「伝統的酒造り」の提案概要、私はこう読む
こんにちは、ミュージックセキュリティーズの杉山です。先日、日本の伝統的酒造りがユネスコの無形文化遺産に登録されましたが、文化庁が作成した「提案概要」について、熊本県の通潤酒造の蔵元、山下社長が大変分かりやすく解説とご見解をシェアされていました。
(通潤酒造・山下泰雄社長)
元々は、SNSで限定公開されていた内容ですが、掲載の許可をいただきましたので、本日は皆さんにもご紹介させていただきます。
(以下、山下社長のFacebook投稿より転載)
たまには真面目なことも投稿します、長文御勘弁。12月5日、日本酒、本格焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。大変すばらしいことで、登録に向けて努力されてきました関係者の方々の努力に深く敬意を表します。さてではなぜ登録されたのか、文化庁の提案概要の着眼点が大変面白く、ご紹介したいと思います。
1.名称の欄には「伝統的こうじ菌」とあります。(実は麹はひらがなで書くのが官庁の標準になっています)こうじにフォーカスすることによりワインやビールとの違いを浮き彫りにしています。勿論東アジア全体にこうじを使った酒は存在していますが、和酒ほどは国酒としての存在感が薄いように感じます。
2から4は飛ばして5.保護処置の所に伝承者養成、記録作成、用具の確保・保存と書いてあります。醸造の技を伝える伝承者として人での伝承が対象となっています、また失われつつある用具の確保・保存なども書いてあります。弊蔵では秋になると櫂棒を手作りして酒造りに備えますがそういう昔ながらの道具にも注目されているところが面白いですね。
さて6.提案要旨ですが○1で「伝統的酒造りはは日本各地においてそれぞれの気候風土に応じて発展し受け継がれた」とあります。日本列島は南北に長くそれぞれの気候風土が違います。全国一律の酒造りではなくその土地その土地の酒造りのやり方を提案理由にしています。熊本には熊本県酒造研究所が有り、温かい熊本に応じた酒造りの方法を開発してきました。例えば高温糖化酛、色々な酒造りに適応できる「熊本酵母」、野白式天窓のある麹室によるこうじ造り等など、各地方における多様な酒造りを評価しています。
○2では「儀礼や祭礼行事など、幅広い日本文化の中で不可欠な役割を果たしており」とあり、日頃お祭りや年祝いなどの場で神社にお酒が奉納されている場面や、結婚式に於ける三三九度、その筋の固めの杯等など日本人の生活の中に和酒は息づいています。
○3では「杜氏・蔵人たちのみならず広く地域社会や関連する産業に携わる人々に支えられており」と米作りの農家、酒蔵を維持していただく大工さん、売っていただく酒屋さん、おいしく提供して頂く飲食店さん、醸造祭を司どって頂く神主さん、跡取りを育てて頂く学校、SNSでいいねしてくれるフォロワーさん等など多くの人に支えられていることにより「酒造りを通じた多層的なコミュニティ内の絆」があることも評価してされています。
今回の登録は和酒の多面的な歴史的な価値を総合的に評価して頂き、世界に誇る文化として確固たる地位を与えて頂きました。和酒に携わるものとしてこれからも今回提案概要を踏まえ尚一層精進して参ります。
(出典:令和4年3月10日 文化庁「「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産への提案について」)
いかがでしたでしょうか。
昔ながらの道具のことや「酒造りを通じた多層的なコミュニティ内の絆」について、こうして実感の伴うご説明をいただくと、一気に理解が深まり、今回の登録の素晴らしさを再確認できますね。
今回、ご紹介した通潤酒造さんは、1770年から続くまさに「伝統的酒造り」の蔵であると同時に、新しいことにチャレンジしている蔵でもあります。2016年の熊本地震では、大きな被害を受けましたが、被災した、熊本で最も古い歴史を持つ、寛政4年(1792年)創建の「寛政蔵」を「おもてなしのための蔵」としてリノベーションし、まったく新しい感覚の観光酒蔵として2019年の春にオープンしています。是非機会をつくって、訪れてみてください♪
また、通潤さんの人気No.1の純米吟醸酒「蝉」はセキュリテストアでもお買い求めいただけますので、ぜひお試しください。
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