンマー人編集長、協同でプロジェクトを運営しているリンクルージョン社のスタッフとMJIの日本人インターン生と僕の4人で決めています。
今は4人で集まって2ヶ月後の特集コンテンツ企画会議中で、編集スケジュールを策定中です。特集するコンテンツが決まったら、顧客とのインタビュー日時を各支店マネジャーと調整します。それを元に僕たちで記事を書いて、最終的に内容に間違いがないか顧客の方にも確認していただいて初めて完成となります。やはり顧客当人もMango!を読むため、「あれ、私が意図していたこと違う!」とならないように気を遣っています。
(Mango!のコンテンツ企画・編集チーム:リンクルージョン社のスタッフ、編集長と)
例えばこの記事は(紙面をさしながら説明)、農村部に住みながらも家族のサポートで高等教育を受けた顧客の子供が就職して、やりがいを持って働いているインタビュー記事です。子供に教育を受ける機会をつくる大切さを伝えています。
教育によるサクセスストーリーはMango!で最も人気のあるコンテンツの1つですね。他にはマイクロファイナンスを利用してビジネスで成功した顧客のサクセスストーリーも人気があります。
村の中で生活しているとなかなか身近なロールモデルに出会えません。これを読んだ顧客が事業へのモチベーションを高めてもらえるように心がけています。
(Mango!特集記事:教育とビジネスの顧客サクセスストーリー)
ーー 昨日MJI顧客のセンターミーティングを3つほど見学してきたのですが、いずれのセンターでもお母さんたちが子供を大学まで行かせたいという意志がありました。ミャンマー全体の大学進学率が8%であることを考えると、その意識の高さに驚くと同時に不思議に思っていました。Mango!で子供の教育の重要性などを扱っていることを聞いて納得です。
Thant Kyaw Ooさん:
また、読者には小さな子供を持つ女性が多いため、子供向けのポエムや料理のレシピのコラムも人気があります。
ーー なるほど、料理レシピを見て日々の献立に頭を悩ましているは、どの国のお母さんも同じですね(笑)
(Mango記事:料理レシピと子供向けのポエム)
Mango!を真っ先に読むのは、顧客の子供?
Thant Kyaw Ooさん:
Mango!では子供のいるお母さんたちがメインの読者であることを意識してコンテンツを作っており、インターネットの使い方から多重債務の怖さまで、幅広いトピックを漫画で伝えています。漫画コンテンツは子供に大人気で、顧客からの話ではMango!をもらうと真っ先に子供が漫画を読むそうです(笑)
自分たちで漫画コンテンツを制作する場合は、内容にあうイラストをイラストレータの方に頼んで描いていただきます。時間も手間もかかるのですが、漫画にするとやはり顧客の方からの評判が良いです。
(Mango!記事:インターネットの使い方)
延滞防止策も視野に入れ新体制でスタートしたMango!チーム
ーー 多重債務の防止対策として、漫画でその怖さを伝える以外にも何かやられているのですか?
Thant Kyaw Ooさん:
実は、今年4月からMango!では顧客がマイクロファイナンスとより健全な繋がりを構築できるよう活動していく方針を強化しました。これに伴い、より顧客目線の情報が提供できるようにミャンマー人中心の体制に変えました。
また、MJIでもCSR活動を強化しています。返済が滞ったセンターの現場に赴き、返済できない状態に陥っている原因をヒアリング調査する活動も実施しました。
するとそのような顧客はMango!の金融教育の記事を読んでいない人が多いことも分かりました。ミャンマー農村部の女性顧客たちは、日常生活でのお金の管理方法が分かっていない人が多いです。彼女たちに対して僕は教えるという方法ではなく、顧客の口から語られる彼女たちの心配事にまず耳を傾けます。
ビジネスの話から子供の教育まで様々な問題があります。そして問題を解決するのに役立つMango!の記事を紹介し、彼女たちの生活向上にどのように役立たせることができるか説明します。
(Mango!記事:ファイナンシャルリテラシー)
返済できずに人間関係をこじらせ、苦労している顧客の女性たちを見るのは辛いです。僕はMango!を通して金融教育や子供への教育の必要性を記事として扱うことで、彼女たちがそのようなトラブルに陥らないようにサポートしたいと思っています。延滞が起きないことは顧客の女性たち当人とMJI双方にとってハッピーなことです。僕はMango!を利用した情報発信と顧客の人たちと直接話すことを通して、顧客の女性たちの生活向上とMJIという組織の成長に貢献していきたいです。
ーー人と話すのが好きというご自身の長所を活かして、Thant Kyaw OoさんがMango!に取り組まれていることがよく分かりました。顧客の方と直接話して得た気付きが次のコンテンツ企画に生かされるのでしょうね。本日はありがとうございました。
インタビューを終えてMJI本店を後にする頃、辺りはすっかりうす暗くなっており、窓の灯りの向こうには熱心に編集会議をしているMango!編集メンバーの姿が見えた。
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